5月8日、長崎県地域・自治体研究所の5月例会が開かれ、日本初の自治体設立電力会社である、みやまスマートエネルギー(株)の白岩紀人さんが「電力自由化」や同社の意欲的な取り組みについて講演しました。
小売り電力の完全自由化とは
今年4月から小売り電力の完全自由化が始まり、一般家庭や店舗などへの電気の小売りに従来の電力会社以外の会社が参入できるようになり、ニーズに合った電力会社を自由に選択できるようになった。実際には新電力も九州電力の送配電網を利用するので、様々な発電方式で発電された電気が混じり、どの家庭でも同じような電気ではある。しかし消費者は新電力を選ぶことで、九電とは電力構成比の違う(再生可能エネルギーの比率の高い)ものを求めているという意思表示ができる。新電力に変えることで基本的にデメリットはない。
みやま市の取り組み
福岡県みやま市は山間部が21%と平坦地が多く、日射量の多い地域で太陽光発電に恵まれている。太陽光発電への参入は市内企業に限定(企業誘致に相当)し、現在は約60メガワット分が稼働している。計算上は(昼の余剰分を蓄電できれば)、みやま市民が使用する電力の80%相当を賄える。会社の社員は16人、資本金2000万円で、出資構成はみやま市が55%、市内企業体が40%、筑邦銀行が5%。
太陽光設置補助金を現在も継続させ、住宅用は全国平均の1.7倍の設置率。学校への出前授業で、みやま市の「魅力」が広がり、将来的な定住に希望が見え始めている。バイオマスや小水力といった再生エネを持つ九州の他の自治体との連繋を進め、運用コストの低下や電力融通によるリスクの低減を図ろうとしている。
電力会社を設立した理由
みやま市は3町合併で誕生したが、その効果が見いだせず、新事業として電力会社を立ち上げた。電力販売は手段であって、目的は地域課題を市民の創造力で解決すること、エネルギーの地産地消で地域経済を活性化させることだ。
単価の高い農産物を作っているため、農地の転用が難しい。大型店舗がなく市内で買い物ができない。バス路線がなく高齢者には不便。そこで市民が九電に支払っている20億円の電力代の半分を新電力に切り替えれば10億円の財源が生まれ、それを住民サービスや産業投資の原資の一部に充て新たな雇用創出をめざした。
(2016年5月9日)