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TPP導入は日本農業と地域を破壊

荒木弘光さん、農業の現場からその実態と展望を語る

 6月25日、ながさき平和委員会は2011年度定期総会を開きました。記念講演は南島原市で農業を営む荒木弘光さん。4世代9人家族に支えられて農民運動の旗を守り続けています。写真やビデオを交え、質問にも答えながら農家の実態やTPPの中身と裏側など語っていただきました。

○ TPP導入の影響

 既に日本は13ヶ国と経済連携合意をしている。TPPでは新たに米国、オーストラリア、ニュージーランドと結ぶことになる。いずれも農業大国ばかり。関税を撤廃することになるが日本の関税は米国に次いで下から2番目でそう高くはない。一番問題なのは添加物や残留農薬だ。日本の安全基準は外国より厳しい。これは国民のたたかいで作られてきたもの。この撤廃が大きな狙いの1 つだ。

 農水省はTPP導入で自給率は14%になる試算を出した。長崎県でも497億円の減収という。いまの自給率40%の日本でも農村が疲弊してしまって、共同作業や冠婚葬祭など、集落としてやっていけない地域が県内でも400ほどあるという。自給率14%になれば国民の食糧を生産する場がなくなってしまう。

○安全保障としての農業

 食糧は災害で足らなくなる。日本でも1994年に米騒動があった。安全な国産米をということで私たちは産直運動を始めた。

 干ばつ、洪水などの災害で食糧が安定的に供給されることは決してない。国民の生命財産を守るならまずは食糧から。それは農業を守ること。関連産業も発展するし、地域も疲弊しない。

 だが農林水産予算は最高時の6割、軍事費の半分以下に減らされた。その予算も諌早湾干拓とか基盤整備と称してゼネコンへ流れ、農家の懐に入るのは微々たるもの。米ブッシュ政権でさえ食糧を自給できない国は根本的に立ち行かない、核に勝る戦略物資と言う。

○米づくりの時給は230円以下! サービス残業で成り立つ日本の農業

 いまの米づくりの時給は230円以下!それでも農業が成り立つのはサービス残業だからだ。国保税を払えない人がいっぱいいる。諌早湾の干拓地で資本を投入してもリース料を払えない企業がある。サービス残業をさせられないからだ。農家は自営業だからできる。農家は天候一つが気になる、サラリーマン根性ではできない。日本の農業は家族労働を中心とした小規模農家を大事にしなければ食糧を守れない。

○農業を生き甲斐としていける社会を

 消費者との連携も必要。生産者の意向が価格に反映され、それが高くても消費者が買うという社会にしないといけない。

 子どもとホタルを捕る、星空を眺めて七夕がいつかなとめぐらす。農村に癒しの場がある。ここに生き甲斐を求めてやれたら素晴らしい。一番の励みは自分の作物を評価してくれた人がいること。TPPにいっしょに反対してください。

(2011年6月26日)