世界の紛争問題を身近に考えるII
ながさき平和委員会がピース・カフェ
3月3日、ながさき平和委員会がピース・カフェを開きました。テーマは「パレスチナ・イスラエル紛争とアメリカ」。飯田彰吾さんの報告と参加者の感想です。
今、日本では、竹島や尖閣諸島などの領土問題を巡って、韓国や特に中国への脅威をあおる報道がされており、更に、それらを理由として軍事力の増強が進んでいます。パレスチナ・イスラエルを学ぶことは、現在日本が直面している領土問題や外交問題の解決に向けても示唆を与えてくれると考えました。
さて、中東和平の仲介役として中心的な役回り(?)にあり、イスラエルとの特別な関係も批判されるアメリカですが、そもそもなぜこれほどまでに特別な関係になったのでしょうか。
アメリカ建国の精神に「新しいエルサレム建設」があること、アメリカの外交政策をイスラエルに偏らせるイスラエル・ロビーの存在なども言われていますが、冷戦構造とイスラム革命への対応が大きかったように感じています。
ケネディ政権時代からアメリカからの武器輸入増加などで関係が強化されていきますが、第三次中東戦争で圧勝したイスラエルは、アメリカにとって中東での軍事的な価値が高まります。中東でイスラム革命と共産主義と同時平行でたたかっていたアメリカにとって、イスラエルはイデオロギー・政治・軍事的に最も安定したパートナーとなります。
現在、泥沼化しているパレスチナ・イスラエル紛争ですが、最も和平に近づいたのが93年9月のオスロ合意だといわれています。ノルウェーのオスロで、PLOとイスラエル労働党の間で秘密交渉を繰り返し、合意にこぎつけました。アメリカの仲介がなくてもパレスチナ問題は解決できます。
ここから学べることは、特定の国との特別な同盟関係は、外交問題の解決には寧ろ障害になるということではないでしょうか。紛争の解決には、当事者間の膝を突き合わせた交渉が必要。アメリカへの同盟関係を強め、隣国との話し合いの窓も閉めている日本にとって学ぶべきことは多いと感じています。
【参加者の感想から】
- アメリカとイスラエルの関係がパレスチナ・イスラエル問題の解決の障害になっており、世界情勢にも関わっていることを知りました。
- パレスチナ・イスラエル問題が解決、あるいは少なくとも平穏な状態になってこそ、世界からテロが減っていく、あるいは世界情勢が平穏になっていくのだと思います。竹島や尖閣諸島などの領土問題にも通ずるところがあり、日本にとっても無縁ではなく、学ぶところが多いと思いました。
- 戦争は、宗教や領土問題、あるいは報復などがその原因であることがほとんどです。しかし、これらは本来、回避すべく対話での解決が可能なはずです。では何故回避できず戦争をしてしまうのか。修復困難になるまで事態を収拾しなかったからでしょうが、その原因の背景には修復ではなく逆に戦争をあおって利益を得ようとする一部の者の働きかけがあることをしっかりと見なければならないと思いました。
- 以前、九条の会の事務局長の小森陽一さんの話を聞いた時に、「中東にイスラエルという戦火の火種があるように、東アジアにも北朝鮮などの存在がある。でも、そこで実際に戦争になるかならないか、ギリギリのところで守ってきたのが日本国憲法第九条だ」と、おっしゃっていたのを思い出しました。
- 「イスラエルは、第二次世界大戦後もずっとアメリカと一緒に戦争をし続けている。日本はアメリカの言いなりの部分がかなりあっても、それでも戦争していない、それは近隣の中国、韓国も守っていることになる」ということからも、どれだけ九条の力があるかを強調されていました。今回の学習で、アメリカに利用されて戦争をし続けてきたイスラエルのことを学び、改めて九条の大切さを感じました。
- しかし、ユダヤ人とはいったい何なのか、なぜこんなにも資金力があるのか、なぜエルサレムが複数の宗教の聖地になってしまったのか…などの謎が残りました。同時に、いかに宗教が戦争に利用されているのかということもわかり、あまり宗教に縛られていない日本人にとっては、その辺りが理解できない部分であるなと感じました。謎が多い地域、歴史であるため、勉強する価値があるところだなと思います。
(2014年3月4日)