貧困と戦争はいつも隣り合わせ
☆9月例会☆「医療・福祉・貧困と格差」

 9月3日、ながさき平和委員会の9月例会が開かれました。テーマは憲法9条と25条との関係を考える。お話は長崎民医連・事務局長の永田勝美さん。

 永田さんはワーキングプアが増えている中で、自衛隊が攻勢的に募集活動を行い、高額給与・資格・保険などをちらつかせて「彼ら」を取り込もうとしていることを紹介しました。米国ではこの事態はもっと深刻で、軍隊のリクルーターは「底辺校」に出向いて募集活動を行っているといいます。公的医療保険制度が崩壊し、人口の4割が無保険である米国。子どもが入隊すればその軍人医療保険で家族も治療できる仕組みになっています。

 ところが日本も「米国並み」になりつつあることを永田さんは指摘します。すでに生活保護世帯が100万世帯を超えました。自殺者は1997年から連続で3万人を超え、うち1万人は経済的理由といいます。97年は消費税率5%、所得減税廃止、医療費自己負担2割となった年です。さらに医師・看護師不足、自主共済つぶし、保険のきく医療・きかない医療の混合・・医療費の個人負担は増える一方です。まさに収入によって命に格差が生じる社会です。

 この根幹には安保条約の経済条項(2条)があります。米財界や商工会議所は日本の予算編成時に対日要求を突きつけ、米国企業が参入できるように日本の経済構造を徐々に変えてきました。保険会社ではアリコ、アフラック、AIGスター生命などがすでに幅を利かせています。

 永田さんは格差社会や究極の貧困は戦争をもたらすことを強調しました。日本の兵士の多くは農村出身で兵士になることが出世の道であり、ナチスは大公共工事を行うことで「気の遠くなるような貧困」を3年間で解消し、熱狂的な支持を得たといいます。
 そして「生存権が確保されなくなると25条の側から9条が崩され、また9条が怪しくなると25条も保障されない」と述べ、「平和の土台」として、日本らしい社会保障と医療づくりを模索しようと訴えました。

 参加者からは「政府はインド洋給油や軍事費には手をつけないで医療費を毎年2200億円も削っていく。社会的弱者になったらこの国は救ってくれない。どこから見てもおかしい。社会を変えなければ」「同じ20代の青年たちは、『年金がもらえないんじゃないか』『長生きしたらヤバイかも』と将来の展望が見えない。それは『働けないのは自己責任』という政府の洗脳だと思う。『そうじゃないんだよ』ということをもっと勉強して伝えていきたい」などと感想が出されました。

(2008年9月4日)