1月18日、第21回自由と民主主義を願う市民のつどい(長崎市役所従業員組合主催)が開かれ、土山秀夫さん(元長崎大学長)が「核のない世界への新しいアプローチ」と題して講演しました。
土山さんはオバマ大統領の核問題に対する積極面と限界について指摘し、核兵器禁止条約を中心に据え、核抑止論や冷戦思考から脱却して、「北東アジア非核地帯条約」の実現をめざそうと呼びかけました。(以下要旨)
オバマ大統領は、原爆投下正当論の根強い米国で道義的責任に言明し、国連安保理で「核兵器のない世界をめざす」決議をあげさせ、米ロ間の新戦略核兵器削減条約を批准させた。しかし米経済不況下で国民の不満の受皿となった共和党の要求に屈し、今後10年間で7兆円もの核弾頭の近代化予算を認めざるを得なかった。
オバマの核理念の根本には「テロリストグループに核兵器が渡ればたいへん」という考えがある。そのためNPT(核不拡散条約)至上主義となっている。インドはNPTは不平等だから加盟しないとし、パキスタンはインド次第という態度だ。一方で、国連総会に出される「核兵器廃絶決議」には核保有5ヶ国のうち中国のみが賛成し、インドも賛成している。
またオバマは、他国の核兵器が存在する限り保有を続けると主張している。各国がそのようにしたら永久になくならない。米国の核兵器だけは正しいとでも言うのか。核抑止とは、もし核攻撃をしたらそれを上回る核攻撃で仕返しをすると脅すこと。しかし実態が伴わないと効果がない。もし効果があれば他国も真似る。したがって核軍拡、核拡散を促していくものだ。
東西冷戦中、日本は核武装は国益にそわないと判断して米の核の傘に入った。しかし冷戦終結から20年余、政府は冷戦思考から抜けきれていない。いまこそ「北東アジア非核地帯構想」を追求しよう。これには米中ロが日韓北に対して核攻撃をしないという確約を含むもので北朝鮮も関心を持っている。
昨年のNPT再検討会議の最終文書は史上初めて「核兵器廃絶条約」に言及した。核兵器廃絶はけっして夢ではなく、私たちの手の届くところにいずれは必ずやって来る。
(2011年1月19日)