7月2日、公害・環境問題研究の第一人者である宮本憲一さんの講演会「危機に立つ日本社会—憲法・地方自治・基本的人権」(長崎県地域・自治体研究所総会)がありました。9条と安保条約・沖縄の問題に絞って紹介します。
■憲法9条と日米安保条約
最近の学生の多くは、日本が安保条約や米国の核兵器によって守られていると信じている。それは安保条約が日本の民主主義や基本的人権をいかに侵しているか教えられてこなかったからだ。「9条によって守られてきた」歴史を語る必要がある。
朝鮮戦争では米軍が出払った「空白」を警察予備隊によって守らせる形で済んだ。だが占領下で秘密裏に海上保安庁に2,000名の特別掃海部隊を出させ、死者も出した。
ベトナム戦争では米軍は本土の基地からも出撃した。韓国軍は出兵したが、日本はその肩代わりとして日韓条約を結び韓国への経済援助を行った。韓国兵は殺戮を行い、死者も出した。
湾岸戦争では出兵しない代わりに戦費の20%にあたる130億ドルを拠出し、事実上、お金で参戦した。
イラク戦争では「非戦闘地域」での復興支援に徹した。かろうじて戦闘行為は避けられたが、帰国後に自殺者が出た。また空自の米兵・物資の輸送に名古屋高裁は違憲判断を下した。
安保条約の下で戦争に巻き込まれる危険性があったが9条によって平和を保っていた。今回、安保法制によって集団的自衛権行使や米軍等の護衛ができるようになり、一触即発の危険な状況になってきている。
■沖縄の平和・自治・環境
朝鮮戦争から現在に至るまでの間、沖縄はずっと最前線基地だった。たまたま攻撃を受けなかったが、沖縄は常に戦争の脅威と向きあってきた。9条のある日本に復帰することが沖縄にとっての願いだったことを本土の人たちは自覚する必要がある。
前知事の埋め立て承認をめぐる訴訟で沖縄県は敗訴したが、世界遺産に匹敵する貴重な海域の埋め立ての是非がまったく問われず、さらに地方自治の本旨をまったく理解していない判決だった。基地が必要であり辺野古以外にないと、問答無用で弾圧するような態度は、近代的法治国家の政治とは思えない。
公有水面の埋め立ては、99年の法改正で自治体の受託事務となった。この変化を最高裁は考慮していない。安全保障が国の専権事務だとしても、基地の指定・建設は住民福祉に大きな影響を及ぼす。自治体の同意がなければ施設の維持はできない。基地ができれば地位協定によって住民の基本的人権・自治権が制約される。事前の環境アクセス・協議と同意が絶対に必要!
(2017年7月3日)