6月30日、冨塚明さん(ながさき平和委員会事務局長)を講師に「軍事費からみえるアンポと私たちのくらし」をテーマに開催しました。
◆20世紀の遺物に注ぎ込まれる軍事費
はじめに、第二次世界大戦後の世界は、米国がソ連を封じ込めるために米国中心のさまざまな条約機構ができていたが、今はそのうちの4つしか残っていない。世界の流れは軍事力で自国の利益を追求することから共同体や対話へと変貌していることを示し、日米安保は20世紀の遺物であると指摘しました。
その遺物に日本はいくらお金を注ぎ込んでいるのか。例えば、ソ連が攻めてきた時のためにと、陸上自衛隊は1台8億円の90式戦車を300両保有していたが、今年から新しい10式戦車に更新開始(1台14.4億円を13両)。海上自衛隊では1隻1200億円のイージス護衛艦を6隻。航空自衛隊では1機135億円のP3C哨戒機を101機、これは米国ですら60機しか保有していないにもかかわらず、民主党政権は予算を削っていない。F15戦闘機は1機121億円を213機。技術を買い国内で造っているので輸入するより高くついている。
◆見かけより巨額な軍事費
しかし、これだけではない。日本の軍事費(防衛予算)は憲法9条のおかげで、GDP比1%以内でほぼ推移しているが、旧軍人遺族等恩給費や基地交付金、偵察衛星など総務省、内閣府から出ている隠れ軍事費もある。これらを合わせると文教予算を超えている。
また毎年、軍事費の3分の1は後年度負担(ツケ払い)にあてられ、現時点で約3兆円のツケが残っている。
◆根っこには安保条約
多額の国家予算を使い、何に使うのかと驚くほどの軍事力を備えるのはなぜか?根っこには安保条約があるからと説明しました。
安保条約3条では軍備増強が義務づけられている。さらに96年の安保共同宣言、06年の「米軍再編」で安保が実質改定され、極東の範囲が世界規模になり、米軍の活動に自衛隊が協力し、周辺有事に対処も。これにより自衛隊の主任務が海外派兵となり、日本国内や近郊では不要な設備の増強がなされているのだ。
◆思いやりでない「思いやり予算」
米軍の世界戦略にこれほど貢献しているにもかかわらず、さらに金銭的にも支えているのが年間2000億円余りを費やしている「思いやり予算」である。
「思いやり」とは言うものの米国の要求(脅迫)に日本政府が従い、違法に出さざるを得なくなったお金である。それも、沖縄返還、ベトナム戦争敗北、円高ドル安、湾岸危機など米国の都合によってその要求は変わり、日本の負担は重くなっている。ちなみに、米国と二国間軍事同盟を結んでいる国の米国への財政貢献度は日本がダントツの1位で、駐留米兵一人あたりに換算すると1,060万円、2位のドイツが217万円だからその差は驚くばかり。
このように異常な日米同盟の陰で、軍事利権をねらって日米の軍需産業も暗躍しているそうだ。
桁違いの軍事費と「思いやり予算」にボー然とし、これで金儲けをしている日米の企業に憤慨し、私たちの生活に深刻な影響を及ぼしている安保条約を「やっぱり破棄せねば」と強く感じる講座でした。
(2010年7月1日)