普天間のヘリ部隊の移設候補地とされた海自大村航空基地の滑走路
迷走する普天間の「移設」探し。いま「長崎案」が急浮上しています。
発端は昨年12月25日号の週刊朝日でした。「鳩山首相×小沢幹事長 密談スッパ抜き 普天間移設「長崎案」急浮上」のタイトルで3頁の記事が載りました。記事によると、臨時国会終了後の12月4日夕刻に行われた非公式の小沢・鳩山会談で、小沢氏が普天間移設案として「海上自衛隊大村航空基地」を進言したというのです。その理由として「今も米軍ヘリに基地の施設を貸しているし、米海軍佐世保基地にいちばん近いから米軍も異存はないはず」と述べています。
また記事は、「長崎案」は菅副総理も了解済みで、連立を組む社民党を「国外移設から県外移設に軟着陸」させて連立を維持するために北沢防衛大臣のグアム視察が決まったなどとしています。
この報道を受けて金子原二郎・長崎県知事は12月16日の定例記者会見で、県には連絡がないことと2月に退任することからコメントを控えると述べました。しかし、米軍艦の長崎入港さえ、みんなが反対し、県としても反対していると述べ、否定的な態度でした。
一方、松本崇大村市長は12月31日、琉球新報社のインタビューに答えて、「普天間移設に関し、最初から聞く耳を持たないというわけではない」と述べ、「政府から要請があれば検討する考えを示した」と報道されています。(琉球新報1月3日)
12月28日には沈黙を守っていた小沢氏が「沖縄の声は尊重しないといけない。あの青い沖縄のきれいな海を汚してはいけない」と強調したといいます。
また連立与党を組む国民新党の下地幹郎政調会長は、1月5日、記者会見で党の2つの案を示しました。第1案は米軍嘉手納基地に機能を統合し、訓練を関西空港や静岡県のキャンプ富士(東富士演習場)、伊江島補助飛行場などに分散する。第2案は海自大村航空基地など県外に移設するというもの。
そして毎日新聞と琉球新報が、1月5日に開かれた、鳩山首相の私的勉強会である「国家ビジョン研究会」で孫崎享・元外務省国際情報局長(元防衛大教授)が「長崎案」を普天間移設案の一例として提示したことを報道しました。それは海兵隊のヘリ部隊を海自大村基地に移転させ、歩兵部隊は佐世保の陸自相浦駐屯地へ、さらに陸自の連隊をキャンプ・シュワブに配置させるというもの。この案に鳩山首相は「非常に先見性のある外交方針で感銘を受けた」と述べたといいます。
いま大村航空基地では大村湾を埋め立てて1・3倍に拡張する計画と滑走路の防衛省への移管計画が進行中です(現在、滑走路と航空管制は国土交通省の管轄)。これが普天間のヘリ部隊受け入れ案に利用された感もあります。
米海軍佐世保基地は強襲揚陸艦部隊の基地で、揚陸艦は常に沖縄県ホワイトビーチで米海兵隊やヘリを搭載して任務に着きます。海兵隊を相浦駐屯地に、またヘリ部隊を佐世保に10分ほどで到着できる大村に置く案は米軍にとっては願ったりかなったりかもしれません。在沖縄海兵隊は共同通信の取材に対して「普天間のヘリコプター部隊は移設後も、一体運用する地上部隊と飛行時間で20分以内の近接距離に配置する必要がある」と述べたといいます。(1月5日)
しかし、現在でさえ海自の哨戒ヘリの離発着訓練時の騒音が地域住民を悩ませています(そもそも滑走路の防衛省移管問題は騒音対策への補償金捻出のために持ち出された)。これが米軍ヘリとなったら想像を絶するものとなるでしょう。また隣り合わせの長崎空港へあたえる影響も計り知れません。普天間の危険性をそのまま持ってくるようなものです。米軍基地のたらい回しを許さず、縮小・廃止を求めましょう。
(2010年1月8日)