佐世保港をカモメ飛ぶ市民の港に


海上から米軍基地を視察する参加者(5月17日)

 5月17日、ながさき平和委員会は5月例会として佐世保基地調査を行いました。福岡県・久留米原水協の佐世保ツアーに合流したもので、地元佐世保を始め、西彼地区からも参加があり、約50名が集まりました。

 午前中は山下千秋さんからPowerPointを駆使したレクチャーを受けました。
 山下さんは佐世保の歴史に触れ、「佐世保大空襲の際、米軍は日本軍施設を全く無傷のまま残した。もう勝利は確実で、戦後に基地として利用する明確な意図があった」と指摘しました。
 また佐世保などの旧軍港市を平和産業港湾都市に転換させるための「旧軍港市転換法」の住民投票(特定地域が対象のため、憲法の規定に基づく)では投票率90%、賛成98%と、佐世保は他の3市に比べてダントツでした。それは佐世保市民の平和に対する思いの現れでした。しかしその願いを打ち砕いたのが朝鮮戦争だったのです。

 山下さんは佐世保の特徴を(1)米世界戦略を支える燃料・弾薬の補給基地、(2)強襲揚陸艦の出撃基地、(3)「ミサイル防衛」などの日米共同基地と指摘し、「米軍再編」=同盟変革を先取りした基地機能強化の実態を報告しました。

 佐世保の状況は厳しいものがありますが、山下さんは、名古屋高裁の自衛隊イラク違憲判決を武器にして、例えば「基地撤去を訴える」など「9条を活かしてたたかう」ことで展望を切り開いていきたいと熱く語りました。

 午後からは瀬川汽船をチャーターして、米軍基地・自衛隊基地にぐるりと囲まれた佐世保港を一周しました。その後、マイクロバスで佐世保自動車道のIC建設現場や、それに伴って移転した将校住宅、民間が建設した米軍専用住宅などを見て回りました。


米海軍庵崎貯油所(日米共同使用)


米海軍横瀬貯油所(県内最大規模)


建設中のLCAC新駐機場(横瀬貯油所制限水域内)


新設の海自崎辺実習場


米海軍前畑弾薬庫のトンネル式弾薬庫(危険度No.1の標識)

【参加者の感想から】

 実際に海上から基地を見るといかに佐世保港が軍港であるかがわかりました。かもめの飛ばない港、漁船の行き交うことのない海。海に浮かぶ不気味な軍艦。「葉港」。美しい名を持つ天然の良港は死の港でした。この港が商業港であったなら佐世保はどれほど活気のある街になったことでしょうか。
 「刑務所は内側に、基地は外側にフェンスが向いている」との説明に日本の国民を排除しようとする米軍の横暴を見る思いがしました。また、前畑弾薬庫の返還の願いを逆手にとり、思いやり予算で機能強化を図る米軍とそれに追随する日本政府に怒りが湧いてきました。弾薬庫をつくるために島を潰して海を埋め立てることなど許されるはずがありません。
 「ここから積まれた燃料や弾薬でどれだけイラクの人々の命が奪われたことか」。山下市議の話に胸が痛みました。
 米軍のための岸壁や道路、住宅。ここに私たちの税金が使われている。いったいここはどこの国でしょうか。平和憲法を持つ日本が、アメリカの世界戦略の拠点となり、イラクやアフガンの人々を傷つけています。日本国憲法と相反する安保条約は廃棄するしかないとあらためて感じた一日でした。


 現地・山下千秋市会議員の案内で港内を巡り、海上から、日米軍事一体化や、先制攻撃の即応体制などの先取りが進んでいる様子が確認できました。そして、この港が、直接イラク戦争と深く関わっていることや、日本の屈辱的な従属関係を再認識させられた視察でした。
桟橋を離れて直ぐに米軍基地に並んで翻る星条旗と日章旗が目に入り、まさに日米軍事一体化の象徴をみた思いです。星条旗の下に、イラク攻撃の戦死者への弔意旗も掲揚されていました。(殺された多数の罪のないイラクの国民がいることを忘れるな!)
 広大な水域を持つ湾内にもかかわらず、視察中、この水域に行き交う船はなく、目にしたのは軍艦と湾を取り囲むように置かれている弾薬庫・貯油庫ばかりでした。長崎港でもイージス艦や護衛艦の停泊は日常的ですが、灰色の艦船とフェンスで囲われた軍事施設、なにもない海岸線ばかりの港内、山下市議のお話にあった「カモメがいない港」は不気味です。
改めて日米軍事同盟への怒りとともに、多くの人にこの現実を伝える取り組みの大切さを感じた1日でした。


 佐世保港が米軍の基地機能として重要な役割を果たしていることはわかっていたが、なぜ全国にたくさんある港の中で佐世保なのかということがはっきりわかった。
 歴史的にも、アジアを見すえた地理的位置にしても佐世保がながく使用されていたと思っていたが、港としてもたいへん素晴らしいということを話していただいてから海上視察をしたので、その大きさを再認識できた。
 特に横浜の2.5倍、神戸の4倍、長崎港の10倍の広さがあるにもかかわらず、その83%が米軍におさえられているという事実はもっと県民に知らせたい。
 港が佐世保市民に開放されたものであれば、長崎のように港のクルージングや港まつりでの花火大会など、いろんなことができるし、米軍の片棒を担いで、人殺しに加担することもなくなるのに…と残念に思った。
 あと、佐世保の赤崎貯油所+庵崎貯油所+横瀬貯油所の3つ合わせて、米軍の世界第2位の補給能力があるということは驚いた。一つ一つの貯油所の大きさだけでなく、佐世保全体でみる新たな視点が必要と感じた。

(2008年5月18日)