佐世保基地の米兵2人が、日本人女性に対する性的暴行の疑いで取り調べを受けていると、米軍・星条旗紙が伝えていることを、5月22日、日本のマスコミが報道しました。
佐世保市平和委員会は、米軍などに抗議申入れをする必要があると考え、取り組みを進めました。その過程で、⑴被害者は、最初に米軍側へ苦情相談をしている。⑵日本の警察が「被害届」を出すよう求めても、被害者がそれに応じない。⑶被害者2人のうち1人は、米兵と交友関係がある・・・などの事情が分かりました。(山下千秋市議・平和委全国理事の調査)
市平和委員会は、第三者が暴行事件として問題にして、米軍などへ抗議するのには、条件が整っていないと考え、抗議行動は見送りました。しかし、事件がうやむやにされてはならないので、その後の事態の推移を見守り、事件の真相究明を求めることなども検討課題としました。
そして(1)少なくとも基地外の事件を日本の警察が捜査できないのは国家主権が問われる。(2)警察が米兵事件を闇に葬るおそれがある。(3)事件の真相を究明して再発防止の具体策を検討すべきだ。・・・と問題提起をしました。そのうえで市平和委員会は5月24日、佐世保原水協と新日本婦人の会佐世保支部と共同で、佐世保市長に「市民の安全をまもる市長は、事件の真相究明を関係機関に働きかけを」との申し入れを行いました。応対した副市長は、「市長に伝える」と答えるにとどまりました。
(2013年5月24日)
佐世保市長 朝長則男 様
2013年5月24日
原水爆禁止佐世保協議会理事長 山下千秋
佐世保平和委員会会長 篠崎義彦
新日本婦人の会佐世保支部代表 真如詠子
米軍兵の女性暴行容疑事件についての申し入れ
新聞報道によると、強襲揚陸艦ボノム・リシャールの2人の米兵が、日本の女性に対する性的暴行事件によって、現在取り調べ中とのことです。米軍関係者は「これ(事件)は、批難されることではあるが、容疑者は有罪であることが証明されるまでは無実と扱われる…」と述べており、暴行容疑の事実については認めているものの、取り調べいかんによれば、無罪放免の可能性も示唆しています。
女性を冒涜する女性暴行事件は絶対に許されるものではありません。徹底した真相解明が求められています。
米軍兵士による性的暴行事件は際立っています。米国防省は、5月7日、米軍の性的暴行事件が2012年度会計年度中に2万6000件発生。対前年度比37%も増加していることを公表しました。米国内一般社会の7倍という突出した数字になっています。その対策として性犯罪根絶法案がこの5月16日に提出されています。
では我が国における米軍による性的暴行事件根絶の対策はどうなっているのか。見えてきません。むしろ(!)地位協定によって治外法権的特権が与えられています。(2)裁判権放棄の日米密約の存在も明らかになりました。(3)現にその多くが裁判権放棄されているという実態も明らかになっています。(4)この佐世保でも平成17年、業務上過失傷害事件では、相浦警察署に拘束されていた米兵の身柄が、米軍憲兵隊によって基地内に引き戻させられるという異例の出来事が発生しました。およそ独立国家とは言い難い、国民の命を守るべき主権侵害がまかり通っています。
今回の事件容疑は、基地外で発生しています。日本の市民生活の中での事件であり、治外法権的特権を特徴とする日米地位協定でも日本の警察権力の行使を妨げることはできません。にもかかわらず、長崎県警の捜査権の放棄ではないかと疑念を持たれかねない現実です。三つの大問題があります。
第一、毅然と国家主権が発揮されているのかどうか。
第二、なぜ、性的暴行事件容疑事実報道の第一報が星条旗紙であり米軍側からだけなのか。
第三、何よりも佐世保市民、とりわけ女性の人権。安全を守るために、どんな具体的対策が取られているのか、取ろうとしているのか、全く見えてこない。
問題解決の出発点は、今回事件の真相解明です。市民の安全を守るべき市長こそ、関係機関に強い働きかけを行うべきです。以上申し入れます。