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大きく変わりゆく三菱長崎造船所

 7月4日、ながさき平和委員会の定期総会が開かれました。錦戸淑宏さんによる学習会「大きく変わりゆく三菱長崎造船所」には22人の参加がありました。

 錦戸さんは多面的な角度から三菱長崎造船所の現状を分析し、この危機的状況は目先の利益を追い求め、労働者を育ててこなかったしっぺ返しだと指摘しました。(以下、概要)

<客船建造での巨大赤字>

 三菱発祥の地は長崎。造船所は昭和31年から4年ほど、また40年〜49年まで進水量世界一を誇った。その技術力をもった造船所の船造りが危機的状況を迎えている。

 受注した2隻1000億円のドイツ客船の完成が契約より1年ほど遅れ、2742億円もの特別損失を出してしまった。三菱が支払う賃金は1人1日平均2万円で、作業員を5,000人とすれば、1日1億円。納期の1年遅れだけで365億円。さらに遅延金、材料調達のやり直し、諸々の経費で巨額の赤字に。この要因を会社側は「過去の受注実績に基づく見通しの甘さ」と指摘するが、現場サイドから見ると①ヨーロッパ方式の客船に対する認識不足②技術の継承がうまくいかず設計技量をふくめた三菱社員の人員・力量不足があげられる。
 長崎造船は最終的に大型客船から撤退することになった。建造したとしても10万トン以下の中小客船、フェリー等で日本での受注に限定される。また立神工場を自衛隊の艦艇専用とする方針だったが、当然視されていたイージス艦2隻の受注に失敗して計画が破たんし、中型船・特殊船も建造することになった。三菱下関造船で予定されていた海上保安庁の巡視船1隻の建造を長崎にまわすという動きがある。

<労働者の問題>

 かつては必要な人材を自ら養成してきた長崎造船。生産現場の労働者を減らし、技術継承を怠ってきた。そのことが今回の客船赤字の根底にある。一方、人は減っても仕事量は減らないため、精神疾患者が急増している。退職者を穴埋めするだけの新入社員を迎えず、大企業の社会的責任を果たしていない。

<生き残りをかけた三菱重工の「打開策」>

 三菱重工はグローバル市場における競争力を高めるために、儲からない事業は分社化・切り捨てを進め、事業所制を廃止し、3ドメイン(領域)に再編成した。その流れで長崎造船も分断された。権限は本社・東京に移り、造船所社長は名ばかり。建造量の大幅低下を、連係する他の造船所の生産力を活かして切り抜けようとしている。

 また本業で稼ぐ力が低下し、営業利益の大幅な低下を不動産を売って帳面面を合わせようとしている。17年度中に総額2000億円程度の土地、株式を売却する方針という。長崎の幸町工場も兵器関連をすべて諫早工場に移転し、跡地約7ヘクタールを売却することになる。

(2017年7月5日)