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日米新政権下、佐世保基地はいま

 10月25日、ながさき平和委員会は佐世保基地調査を行いました。ガイドは山下千秋さん。米軍再編の先取り強化の進む佐世保。日米の新政権下でも依然として機能強化を続ける佐世保の姿を改めて目の当たりにしました。

コースはLCAC新駐機場建設現場(針尾西町から)→前畑弾薬庫→LCAC道路(崎辺)→海自倉島岸壁→佐世保港周回→インターチェンジ建設現場→立神ゲート→SSK第3ドック→船越医療用倉→針尾米軍住宅。

 以下、参加者の感想文を掲載します。

米軍の快適さは国民生活の犠牲の上に

 基地調査に参加したのは何十度目かですが、来る度に佐世保の街や基地は少しずつ変わっています。
 今回の調査の目玉である海上から間近に見た横瀬のLCAC基地建設現場の様子もですが、その前に来た時より確実に基地は増強され米軍の利便は向上し、住民の生活は窮屈で不便になっていました。
 今回一番心に残った(頭にきた)のは、米軍からの返還を予定している崎辺のLCAC駐機場の跡地を、SSKではなく自衛隊が使用することで、結局米軍は倍の規模に増強した新駐機場も手に入れた上にその後の基地も利用し放題という「軍・軍すみ分け」の実態です。
 また、地位協定2−4aでSSKが使用している立神4、5号岸壁の接岸料を年間5000万円も「米軍に」支払っていることにも、びっくりしました。元々日本の土地に米軍基地を作っているのに、なぜ更に使用料までせしめられなければならないのでしょうか!
 実際、アメリカが思い描くままに着々と増強されていく基地を目のあたりにすると、平和委員会がめざす、基地も軍事同盟もない世の中をつくるまでの道のりの険しさに、やりきれない気持ちになります。
 けれど、何度も現場へ足を運び、実際に自分の目で見て初めて気がつく疑問や小さな変化を追及し、知らせていくこと、住民の生活の声と目線から軍事同盟や基地の矛盾を告発していくことの確かな強さもまた山下千秋さんのお話をききながら感じました。
 米軍が快適になればなるほど、私たちの生活が苦しくなり基地の存在自体への矛盾がふくらんでいく…めざす未来への確かな道のりはやっぱり地味で細い曲がりくねった道かも知れませんが、この道を共に進む仲間をまた一人迎えられたことを今日の一番の喜びに帰途へつきました。


米軍と日本政府の姿がよく見える

 佐世保の基地調査に行くごとに、佐世保港を取り囲む米軍基地や自衛隊の位置関係が少しずつ分かってきました。
 前畑弾薬庫では、周辺住民から「撤去返還」の要請が出され、市議会で全会一致で採択されたにもかかわらず、日米政府の切り崩しにあい、針尾への「移転返還」に変わったこと、今から針尾に作っても完成までに20年はかかること、「これは佐世保基地の恒久化の始まりである」との指摘が印象的でした。住民の声は市議会を動かしたのだから、その先の反動を阻止するためには、私たちがもっと地域住民の取り組みに敏感になって支援する運動が必要だったのではないかと感じました。
 LCACの新駐機場も知らないうちに着々と建設が進んでいました。LCAC基地はアメリカ本国にも2つしかない。まして海外に駐留させているのは佐世保だけなのに、太平洋全体で36隻の配備のうち佐世保に12隻置こうとしていることに、戦略上、佐世保をどれだけ重視しているかを思い知らされました。
 戦争の指揮・統制の中心的役割を果たす強襲揚陸艦エセックスも寄港していましたが、そのフェンスの前には監視台が置かれていて、異様な光景でした。
 米軍住宅の拡張、住民生活を押しのけて米軍の要望にこたえた高速道路網の整備など、アメリカに従属している日本政府の姿がよく見えた一日でした。


要求実現はたたかいでこそ

 佐世保の労働者・住民のたたかいが米軍の横暴をくいとめ、要求実現を勝ち取ってきたことをあらためて実感しました。
 米軍が使いたいときに自由にタダで使えるという屈辱的な第3ドック協定を結ばされているSSK。しかし労働者は死活に関わる問題として米強襲揚陸艦のドック使用を体を張って阻止しました。それから13年間、米軍からの要請はなく、協定は死文化しています。
 またSSKが長年使用してきた米軍赤崎貯油所の敷地の一部も、米軍優先のため何度も衝突が繰り返されてきましたが、ようやく日本に返還されました。基地との境につくられた真新しいフェンスが印象的でした。
 船越医療用倉庫前の土地も返還され、地域住民の切願だった直線道路が開通しました。しかし実現には14年もの時間がかかるなど、いかに米軍基地の存在が地域の発展の障害となっているかを示しています。
 前畑弾薬庫の問題は沖縄の普天間基地と同じ構図でした。地域住民と市議会は「撤去返還」で一致。しかし針尾弾薬庫の近代化をもくろんでいた米軍は、針尾への「移転返還」に誘導し、1000億円以上の費用を日本に出させようとしています。
 辺野古崎への「再編」案も、針尾への統合案も米軍のためのもの。精査せずとも国民にとってムダでしかありません。大きな運動で「撤去返還」を勝ち取っていきましょう。


新政権下でも佐世保は強化の一辺倒

 今回基地調査に参加して、今なお、基地が増強され続けていることに驚きました。LCAC基地、針尾弾薬庫、米軍住宅etc。西九州道路のインターを基地正面ゲートのまんまえにつくるなんてあからさまですね。まさに米軍のための道路です。日本はホントに米軍のいうままなんですね。
 オバマ大統領になってからなんとなく平和の方向に向かっているかのような錯覚がありましたが、実際に基地を見ると決してそうではないということがよくわかりました。特にLCAC基地。なぐりこみのためのLCACの海外基地が佐世保だけだということ、しかもそれが強化されようとしていることに、「やはり佐世保は『出撃基地の拠点』なんだ」と強く思いました。
 前畑弾薬庫返還の住民運動を逆手にとった針尾弾薬庫強化。「普天間と同じ」と山下市議。長崎でも沖縄のようなたたかいが求められているのでしょう。SSKの第3ドックをめぐる労使一体のたたかい。「たたかわないとだめなんです」という山下市議の話が印象的でした。
 それにしてもいつも思うことですが、あのすばらしい佐世保港。8割以上も米軍に提供されているなんて驚きです。佐世保港に漁船や客船、貨物船がたくさん行き交う日はいつ来るのでしょうか。一日も早くかもめが群れ飛ぶ佐世保港にしたいものです。


30余年ぶりの佐世保、あらためて怒りわく

 反核平和への流れは歴史の明確な本流である。時代の趨勢はアメリカ大統領「オバマ演説」に象徴されるが、一方では、沖縄基地「移転」問題に関するゲーツ米国防長官発言や恫喝的「態度」にみられる時代錯誤の現実もある。
 先日、佐世保「基地巡り」の機会にめぐまれた。「軍港・佐世保」を眺めるのは久しぶりである。
 針尾島から対岸を望むと横瀬地区が視界に入る。LCAC(上陸用舟艇)駐機場の新たな「建設」現場である。新・基地建設埋立て費用(約250億円)は税金が使われるのだと言う。
 嘗て佐世保を母港にした艦船は工作・補給艦。今は、世界最大と言われる洋上戦闘医療施設を持つ強襲揚陸艦エセックス他、掃海艦、LCACなど「揚陸」主体の艦配備が注目される。戦略戦術上、敵地に乗込む陸上戦闘を意図しているのだろう。
 立神港区は一般市民の「立入禁止」エリアが拡張され、鉄条網フェンスは民間の道路側にまで迫り出していた。牽引式監視(カメラ)台の設置など基地周辺の様変わりには驚いた。
 西九州自動車道インターチェンジ建設のロケーション配置、米軍の将校住宅基地外移転(28億円)も無視できない。ニミッツ・パークにかかるシェルター付き高架橋などは異様さの最たるもの。
 税金が湯水のように使われる時代錯誤の「基地の街」、屈辱的実態の異様さに怒りをあらたにした。

(2009年10月28日)