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SM3に傾斜するオバマ政権

加速される日米軍事一体化


「みょうこう」から発射されるSM3(ミサイル防衛庁ホームページ)

 実証済みで対費用効果の高い技術に限って「ミサイル防衛」の推進を掲げるオバマ政権。その主体はSM3にシフトすることが明確になっています。実証済みにはほど遠いSM3ですが、ますます日米一体化に拍車がかかろうとしています。

 10月28日、「ミサイル防衛」用に改造されたイージ護衛艦「みょうこう」のSM3発射試験が、天候の関係で予定より1日早く行われ、標的ミサイルを迎撃したと報じられました。

 JFTM-3(コードネーム:Stellar Raicho)と名付けられたテストでは、午後1時(日本時間)にハワイ・カウアイ島のミサイル評価施設から標的ミサイルが発射され、「みょうこう」のイージス・システムがこれを探知・追跡し、1時4分に1発のSM3ブロック1Aを発射しました。SM3はその約3分後に太平洋上空約160kmで標的を迎撃したといいます。標的は中距離弾道ミサイルで弾頭が分離されました。「みょうこう」はハワイでSM3を搭載して帰国する予定です。

 一方、米海軍の巡洋艦レイク・エリーと駆逐艦ポール・ハミルトンも標的を探査・追跡し、迎撃シミュレーションを実施しました。

 「みょうこう」は今年2月から5月にかけて三菱長崎造船所で改造工事が行われました。改造費用は約235億円(8発のSM3を含む)、試験費用は約67億円(1発のSM3を含む)。


長崎港で改造工事中の「みょうこう」

 前日の10月27日、防衛省は前回の迎撃に失敗した「ちょうかい」について、日米の調査の最終結果の概要を発表しました。それによると、原因はSM3の「軌道や姿勢を制御する弾頭部の軌道姿勢制御装置の一部に生じた不正常な作動」であり、それは「弾頭部を放出した後に発生した極めて稀な事例であり、設計や製造工程に起因する問題ではないと判断」したとし、今後もSM3を推進する構えです。

 今年9月17日、米オバマ大統領は戦略核兵器削減条約の後継条約の締結促進のためにロシアの反対する東欧MD計画を根本的に変更しました。それはヨーロッパにSM3を搭載するイージス艦を配備するもので、2011年までにSM3ブロック1Aを、15年までに同ブロック1B(陸上配備型も含め)、さらに18年までに同ブロック2Aを、20年までに同ブロック2Bを配備する計画です。

 これに関連して、10月に来日したゲーツ米国防長官は北沢防衛大臣に、SM3ブロック2型をヨーロッパの第三国へ提供することを認めるよう要請し、10年末までの回答を求めました。
 次世代型のブロック2Aは現在、日米で共同開発を行っています。当然ながら米国への武器輸出は日本の武器輸出三原則に抵触するため、自公政権は04年に「ミサイル防衛」に限るとして米国との共同開発に合意しました。しかし、06年に交わされた交換公文では、日本の同意なしに第三国への提供や目的外使用を禁止しています。そもそもこの共同開発は日本防衛が建前のはずだからです。

 SM3ブロック2型のヨーロッパ配備は「目的外使用」であり、ましてや米国の狙う、ドイツなどヨーロッパ諸国への供与は、共同開発の趣旨を逸脱するものです。もし鳩山政権がこれを認めれば、武器輸出三原則はまたひとつ骨抜きにされ、日米軍事一体化に拍車をかけることになります。

(2009年10月29日)