福島駅西口のモニタリングポスト
8月24・25日、原発震災から2年半となる福島をたずねた。
●元には戻りそうにない放射線量
福島駅西口の空間線量計(周囲を除染済み)は毎時0.218マイクロ・シーベルトで半年前とほぼ同じ。事故前の4倍の数値のままだ。事故前に戻すには相当な労力と時間がかかるだろう。地元の「福島民友」と「福島民報」は毎日大きなスペースを割いて詳細な地域ごとの放射線量を記載している。まだ相当高いところがある。全国紙がこれを続けていたら国民の意識はここまで下がらなかったのにと思う。
●除染の基本は拡散させないこと
日本科学者会議の原発シンポジウムが福島大学で開かれた。京都精華大の山田國廣さんは高水圧洗浄など政府ガイドラインに基づく除染は明らかに失敗だと指摘。(1)固いものに浸透した放射性物質を除去できず、低減率が低いため、「除染は効果がない」と住民に不信感を与えた。(2)大型重機で剥げる表土剥離は最低でも5cmで、必要以上の土壌を除去するために膨大な廃棄物が生ずる。(3)一ヶ所に廃棄物を集めるために住民の不安から仮り置き場、中間貯蔵地、最終処分場の確保ができない。
これに対して山田さんはセシウムが微粒子とともに移動することに着眼して地域循環型除染法を提案。
(1)の対案:屋根、道路、樹木幹などの表面にクエン酸入り洗剤を塗布してブラッシングを行うと泡にセシウムが移行する。汚染水を業務用掃除機で吸引した後に蒸発させ、わずかに残った固形物を容器に入れて保管する。除染後の表面線量は80%程度下がる。
(2)の対案:水田に水を張ると雑草が微生物によって分解され厚さ5cmのトロトロ層ができ、ここにセシウムの96%が移行する。この層は乾燥すると2cmになるが、これを剥ぎ取り、水田端の地下に埋設する。
しかしたとえ良い提案でも浸透していかないという。それは「変えられない構図」ができあがってしまったから。効果がなくても除染しているポーズを見せないといけない自治体、利権に群がるゼネコン、変更を嫌う頑なな官僚体制、除染効果に不信をいただく住民。実績を示すしかないと山田さんは手弁当で足繁く福島に通って実証試験に取り組んでいる。
●中間貯蔵施設は必要か
伊達市の放射能対策監の半澤隆宏さんは地域ごとに80の仮置場を私有地につくった苦労話を披露。普通の住民は実際の科学とかけ離れた、感覚的・気持ち的に決めているところがある。日本人特有の横並び意識、見かけが「きれいになる」誤解から除去土壌は多いほどいいと廃棄物を増やす元凶になった。また廃棄物を遠ざけるメリットよりも集中するデメリットを懸念した。しかし最後は住民との信頼関係をつくることで解決したという。
実際に仮置場を訪ねた。除染物入りコンテナが3段組で積まれている。外側のコンテナが内側の線量を遮蔽するので、5mも離れれば影響はなくなる。搬入前に徹底除染をして土を入れたため、実は仮置場の方が周囲の畑よりも線量が低い結果となっていた。
半澤さんは中間貯蔵施設に目処がつけば「仮置場をつくらずに直接運べばいい」となって逆に除染が遅れると指摘。また搬入に多大な時間と莫大な費用がかかることからその計画自体を疑問視している。そして当初も今も中間貯蔵施設を当てにしないから伊達市は除染が進んだとも。
●減ってきた農産物の線量
JA新ふくしまモニタリングセンターは福島市と川俣町を管轄。訪れた矢野目センターはスタッフ4人で32台の検出装置がある。室内は毎時0.03マイクロ・シーベルトまで除染。生産者がスライスして持ち込んだ農産物を砕いて専用容器に詰める。検体づくりは手作業で、週に2000件の測定をする。検体量は原則1㎏(時間30分程度)だがハーブ類は100g、枝豆類は500gで時間を長くする。検出限界(核種毎に10ベクレル/㎏)を超えるのは週に数件という。確実に農産物の線量は下がってきている。今回、地元紙には該当する欄が消えていた。
農産物の放射能測定検体
矢野目センターの測定器
(2013年9月1日)