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だまされてきた原発と核兵器の本質

 10月20日、長崎県九条の会の講演会があり、詩人のアーサー・ビナードさんがユーモアたっぷりに、日本語という「レンズ」を通して見えてくる原発と核兵器の本質について熱く語りました。ビナードさんは、詩人は言葉の道具箱と技術を駆使して何かを発見し、読者と共有しようとする。コピーライターは同じ手法で、人をいかに騙して要らないモノを買わせようかと考え腐心する。そうやって原発と核兵器の真実が隠されてきたと指摘しました。(以下、要旨)

○「這っても黒豆」

 現実を絶対に認めず我を通すことを「這はっても黒豆」というが、客観的データが明らかになっても原発を続けようとする電力会社や経団連、政府のエネルギー政策はこの一言に尽きる。

○ピカドンとジリジリ

 同じ現象でも立ち位置によって言葉は違う。原爆や核兵器はそれを肯定する側がつくった言葉。“ピカドン”は被害者が編み出した言葉で的を得ている。一方の原発は“ジリジリ”と呼ぶべきものだろう。
 ヒロシマとナガサキはその抱える意味が質的に全く違う。ウラン爆弾はその後つくられていないが(註:これは誤り。米国は1950年代に7種類のウラン爆弾を配備した)、プルトニウムは“ジリジリ”の中でつくられ続け、核開発の本流となった。

○原子力の「平和利用」

 当時、プルトニウム製造装置はパイル(山のように積み上げたもの)と呼ばれた。アイゼンハワー大統領はこれを発電機と見せかけて「平和利用」として世界に売り込むことにした。そのためには最先端の科学技術の匂いがする名前が必要で、コピーライターはニュークリア・リアクター(核反応装置)と名付けた。アイゼンハワー任期中に核兵器は千発から2万発になった。原子力の「平和利用」は「平和をへとも思わない利用」の略語だということを見抜こう。

○「原子炉」

 日本への原発導入は正力松太郎と中曽根康弘が推進した。国民の税金が米国に吸い込まれてアメリカの核ビジネスを養う資金になる仕組みをつくり、米国にとってはまさにカモネギ・コンビだった。もうひとつ、被爆者を騙すことも必要だった。広島の原爆資料館で開館した翌年に「原子力平和利用博覧会」を開かせ、「軍事利用」の核兵器とは別物という考えを被爆地にも広げた。
 コピーライターはニュークリア・リアクターを「原子炉」と訳した。核ではなく「原子」、そして高度経済成長を支えた溶鉱炉、団らんをイメージする囲炉裏につながる「炉」を使ったのだ。

○「早期戦争終結」で憲法違反を隠蔽

 原爆開発は合衆国憲法に違反して秘密裏に財政を投入した使い込みプロジェクトで、普通ならば刑務所行き。そこで原爆投下で戦争が早く終わったとキャンペーンを用意周到に準備、戦争終結の喜びと愛国心と核兵器を合体させた。

○「鬼はソ連、福はアトム」

 同時に、核兵器ムラの利権を維持・拡大できるようにソ連の恐怖をあおるネガティブ・キャンペーンも広げた。ソ連も乗ってきて核軍拡で大儲けとなった。

○憲法の力を発揮して

 核燃料サイクルと大間原発建設を続ける狙いはプルトニウム。1947年の国防総省の創設で合衆国憲法は事実上死んだが、同年に素晴らしい日本国憲法が誕生した。“核開発の本流”の被害を受けたナガサキこそが憲法の力でこの流れに終止符を打とう。

(2012年10月21日)