5月21日、非核長崎港をめざす連続学習講座の第2課「米艦船寄港と地位協定第5条を考える」が開かれました。講師は冨塚明さん(ながさき平和委員会)。
冨塚さんは、主権を守るべき外務省が米軍の便宜をいかに図るかに腐心していると指摘し、そのために三重構造の地位協定体系がつくられ、米艦寄港も該当すると語りました。
【ご都合主義の外務省】
冨塚さんは、今年4月の米艦の石垣強行入港時の外務省の言い分にひとつひとつ反論していきました。とくに「米艦入港だけ拒否するのは港湾法13条に違反する」という主張には「港湾管理者の権限を否定しておきながら、平等のところだけつまみ食いするのはご都合主義だ」と批判しました。
【地位協定の本質は】
地位協定は外国軍隊に特権を与えるもので、本来、国家主権と相いれない。自国民の利益を最大限守ろうとするのが外務省の役目なのに、逆にいかに米軍に便宜を図るかを腐心しているのが実態だと冨塚さんは指摘しました。その一方で自衛隊のソマリア派兵では、米軍と同質の特権を得る地位協定を約18億円の財政支援と引き換えに手にしたことを明らかにしました。
【三重構造の日米地位協定体系】
国際問題研究者の新原昭治さんは、日米地位協定体系は三重構造(本文/特例法-合意事項・議事録-非公表・密約)になっていると指摘しています。冨塚さんは、「特例法によって米軍の治外法権的特権を保障し、さらに合同委員会合意によってそれを拡大している。一部は公表されているが、圧倒的部分は非公表で、密約もある。しかも日米合同委員会は事実上、国会より上に位置する」と述べました。
【第5条による寄港の実態】
そのうえで冨塚さんは米艦寄港の実態を次のように指摘しました。
地位協定第5条は公目的の場合には米艦船の接岸料と強制水先案内を免除するとしか述べていない。公表されている「合意議事録」では入港できる港は開港(貿易港)のみ、また特記なき限りは国内法の適用をうたっている。したがって入港は港湾管理者の許可が必要のはず。しかし『日米地位協定の考え方 増補版』(外務省機密文書)では、「レクリエーション目的の熱海(非開港)利用も、合理的理由があれば拒否できないと解釈する、出入りは米軍の権利である、軍隊に国内法を細部まで適用するとは解釈しない」と、米軍にフリーハンドを与えている。
【入港は拒否できる!の声を】
最後に冨塚さんは、自治体は拒否できる!という声を大きくしていこうと呼びかけました。とくに(1)ランタン・フェスティバルに寄港するのは公目的ではないこと、(2)日本を世界戦略の足場にして動き回っている在日米軍は、安保条約の目的を大きく逸脱しており、その寄港は地位協定にうたう公目的ではない、ことを強調しました。
討論では「空母準母港化にともなう随伴艦寄港が増えている。その意味でも佐世保の運動も重大となっている」「港湾管理者の拒否にもかかわらず石垣港には強行した。その既成事実化を許せば非核神戸方式も危うくなる」「非公表部分は知られたらまずい内容だと理解すべきだ」「やはり安保が諸悪の根源だ」など活発に意見が出されました。
(2009年5月22日)