「自衛隊は事実上の軍隊。現実は世界有数の軍隊と捉えられているところにある」
ながさき平和委員会のケンポーとアンポを考える連続講座・第1回「国防軍って何だろう?」の冒頭で、長崎大学環境科学部の冨塚明准教授は、そう述べました。
まず、軍隊の本質を、(1)敵を殲滅する組織、(2)一般社会と違う価値観、(3)軍事裁判所の必要性、(4)深刻な後遺症ーという四つの特徴から説明しました。簡単には人を殺せないため、軍隊では「人を殺す訓練をする」として「こういったものに自民党は変えようとしている」と訴えました。
次に、帝国憲法改正案と現行憲法を読み比べると、元々の精神は「一切の武力を持たない」という理念があり、それを修正したため、「自衛のための戦争」を正当化する解釈が生まれる土台となりました。一方、最近の自民党改憲案を読むと、集団的自衛権や徴兵制ともとれる部分があると指摘され、危険な方向に日本を導こうとしている実態を示しました。
自衛隊は、軍事費・兵備ともに世界のトップクラスで、実際にはあり得ない「非戦闘地域」と呼ばれる場所に海外派兵している現状を説明し、水や燃料の補給が主任務だとしても、「兵站がなければ戦争できない」として自衛隊の戦争協力を批判しました。
また、自衛隊の戦争訓練を批判。2011年6月、自然災害を利用して日米で軍事演習を行い、13年3月には、佐世保の部隊が島嶼沖での作戦訓練を日米合同で行っていることを指摘。さらに、11年7月に自衛隊がアフリカのジブチ共和国に、アフリカでの拠点とする国外基地を開設した事実と地位協定(事実上の治外法権)を取り決めたことを紹介すると、「憲法を変えなければ、自衛隊自体が違法になるところまでいっている」と強調しました。
参加者から「自衛隊が軍隊に変貌したら、自衛隊自体に入らなくなるのでは?」「九条があるから脅威論を背景とした思いやり予算があると思うが、日本が軍備を持つことはアメリカにとって都合が悪いのでは?」といった疑問が飛び出しました。冨塚氏は「貧困を拡大して自衛隊入隊を進めるかも知れない」「歯向かう日本になるので、アメリカは許さないだろう」と回答を返しました。
感想として、「軍隊の持つ本質自体が、国防軍をつくるべきではない理由にそのままなる」「国防軍さえも超えて、海外に出て活動している実態に、『国防軍』という名前の響きにギャップがある」などの意見が出されました。みなさん、お疲れ様でした。
(2013年5月16日)