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放射能汚染とどう向き合う

 11月12日、長崎県九条の会が野口邦和さん(日本大学歯学部専任講師)を招いて、「放射能・放射線の影響ー原発と私たちの暮らし」をテーマに講演会を開きました。(以下、概要)

【放射能と半減期】

 放射能とは、ある種の原子が別の原子に変わる性質のこと。その際に放射線が出る。原子数が元の半分になる時間を半減期という。半減期の10倍,20倍,30倍の時間が経つと放射能の強さはそれぞれ、1000分の1,100万分の1,10億分の1に減る。

【ヨウ素131と甲状腺ガン】

 放射性のヨウ素131(半減期8日)は全体の3%が放出され、最初は相当な放射能を持っていたが約2ヶ月間だけが問題で、現在はほぼ消滅している。それは停止した原子炉の中も同じ。いまでもヨウ素131が検出されることがあるが、それは病院からのものと断定できる。

 ヨウ素は成長ホルモンの材料となるので20〜30%が甲状腺に集まる。通常、甲状腺ガンの潜伏期間は10年であるが、チェルノブイリでは4,5年だった。これは周辺住民がヨウ素欠乏症で、余計にヨウ素を取り込んでしまったこと、事故が公表されず高線量の被ばくをしてしまったためと考えられる。

【2種類の放射性セシウムと除染】

 いま一番問題となっているのが放射性セシウムで、全体量の2〜3%が放出された。日本では国内の汚染状況から放出量を推定しているが、海外の測定データによって変更される可能性はある。

 原発を長期間運転するとセシウム137(半減期30年)だけでなく、セシウム134(半減期2年)も貯まる。今回の事故での放出された両者からの被ばく線量は27:73であった。セシウム134はどんどんなくなっていくので、放射性セシウムからの被ばく量は3年後には現在の半分に10年後には4分の1になる。けっして「30年で半分」ではない。

 セシウムは土壌に吸着しやすいので、表土を5センチ程剥いで防水シートに包み、土中に埋めることで被ばく量は大幅に下げられる。今急ぐべきは、人が居住している場所の除染だ。

【汚染食品とどう向き合うか】

 日本で食品などの規制値はウクライナと比べて高いと言われるが、1年目の値と比較しなければ意味がない。ただ日本のセシウム規制値は汚染の実態に合わせてもっと下げるべきだ。

 この値は安全基準ではなく「がまんして食べなさいという基準値」だ。安全基準はゼロであるが、これは実現不可能。「少しでも汚染されていたら食べない」という人もいる。「基準値より大幅に低いのであれば生産者を応援するために食べてもいい」という人もいる。それぞれの人生観からの行動であってどちらが正しいとは言えない。ただ食べる際にはセシウムが水に溶けやすいことを利用して、水で洗い落としたり、ゆでたり、煮たりして放射能レベルを下げて食べる努力は必要だ。

【低線量の被ばくをどう考える】

 人間に対して100ミリシーベルト以下の被ばくの影響について信頼できるデータはない。ではどう考えるか?安全だと言い切って、あとで影響が出ることもある。被ばく量は低ければ低いほどいいと考えるのが放射線防護学の立場だ。

【原発はどうする】

 こんな被害を生む原発はなくさなければならない。再生可能エネルギーも原発をやめない限り進まない。平和でなければ、原発はつくれない。たとえ原発が安全であったとしても、高レベル廃棄物の処分が可能だとしても。通常兵器で原発が攻撃されたらどうなるか、「9.11」がそれを教えてくれた。

(2011年11月13日)