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米自衛隊に初の「破壊措置命令」

さながらMD大演習の様相


佐世保港内で弾薬等の積み込み中のイージス艦こんごう(3月15日)

 3月27日、浜田防衛大臣は、北朝鮮の「試験通信衛星」打ち上げに対して、不測の事態に備えた「破壊措置命令」を出しました。北朝鮮の「ロケット」が通告通りのコースを飛翔するとすれば、日本には影響はなく、失敗して一部が日本領域内に落下してくる「万万が一に備え、弾道ミサイル防衛能力を有する自衛隊の部隊を展開させ、 警戒態勢を」とるとしています。

 空自基地に配備されているPAC3の一部を秋田県の2自衛隊施設に、岩手の3自衛隊施設に移動させ、さらにこの機に便乗して全く関係のない都心部の4つの基地にも展開するといいます。

 また佐世保配備のイージス護衛艦「こんごう」「ちょうかい」は日本海で迎撃に備え、横須賀配備の同「きりしま」は太平洋側でミサイルを追尾することになります。「ミサイル防衛」対応工事が施された「こんごう」は事前通告のあった標的ミサイルを迎撃、同じく「ちょうかい」は抜き打ち発射の標的を途中で見失っています。「きりしま」には対応工事は施されていませんが、06年の米軍の迎撃テストに参加して標的を追跡しています。「きりしま」の派遣は明らかにデータの測定でしょう。

 そもそも「ミサイル防衛」は、人工衛星の打ち上げ失敗を想定したものではなく、飛行する弾道を計算して体当りものです。23日の「政府筋」の「当たらないと思う」発言、24日の外相の「難しい」発言は率直なところでしょう。

 相手国に配慮のない今回のミサイル発射は、たとえ「人工衛星」打ち上げであったとしても容認できるものではありません。日本政府は徹底した外交努力で、「人工衛星」打ち上げ回避を求めるべきです。

 今回の「破壊措置命令」は明らかに過剰な反応で、「万万が一」を全面に押し出し、実戦に近い形での一大演習−−日米間の連携、データ収集、迎撃シミュレーション、情報操作、「国民保護」=国民統制、・・・の様相を示しています。


立神桟橋に接岸中のイージス艦ちょうかい(3月15日)

●果たして国連決議違反に相当するか

 日本政府は、今回の「ロケット」発射は国連安保理決議違反として、発射された場合の制裁措置を検討しています。しかし、その根拠を明確に示そうとはしていません。

 06年7月の北朝鮮の弾道ミサイル発射に対し、国連安保理は「弾道ミサイル計画に関わる全ての活動の停止を要求」する決議を全会一致で採択しました。日本政府が初めて主導的にかかわった決議といいます。決議が具体的に非難しているのは、(1)ミサイル発射自粛を破り、(2)適切な事前通報をせず、(3)今後も発射する可能性を示唆し、(4)NPT脱退表明と核開発を追求していること、です。

 しかし6発の短距離ミサイルは北朝鮮沿岸の予定地に着弾。この方向はアラスカ、失敗した「テポドン2」はハワイ方向でした。いずれもどこの国への脅威となるものではなく、(津軽海峡上空を通過なら問題だが)米国へのシグナル性の強いものでした。

 改めて決議を見ると(1)(3)は日朝間の約束に関すること、(4)は当時のミサイル発射とは直接関係がなく、本来、国際非難の対象は(2)だけではないのか。とすれば、今回の事前通報はそれをクリアすることにもなります。

 いずれにせよ、政府は明確な根拠、論理展開を示すべきです。

●ミサイルに関する二重基準を許すな

 北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、国連安保理が非難決議をあげた06年、実は世界中で70発ものミサイルが発射されています。

 米国は射程6800〜8200kmの大陸間弾道ミサイルの飛行テストを4回実施しました。廃棄するMXミサイルの核弾頭をリサイクルしてミニットマンIIIに換装するためのものです。ロシアも「ミサイル防衛」に対抗する潜水艦発射の新型弾道ミサイル「ブラヴァ」のテストを繰り返しています。
 インド、パキスタン、イスラエルも中距離弾道ミサイルのテストを繰り返しています。いずれもNPT未加盟であり、事実上の核保有国です。

 米ロを含め、これらの国々に対して非難の声が上がらないのはなぜ?

 そこには北朝鮮を国際社会の一員に何とか引きずり込もうとするのではなく、逆に「いけにえ」として国際社会の前に差し出し、北朝鮮を非難することで自分たちの横暴を合理化しようという目論みが見え隠れします。

 どこの国であれ、ミサイル発射は中止すべきであり、そんな費用があれば国民生活にまわすべきです。
 国連憲章は全ての国々が対等であることを謳っています。北朝鮮のミサイル発射だけでなく、他の国に対しても同じ非難をするべきでしょう。いたずらに対立を煽って政権維持と金儲けを企む輩がいることも含めて、曇らない目で真実を見つめるべきではないでしょうか。

(2009年3月27日)