BMD日米実動訓練を実施か?
強まる情報隠ぺい・情報操作


弾道ミサイル実動訓練に参加したと見られる「こんごう」
海自横須賀基地で(08年7月13日)

 北海道洞爺湖サミット終了後の7月11日、上・下層同時の「ミサイル防衛」日米実動訓練が実施されたとみられます。

 「ミサイル防衛」に関する日米共同対処訓練は06年9月から開始され、防衛省は07年7月6日の5回目の訓練実施(実動訓練としては初)を初めて公表しました(読売新聞07年7月10日)。
 それから丸一年たった08年7月10日、統合幕僚長が7月中に2回目の実動訓練を行うことを明らかにしました。同日、産経ニュースは「11日にも日米弾道ミサイル対処訓練」と題して、次のような記事を配信しました。

 北朝鮮方面から弾道ミサイルが発射されたとの想定で、早期警戒衛星が受信したミサイル発射情報を青森県の空自車力分屯基地に配備された米軍のXバンドレーダーや同県三沢の米軍基地に配備された弾道ミサイル処理システムなどで解析する。
 同時に、米軍横田基地内の共同統合作戦調整センター経由で空自航空総隊や防衛省地下の中央指揮所、官邸にも情報が伝達され、首都圏周辺に配備された地対空誘導弾「PAC3」や護衛艦搭載の海上配備型迎撃ミサイル「SM3」の発射までの日米の情報共有やデータ交換を訓練する。
 防衛省幹部は「サミット警戒に派遣した艦艇を一度帰港させて、再び訓練に派遣するよりは燃料を節約できる」と燃料高騰が深刻なことを明らかにした。

 また7月17日付『朝雲』は「上・下層同時のミサイル防衛 初の日米実働訓練」という記事を掲載し、7月中に1日だけの訓練を実施すること、「こんごう」をはじめ、PAC3、米軍横須賀基地のシャイローなどが参加するとしています。

 ところでシャイローは7月3日から7日まで米海軍佐世保基地に寄港し、その後、14日に横須賀基地に帰港したことがわかっています。一方の「こんごう」は13日に横須賀基地にいたことが目撃されています。(写真)また「こんごう」は18日から始まる「博多海防人まつり」で訓練展示(デモンストレーション)を行うために博多港に寄港します。これらのことから産経ニュースの報道のとおり、7月11日に実動訓練が行われたものと考えられます。

 しかし産経その他の後追い記事は全く見受けられません。また10日に記者会見をして7月中に行うと明言をし、しかも17日付『朝雲』でもそのことを追認しておきながら11日に実施していたとなれば、明らかな情報隠し・情報操作です。

 08年7月10日の防衛次官の記者会見の内容は次のとおり。

Q:7月中に日米で弾道ミサイル対処の実動訓練があるみたいなのですが、この時期に行う意味というのはあるのでしょうか。それと、日本側はAWACS、PAC3、イージス艦等々参加すると先程、統合幕僚長の方からあったのですけれども、アメリカ側はどういった部隊が参加するのでしょうか。
A:2番目の質問の「参加する部隊の規模等」については、内容について、どこまで公表し得るかも含めて確認をしてお知らせをしたいと思います。それから、1点目のご質問について言えば、私どもとして逐次いわゆる弾道ミサイル対処能力というものを整備してきているわけでございます。また、逐次能力がついてきているということであります。そういった時期を捉えまして、「今回やろう」ということになったと承知をしております。そのことについて明確な関連性、「この段階になったから、こうやる」とかいうことではありませんが、逐次能力がついてきている中で「訓練も日米共同でやってみよう」ということだろうというふうに思っております。

(2008年7月18日)

【追記】
 やはり実動訓練は7月11日に行われていました。7月29日未明に首都圏で行われたPAC3の移動展開訓練に関する国会議員の問い合せに関連して防衛省側が明らかにしました。しかし現在まで公式には全く報道されていません。

 事前に日時を公表しなかったのはBMDの能力が明らかになるという理由のようですが、シビリアン・コントロールも利かない日米一体化は明確な憲法違反です。訓練実施後の非公表も情報の隠ぺい・意図的な情報操作です。

(2008年8月2日)