5月18日、元外交官・国際情報局長の孫崎享さんの講演会が県立図書館であり、150名を超える市民が集まりました。孫崎さんはユーモアたっぷりに時折、参加者に質問をしながらTPPや原発、日米関係など縦横無尽に語りました。
孫崎さんは、現在は危険な状況にあるーー本質が語られないまま次の世代に大きな影響を及ぼす選択が迫られているーーと指摘しました。ウソや詭弁で本当のことが隠され、多くの人々は「騙されることを願っている」。騙されたふりをしないと居場所がなくなる社会になってしまっている。「もう騙されることはやめよう」と呼びかけました。以下、テーマごとのポイント。
【TTP参加交渉】
ISD条項が語られていない。企業は利益確保のために相手国を訴えられる。米国企業は負けたことがない。菅首相は「第3の開国」と言ったが、それはペリーに関税自主権を奪われ、降伏文書で米国言いなりとなり、TPPでまた屈辱を味わうことだ。経団連会長は「バスに乗り遅れる」と言ったが、そのバスにはG8、BRICs、ASEANの主要国が入っていない。
【核の傘】
いざとなったら米国の核使用の脅しで日本を守るという発想だが、相手国は屈せずに米国を核攻撃するかもしれない。米国は自国民を犠牲にしてまで日本を守るとは思えない。「核の傘」などは存在しない。
【尖閣列島問題】
米国の交戦権は議会にある。参戦することは考えられない。日米間では島嶼防衛は日本の役割となっている。自衛隊が守りきれなかったら中国の管轄になり、安保条約の対象外になるとアーミテージが言っている。尖閣問題は棚上げ合意の暗黙了解を維持していくことが有効。
【米国なしで日本を守れるのか】
現代は侵略戦争が起きない時代、軍事力では問題を解決できない時代だ。いま戦争は⑴国内紛争の飛び火⑵領土問題⑶米国の介入でしか起こらない。北朝鮮には軍事崩壊させる意思がないことを示せば攻撃してこない。
【主権を取り戻すには】
主義主張を貫き通す政治家を選ぶこと。米国の北ベトナム爆撃に反対を貫いたピアソン首相は今でもカナダの英雄だ。だが日本人は米国に抗おうとした鳩山首相を潰し、糾弾した。いま大事なことは「どう生きるか」ということ。たとえ結果は出なくても正しいと思うことをやればいい。
(2013年5月19日)