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想像を豊かに、憲法改悪を阻止しよう

伊藤真さん、立憲主義と人権を大いに語る

 11月2日、弁護士の伊藤真さんが「憲法は誰のもの?」と題して講演を行いました。主催は長崎県保険医協会。

 伊藤さんは明治憲法と日本国憲法を対比。戦前は国民は臣民として、権利は法律の枠内だったが戦後は天賦の人権となった。これを元に戻すのが自民党の改憲草案だと指摘。

憲法は法律ではない

 憲法の理念は、個人が尊重されるために憲法が権力を制限する。これが土台でその上に国民主権、基本的人権、平和主義がある。しかしこの立憲主義を学校では全く教えない。

 人間は目先の利益に惑わされて多数が間違うことがある。だから多数(民主主義)にも歯止めが必要。多数でも法律でも奪えない価値があるはず、それが人権・平和であって、これを守るのが憲法。憲法は法律の親分ではなく、国家権力を縛る法(ルール)。自民党草案では憲法は国民を縛る“法律”へ成り下がってしまう。

想像力をはたらかすこと

 また憲法は市民社会の多数派または強者を制限して、少数者または弱者の権利・自由を守る法でもある。強者による弱者への理不尽を許さない役割を持っている。

 その憲法理念を実現させるには想像力をはたらかせることが必要。生活保護受給者は215万人、東日本大震災で家に帰れない人は30万人。しかし非当事者からみれば日本人全体のわずかな少数にすぎない。この特定の少数者への共感ができるか。経済効率だけで測れない価値を福祉や教育などの中に意識すること、想像力をはたらかせることで憲法の理念が実現させる。報道の事実のその先にあるかもしれないもっと大事な「事実」を想像することも政府のウソを見破る力になる。

自民党草案で人権は戦前へ逆戻り

 憲法では人は「みな同じ人として」尊重され、「みな違う個として」尊重される。これは多様性を認める社会をめざすということ。しかし自民党草案は抽象的な人の尊重へ。つまりかけがえのない個人から代替可能な人になる。戦争がまさに人の命を道具に使ったように。また自民党草案での人権、表現の自由は「常に公益及び公の秩序」の枠内で認めるというもの。これも戦前への逆戻りだ。

自衛隊と軍隊の違い

 軍隊は原則、人を殺す自由がある。例外として民間人や捕虜を殺せない。自衛隊は原則、人を殺せない。例外として発砲できる場合がある。自衛隊が軍隊になることはこの原則と例外がひっくりかえること。また日本を外国の脅威から守るには自衛隊で十分。しかし、専守防衛を越え、米国と一緒に戦争するためには軍隊が必要となる。だから憲法を変えようとしている。

 憲法前文に謳う平和的生存権は国家・国民が戦争へ走っても「おかしい」と裁判できる、人権を通して平和を実現できるもの。憲法は、現実を理想に近づけるためにある。今を生きる者として責任を果たそう。あせらず、でも急いで。

(2013年11月3日)