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米掃海艦が石垣島寄港を強行


掃海艇ガーディアン(米海軍佐世保基地)

 4月3日、佐世保配備の2隻の米掃海艦ガーディアンとパトリオットが沖縄県石垣島の石垣港に強行入港しました。港湾管理者である石垣市の大浜長をはじめとする広範な市民の反対を無視しての寄港でした。

●「友好・親善」は名ばかり

 2隻の掃海艦は米軍港であるホワイトビーチ寄港後、「乗組員の休養と親善・友好」を目的に入港しました。石垣市長は「市民の安心安全を守る観点から同意できない」とし、オバマ米大統領にも文書を送っていました。県知事も自粛を求め、市議会議長も個人的な見解として賛成できない立場を示し、「親善・友好」はすでに成り立ちえません。

 艦長らは入港時に200人以上の市民による抗議を受けました。また市民の座り込みによって約5時間足止めされ、その後、警察官を盾に強行突破しました。市長は「石垣港は民間の純粋な利用に供するもので、軍艦が入るような設計や構造にはなっていない。それでも強引に入ってくるとは軍隊の本質が見える。制服を着た友好親善はあり得ない。復帰後初めての異様な光景で、満身の怒りを込めて抗議する」と述べました。

 夕食会など、艦長らと交流した市民は十数人にとどまり、また兵士の自由行動の日程は予定されていた半分も消化できなかったといいます。

 3日の晩、「いしがき女性9条の会」が港湾施設の金網に取り付けていた抗議の布製横断幕「NO WAR SHIP」が米兵らしき2人に持ち去られるという事件が起きました。
 ケビン・メア在沖米国総領事は5日、掃海艦の出港直前に「盗難事件があるかどうかは分からないし、(犯人の写っている防犯カメラの映像は)私の見解では捨てられたごみを片付けたのではないかとみられる」と暴言。ところが掃海艦の出港後に、米海軍犯罪捜査局が八重山警察署に横断幕を渡していました。「掃海艦の艦長から提出を受けた」ということですが、捜査中を理由に艦長名や入手経路などは明らかになっていません。このメア総領事は、オバマ政権のもと、国務省日本部長に就任する予定。

 「非常事態宣言」の中、石垣市職員は休日返上で対応に走り回り、警察官は危険回避のために住民と米軍関係者の間にたつなど、さながら「米兵の休養のために、市民が疲労困ぱい」の状況。

●目的は影響力誇示と調査

 米海軍は当初、4月1〜3日に寄港する通知を出していましたが、石垣市が岸壁の空きがないと拒否したため3〜5日に日程を変更して再通知しています。寄港すること自体が目的でした。

 ケビン総領事は「この地域での米海軍の行動が日米安保体制の下の日本の防衛に貢献し、地域全体の安定と安全に寄与する」とと軍事的影響力を誇示する狙いがあることを明確にしています。

 ガーディアンとパトリオットは昨年も6月24〜26日に「友好、親善と乗組員の休養」を目的として与那国島祖納港への寄港を強行しています。与那国町長は反対表明、県知事も自粛要請を行いましたが、日本復帰後、米艦の初めて民間港への寄港となりました。
 このときも最初は石垣への寄港を打診し、市長をはじめ地元の反対の声を前に、寄港地を与那国島に変更。今回同様米軍港のホワイトビーチを経由して寄港しています。
 与那国寄港の際、メア総領事は「入港することでいろんな情報が入る。長らく入港していない港であれば、海図に記載されている水深が正しいかなどを確認する」(沖縄タイムス)と調査の一環であることを認めています。

 「台湾有事」の際には石垣島を中継基地とする、そのための準備を始めたのではないか?

●地位協定第5条の拡大解釈許すな

 国は岸壁に空きがあれば日米地位協定上も、船舶の平等な扱いを定めている港湾法上も入港を拒否することはできないと主張しています。

 しかし地位協定は第5条は、米軍艦の寄港に対して接岸料と水先案内の免除を定めたものです。水先案内については地位協定に基づく特例法が制定されていますが、寄港の許可の権限についての特例法はありません。したがってそれは国内法(港湾法)に基づいて自治体が判断するべきものです。

 また港湾法は軍艦の入港を想定してつくられたものではありません。大浜市長が「軍艦まで平等に扱うのは異質。港湾管理者の判断が生かされるべきだ」と異議を唱えるのは当然のことです。岸壁が空いてさえいれば米軍艦が好き勝手に利用できるのであれば、全国の港が事実上の米軍基地になってしまいます。

(2009年4月9日)