「押し付け=無理にやらせる。また、無理に受け入れさせようとする」と長崎大学の冨塚明准教授は「押し付け」の意味から話を始めました。
ケンポーとアンポを考える連続講座「第4回日本国憲法は押し付けか?」。4回続いた連続講座は今回で最後となりました。「軍国主義をなくす」「基本的人権の尊重」を念頭に置いたポツダム宣言から帝国憲法改正の背景を説明。最初に憲法改正に値しない憲法案が出たため、GHQが1週間で原案をつくった(つくってもらった?)ものが今の憲法の土台となっています。戦後日本に対する占領管理機構を図で解説し、アメリカではなく、連合国に降伏したことを強調しました。「極東委員会」との2重権力構造にあったことも「初めて知った」との意見が多かったです。
憲法改正をめぐる攻防では、「天皇制」と「九条」はいわば、交換条件にあったことを指摘。憲法に明記すべき「国民主権」をめぐる旧体制とのせめぎあいがあったことを、当時の憲法案を読みながら、実感していきました。
人類の到達点を日本国憲法の前文に取り入れてあることを再確認。冨塚氏は「憲法前文に世界の宝がちりばめられている」と語りました。
講座を受けた全員がうなったのは、憲法施行日を「2月11日」にしようとしていたこと。いわゆる「建国記念日」で、旧体制の名残が色濃く残っていた時代に憲法がつくられたことを改めて感じました。
日本国憲法とアメリカの憲法を表で比較すると、日本国憲法が進んだ憲法である証がいくつも表われました。冨塚氏は「現行憲法を『押し付け』というのは、それをなくしたい人たちの言い訳に過ぎない」と断言しました。「贈り物としての憲法という捉え方」もあることを示し、「この憲法が生かされていない社会が問題だよ」という言葉で締めくくりました。
日本国憲法とアメリカの憲法を比較した表が非常に面白く、「他国の憲法にあって日本国憲法にない部分を詳しく調べるともっと面白いかもね」といった意見が出されました。「子どもの権利」などは世界の憲法では多くの国が盛り込んでいるのに、現行憲法にはない、という問題点の指摘もありました。
「押し付け」という言葉の意味から始まり、自国の憲法の歴史が分かる大変分かりやすい話でした。連続講座を4回受けて思ったのは、現行憲法は日本の宝であると同時に、「世界の宝」であるということ。世界の模範となるべき点がいくつもあることが分かり、護憲の立場を一層貫く必要性を強く感じることができました。
(2013年6月29日)