6月27日、ながさき平和委員会の定期総会が開かれ、フリー・ジャーナリストの西谷文和さんが、『報道されなかったイラク戦争』と題して記念講演を行ないました。西谷さんは今年2〜3月に取材したイラクの映像、6月のアフガニスタンの映像をまじえながら「テロとのたたかい」の実態を告発しました。(以下、概要)
【泥沼化するイラク】
バクダッドではイラク軍が検問しているため、ビデオ撮影は車内からの隠し撮り。不気味な無人の米軍飛行船が24時間、市民生活を監視しているという。市内には自爆テロを防ぐという壁が。米軍の戦車・装甲車は優先権があるため道路は渋滞する。
普通の商店街の店の軒先で車イスを売っている。障害者が増えたためだ。大通りに面したホテルは、ロケット弾の攻撃の危険があって廃業。武装勢力が携帯電話で起爆できる爆弾を道路に仕掛ける。戦車からは妨害電波を出しているので携帯電話が通じなくなる。戦争のハイテク化が進んでいる。とても「解放された」街とは思えない。
【子どもへの戦争被害が多発】
バクダッド子ども病院では入院患者の8割が白血病という。イラク戦争後、子どもの奇形が増えている。指の融合、口唇口蓋裂、歯無症などは劣化ウラン弾による遺伝子異常と見られる。たまたま訪れた病院でも子どもの患者が列をなしている。
その一方、米軍の空爆後に原因不明の全身麻痺患者が増えている。米軍は戦争犯罪である神経麻痺ガスを使った可能性がある。米軍は空爆だけで制圧できないので空爆後に地上戦に入る。武装勢力を痺れさすため、直前に神経麻痺ガスを使ったかもしれない。証拠が残らないようにごく微量の毒ガスを。しかし大量に吸った人や体の小さな子どもは、毒が体内に残り、じわじわと被害が出た?
「確証はないが米軍ならやりかねない」と西谷さんは強調した。ヒロシマ・ナガサキへ原爆投下。ベトナム戦争での枯葉剤。クラスター爆弾を使った米軍ならば。
「テロとのたたかい」の特徴は次の4つにまとめられる。(1)環境破壊 (2)戦争の民営化 (3)ウソで開始 (4)民間人の犠牲がひじょうに多いこと。
【戦争の民営化】
イラク戦争は歴史上もっとも民営化された戦争である。
ブッシュ一族とビンラディン一族とは9・11事件以前から、カーライル・グループという投資専門会社の役員と大株主だった。戦争が儲かるのでPMC(民間軍事会社)を子会社としている。
PMCは世界中から軍隊経験のある若者をスカウト。イラクに派遣して巨額の利益を上げる。その収益が親会社に流れるという仕組み。イラク戦争の仕掛け人のチェイニー副大統領がCEOを務めていたハリバートン社はイラク戦争1年間でベンタゴンの受注額を37位から7位に急増させる。
民間企業が肩代わりする戦争は米軍にとって都合がいい。ネパール人、南アフリカ人、フィジー人を雇うので人件費が安い。彼らが死んだり障害を負っても政府に請求や抗議ができない。二重にも三重にも都合が良い。
いま米軍はもっと金を使わない、自衛隊や韓国軍という「タダの軍隊」を使った戦争を考えている。それには9条が邪魔となっている。改憲の狙いはそこにある。
【戦争はウソで始まる】
戦争はウソやでっち上げで始まる場合が多い。満州事変は大本営によるねつ造、湾岸戦争は広告会社の策略、イラク戦争は大量破壊兵器問題だった。
西谷さんは「9・11」にも疑問を投げかける。ペンタゴンに突っ込んだ飛行機の矛盾、解体工事のようなワールドセンタービルの崩壊、飛行機の突っ込まないビルの崩壊、崩壊直前に映るヘリコプターの映像。
西谷さんは「真相は永久にわからないかもしれないが、9・11があったからアメリカは戦争ができ、ブッシュとその取り巻きは儲かったのほ事実」と指摘する。
戦争は世論の支持がなければ開始・継続できないのでテレビ・新聞が操られることが多い。ソマリア派兵法の衆議院通過はSMAP草なぎ逮捕で消された! 新型インフルエンザも騒ぎすぎ。「ちょっと立ち止まって考えることが必要」と西谷さんは訴える。
【民間人の犠牲がひじょうに多い】
テロリストが潜伏しているという情報が入ればその地域を攻撃するためたくさんの市民が巻き添えになる。民間人が殺されると、その息子や父親がテロリストになることが多い。タリバンを米軍が攻撃すれば被害者の中から「ニュー」タリバンが誕生する。解決には対話しかない。
オバマはイスラムとの対話といいながらテロとの戦争を続けている。背景には軍需産業からの圧力がある。平和の世論が高まればイスラムとの対話となる。しかし私たちが無関心であればテロとの戦いが続く。このままだとアフガンは第2のベトナムに。いまはその岐路にある。
【生活苦の原因は軍事費】
国の予算を福祉、教育、医療、街づくりに使えば、それらの職種の人が増せ、労働を通して税金が還流し、国民生活は豊かになる。しかし軍事に回すと税金がたらなくなる。税で軍事費と社会保障の双方を賄うことはできず、国債の大量発行となる。
いまなぜ生活が苦しくなり、ガソリンが一時期こんなに上がったのか?それは博打マネーが先物市場に流れ込んできたから。お金が余ってるからそうなった。必要以上に供給しているからだ。それは国債を引き受けたから。戦争を続けるため政府は大量の国債を発行した。アメリカや日本は戦争競争格差カジノ経済。しかしヨーロッパのような平和、福祉、ものづくり経済に変えていかないと私たちの生活はよくならない。
【イラク戦争の6年の総括を】
米はイラク戦争で3兆ドルを使った。日本の国家予算4年分。今の物価に換算してベトナム戦争を上回り、朝鮮戦争の倍。死者4300人、傷害58000人、PTSD(精神的な障害)10万人、TBI(爆風による脳への障害)30万人。今後の医療費が膨らむのは必然。
一方の日本はイラクへ延べ9560人を派兵し、961億円を使った。そして空自は米兵を運ぶという間接殺人を犯した。その6年間の総括せずにソマリアへ派兵。戦争を起こすと子や孫の代まで借金が残る。命を守ると同時に福祉や暮らしを守るためにも戦争を止めていかなければいけない。
(2009年6月28日)