日本のPAC3は何を狙うのか?
空自は迎撃テストに「成功」というが

 航空自衛隊は9月17日、米ニューメキシコ州の米陸軍ホワイトサンズ射場で初めてのPAC3の迎撃テストを実施しました。

 時事通信によれば「射場内に日本から搬送した発射機2基のほか、レーダーと管制装置などを展開。約120キロ離れた地点から米軍が模擬弾を打ち上げ、空自は2分後にPAC3を発射。約30秒後に撃ち落とした」といいます。標的はこれまでの米軍のテスト状況からPAATミサイル(スカッド短距離弾道ミサイルの飛行特性を模して改良したPAC2)とみられます。時事通信の報道では、PAC3の取得は1発8億円。かかった費用はこれ以外に約15億4000万円で、このうち約12億円が米軍に支払われたとしています。

 PAC3は日本ではSM3で撃ち損じたときのためとされています。つまりターゲットは「ノドン」など、射程1300キロ程度の中距離弾道ミサイルで、落下速度は秒速3キロを超えます。しかし今回のテストは飛行距離わずかに120キロで。落下速度もたかがしれています。
 今回のテストについて、朝雲新聞は「目標の探索追尾から迎撃に至るPAC3システムの総合的な機能確認を目的に行われたもの」で、「日本のMDシステムが有効に機能することが証明された」(空幕防衛部長)と言い切っています。

 実は米軍がこれまでに行なったPAC3の発射試験もすべて同じような設定で、米ディフェンス・インフォメーション・センターのホームページを見るかぎり、中距離弾道ミサイルを迎撃した例はありません。つまり、米軍はPAC3をスカッドミサイルなどの短距離ミサイルに有効としてオランダを皮切りに配備を始めたのであって、ノドンなどの最終段階での迎撃に使用する想定ではないということでしょう。
 PAC3は米国は自国には配備せず、代わりに最終段階での対処としてTHAAD(サード)の開発を進めています。ちなみに米軍はPAC3システムは完成したとして、GAOの監査対象からは外しています。

 しかも空自は「高額な経費がかかるため、発射試験を来年度あと一回実施するにとどめ、実射訓練は行わない」(東京新聞)とするなど、とても「日本のMDシステムが有効に機能することが証明された」といえる段階にはありません。

 北朝鮮の「スカッド」は日本にはとても届かないし、「ノドン」は仮に届いたとしてもPAC3では迎撃できない(実績は全くない)。いったい何のためのPAC3なのでしょうか。それは北朝鮮を最大限に利用し、国民の目をそらしながら、自衛隊を米軍と一体化させて運用できるシステムづくり、「国民保護計画」を進めるためのものではないでしょうか?

(2008年9月19日)