米軍横須賀基地でメンテナンス中だった米原子力空母ジョージ・ワシントンは東日本大震災に伴う福島第一原発の放射能漏れ事故の影響を避けるために横須賀を離れ、洋上で作業を続けていましたが急きょ4月5日に佐世保に寄港することになりました。
4月4日、佐世保市平和委員会と原水爆禁止佐世保協議会は佐世保市長に対して「米原子力空母寄港反対の緊急申し入れ」を行い、原子力安全神話が崩壊した今日、米原子力艦船の佐世保寄港に市民の安全を守る立場からきっぱり反対すること、また、米軍のこのような態度とこれに抗議しない日本政府にも強く抗議するよう求めました。
佐世保原水協の山下千秋理事長は趣旨説明と質問のなかで、(1)僅か9時間の間に維持と補給と言うが、入港して何をするのか。(2)放射線廃棄物は抱えたままなのか、これはどうなのか。(3)定期修理中と言うが、彼等が云うところの完結したのかどうなのか。そういうもとで入ってきているのかどうか。このことについては是非教えて頂きたい、絶対納得できない。こういう事が明確にならないのにあなた方が入港を認めたことは絶対に容認できない、と答弁を求めました。
市側は末竹健志佐世保市副市長、西本基地対策局長、野中環境部長の3人が対応。末竹副市長は、我々が、外務省との間で判っていることについてお答えし、判らない分については確認して後日回答したいと前置きして次のように回答しました。
「固形廃棄物の移送作業がまだ行われていないと外務省から報告を受けている。抱えたまま来ているのかどうかは確認していない。今年はやっていないと云うことを外務省から聞いている。今回の寄港目的は、補給と維持。備品調達と作業員交代で低レベル放射能廃棄物の移送作業はないと外務省から聞いている。550人の文民が乗り組んでいることについては、継続してメンテナンスを実施するための人員であるとういことを米軍から外務省に連絡があったと通知を受けた。今回の入港については、市長のコメントにもあるように、入港については認めざるを得ないという立場。ただ、放射能測定作業については通常通り厳格に対応していきたい」。
これに対し私たちは、(1)メンテナンス中に入港して来るという事は、修理が終わったのか、終わってないのか。通常以上に原子炉の事故が発生する危険性が高い状況のなかの入港と言う事になる。修理は完結したのか、試運転なのか確認したのか。 (2)放射性廃棄物を抱えたままなのか、洋上のどこかで処理をしてきたのか等について質問し、市側は、「確認していないので早急に外務省に問い合わせて連絡する」という事でした。
参加者からは「自治体としてみれば、定期修理をキチンとした上で寄港させるという立場に立たないといけないのに、受け入れるという姿勢がどうかな」という声が出されました。
(2011年4月5日)
佐世保市長 朝長則男 様
米原子力空母寄港反対の緊急申し入れ
2011年4月4日
原水爆禁止佐世保協議会 理事長 山下千秋
佐世保市平和委員会 会長 篠崎義彦
米原子力空母ジョージ・ワシントンが、5日佐世保に入港するといわれています。状況からみて、乗組員の休養、物資の補給などという通常の入港目的とは、考えにくいといわなくてはなりません。
同空母は、3月21日、母港横須賀基地で定期修理中であったにもかかわらず、急きょ出港していました。それは福島第一原発事故からの退避措置とみられていました。
米海軍作戦部長ラフエッド大将は「原子力空母で微量でも放射性物質の残留が判明すれば、船上で発生した放射能漏れの兆候と誤解され、検証や除去の作業が必要になる恐れがあるためだ」と指摘し、さらに、「汚染される可能性のある場所から空母を退避させ、クリーンな状態を維持しようというのが私の考えだ」と語ったと報道されています。
福島原発事故をなんとか終息させようと、懸命の努力が傾けられているさなかです。同時に、多くの国民がどんなに原子力事故が恐ろしいものであるか、大きな不安に駆られています。
この時に、自らも原子炉2基をもち、しかも定期修理中で、放射能漏れを起こす可能性もないとは言い切れないという段階で、危険な原子力空母を佐世保に入港させるとは、信じがたい暴挙と言わなくてはなりません。
しかも、定期修理中に必ずなされるという放射性廃棄物の処理が行われたとは聞いていません。まさかとは思いますが、廃棄物の移し替えなどの処理が行われるそのための入港など絶対にあってはならないことです。
原子力安全神話が完全に崩壊した今日、米原子力艦船の佐世保寄港は、市民の安全を守る立場からきっぱりと反対されるよう、また、多くの市民が心配している心情もかえりみない米軍の態度とこれに抗議もしようとしない日本政府に対しても強く抗議されるよう求めます。
要請事項
1、米原子力空母佐世保寄港に反対の立場を表明されること。
2、今回何の寄港目的なのか、はっきりとさせていただきたい。