米兵が3300発もの銃弾を投棄
またも「公務中」 真相解明阻む地位協定


米軍と共同使用の海自崎辺小銃射撃場

 米海軍佐世保基地の米兵が3300発もの銃弾を佐世保港に不法投棄していたことが分かりました。

 佐世保基地広報部によると、投棄した米兵は基地警備部の夜間勤務者(警備主任の二等兵曹)。10月23・24日に射撃訓練を行い、残った銃弾をビニール袋に入れて10月27日未明に公用車で針尾弾薬庫、前畑弾薬庫及び赤崎貯油所近くの制限水域に捨てました。後日、ダイバーが捜索して回収したのは散弾銃の銃弾約3000発、M16ライフルの銃弾335発でした。

 警備部が管理する銃弾は定期的に前畑の海軍弾薬部隊から購入しています。米兵は警備部への銃弾の受出の任務についていました。
 10月27日午後3時に日本人従業員が発見するまでの3日間余り、3300発もの銃弾が行方不明だったことを誰も気付かなかったわけで、ずさん極まりない管理体制が問われています。

 米軍が共同使用している海自崎辺小銃射撃場では、年間延べ2500人の米兵が約20万発もの銃弾を発射しています。米兵は公道を通って3ヶ所の基地周辺に投棄したのですから、外部へ持ち出されてもわからないはずです。本当に全部回収できたのか、近年起きている銃の事件のことを考えると恐ろしくなります。

 ところが米軍は「当時は公務中」と言い張り、米個人保護法や内部調査を理由に、水兵の氏名・性別・年齢だけでなく、投棄した理由・動機さえ公表を拒んでいます。またしても地位協定の壁が市民の不安を煽ります。

 米海軍は佐世保市と海上自衛隊、九州防衛局に事件を報告しましたが、マスコミが暴露するまで、何処も公表しませんでした。佐世保市は米軍の主張を鵜呑みにし「国、米軍とも積極的に公表しないということだった。市民の安全、財産に影響ない」と判断したというのです。これも大きな問題です。

(2008年11月19日)


佐世保市長 朝長則男 様

米兵銃弾不法投棄事件についての申し入れ

2008年11月10日
原水爆禁止佐世保協議会理事長 山下千秋
佐世保市平和委員会   会長 篠崎義彦

 マスコミ報道によると、米兵が銃弾約3300発を佐世保港内不法に投棄されたとのことです。昨年は佐世保市内で銃乱射によって人命が奪われるという、全国的にも異例な事件が発生しました。

 3300発もの大量の銃弾がいとも簡単に基地の外に持ち出されていたことに、「何とずさんな管理なのか」と市民の間で、大きな驚きと不安が広がっています。

 事件に関しては、「訓練用の銃弾」とか、「基地従業員が発見した」とか、事件の概要は断片的にしか伝わっていません。

 まず第一に、事件の徹底した真相を明らかにすることです。米軍まかせでなく、銃刀法違反、火薬取締法違反などの容疑があるわけですから、日本の警察権も発動させることです。そのうえでの再発防止対策が取られるべきです。
 弾薬、銃弾の管理体制はどうなっているのでしょうか、公務外でこんなにも簡単に銃弾が基地から持ち出せるのでしょうか。いつどれだけ持ち出されてもわからないという状況は、大変恐ろしい状況だといわなくてはなりません。市民の安全・安心がほど遠い現実を直視しなくてはなりません。

 第二に、事件に対する政府、佐世保市の態度の問題です。これほどの危険にさらされているのに、事件発生と真相解明、再発防止対策をなぜ早急に手を打たなかったのか、残念です。「米軍、国は積極的に公表しないということだった」という佐世保市の説明は承服できません。報道のスクープがなかったら、今回の事件は闇に葬りさられたのです。他にはこんな事例はなかったのか、疑いを持たれてもしかたがありません。

 米原潜ヒューストン放射能漏れ事件からの教訓として、「連絡・情報伝達」がありました。市民の安全・安心にかかわるからです。市民の安全・安心を常に第一に考えるなら、「隠せるものなら隠しとおそう」という態度を根本から改めるべきです。

要請事項

  1. 今回の事件は、市民の安心・安全を脅かすものであると指摘し、米軍へ厳重に抗議されたい。
  2. 米軍に事件の真相解明を求め、再発防止対策を明らかにするよう要求されたい。
  3. 米軍に 弾薬、銃弾の管理体制がずさんであると指摘し、管理体制の現状の説明並びに改善策を求められたい。
  4. 日本国の銃刀法違反並びに火薬取締法違反の容疑があるとして、日本の警察当局に警察権の発動を要請されたい。