「国民の声が反映されていない小選挙区制は問題」……こうした切り口で6月13日、「ケンポーとアンポを考える連続講座」の第3回「改憲の正当性と96条問題」が始まりました。チューターは長崎大学の冨塚明准教授です。
冨塚氏は、昨年の衆院選挙の結果から、棄権票の多さを指摘。政治不信の結果であると分析し、当選者と投票者の意識のずれを「朝日新聞」の調査から紹介しました。
「一票の格差訴訟」の問題を取り上げ、「岡山県第2区判決」と「福井県第3区判決」を中心に取り上げました。岡山2区の例をあげると、「長期にわたって投票価値の平等に反する状態を容認することの弊害>政治的混乱の大きさ」といった不等号が成り立つため、「違憲・無効」という判決がなされた、と説明しました。
「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」「憲法改正手続」などは、改正することができない(必要無い)という改正の限界についてのべた「限界説」という考え方に当てはまるとして、各国の憲法条文を引き合いに出して語りました。
各国の憲法改正要件について、表を使って解説し、憲法改正手続が各国ともにハードルが高いことを示しました。冨塚氏はフランスで97%の議員の賛成で「死刑の廃止」が憲法に書き込まれた例を挙げ、「憲法改正というものは、『人類の進歩に貢献』かつ『国民にとってプラスになるもの』でなければならない」と強調し、自民党憲法改正案について批判しました。「97条の基本的人権の不可侵性を全文削除」したことに、日本のマスメディアが報じていないのに、アメリカのマスメディアがふれていると紹介。「変えてはいけない根本のところを変えてしまう」と訴えました。
改憲について、「国民投票にかけて信を問えばいい」との意見があることに対し、情報操作が行われず、判断の誤りがない状態に国民が置かれているかどうか? という点と、棄権の割合が多かった場合、その時でも国民投票の結果は適用されるのか? という2点から論じました。「極端な話、100人が投票に行ったとして、その結果に従うべきなのか?」との極論も語りながら、国民投票の仕組みについて分かりやすく解説を加えました。
映画「リンカーン」を例に、制度を守りながら憲法改正手続を進める努力を紹介。96条先行論に批判的な記事を取り上げ、時の権力者の権勢を縛る憲法を改憲手続の簡略化を促そうという流れに待ったをかけ、改憲を3分の2以上の賛成から過半数の賛成(政権与党が過半数。つまり思い通りにすることができる)にする96条改憲が単なる手続き論でないことを強調しました。
ルールを守ることが大事なのに、「ルールを変更する方法」を変更するところから話が始まっているところがそもそもおかしいと感じます。96条改憲は「国民にとって何のプラスにもならない」ことがはっきりとわかる講座でした。
(2013年6月14日)