イージス艦こんごうが帰国
「ミサイル防衛」の「実戦配備」に

 1月4日、イージス護衛艦「こんごう」が海自佐世保基地に帰港し、「ミサイル防衛」の「実戦配備」に就きました。昨年の12月18日にハワイ沖で行われたテストでは、標的弾道ミサイルを捕捉・追尾し、迎撃ミサイル(SM−3)を発射して命中させています。
 「こんごう」に搭載されているSM−3の数は「防衛能力を明かせない」として非公表ですが、1隻あたりの購入数は9発とされています。(1発約20億円)

 「こんごう」の平田峰男艦長は海自幹部らに訓練の成功を報告し、「新たに手にした盾に磨きをかけ、万が一の事態に備える」と述べました。
 たしかにSM−3だけをみれば「防衛兵器」かもしれません。しかしイージス艦そのものは強大な攻撃能力を有する「矛」です。しかも「米軍再編」のもと、陸海空の自衛隊司令部が(在日)米軍の各司令部と一体化が進められて、攻撃能力も増強の一途です。そんな中での「ミサイル防衛」は米軍の先制攻撃能力を補完するものでしかありません。
 かつて「核兵器を時代遅れのものとする」ために「戦略防衛構想(SDI)」をよびかけたレーガン元米大統領が「もし攻撃システムと組み合わされると、それらは侵略的政策を助長するものとみなされるおそれがあり、・・・」と言及したように、大幅軍縮を伴わない中での「ミサイル防衛」は、「研ぎ澄まされた矛を最大限に活用するための盾」にほかなりません。

 「こんごう」の「迎撃」テストの結果を受けて、政府は安全保障会議と閣議を開き、「弾道ミサイル等に関する破壊措置に関する緊急対処要領」の一部を変更し、SM−3による破壊措置を組み入れました。


弾道ミサイル等に関する破壊措置に関する緊急対処要領
(2007年12月24日閣議決定)

 自衛隊法(昭和29年法律第165号。以下「法」という。)第82条の2第3項及び自衛隊法施行令(昭和29年政令第179号。以下「令」という。)第104条の2の規定に基づき、同項に規定する弾道ミサイル等(法第82条の2第1項に規定するものをいう。以下同じ。)に対する破壊措置に関する緊急対処要領を次のように定める。
 なお、今後、その能力の向上等により、必要に応じ変更するものとする。

 1 防衛大臣が法第82条の2第3項の規定による命令を発する場合及びこの場合において同項に規定する緊急の場合に該当することの認定に関し必要な事項(令第104条の2第1号関係)
 (1)防衛大臣が法第82条の2第3項の規定による命令を発する場合
 防衛大臣が法第82条の2第3項の規定による命令を発する場合は、次のいずれかに該当する場合とする。
 ア 外国において弾道ミサイルが発射された疑いがあり、又は発射されるおそれがあると認める場合であって、その時点では、発射の目的、その能力等が明らかでないため、当該弾道ミサイルが我が国に飛来するおそれがあるとまでは認められないとき。
 イ 外国において打ち上げられた人工衛星打上げ用ロケットその他の落下により人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる物体(航空機を除く。)が事故その他により落下するおそれがあると認める場合であって、その時点では、事故の場所、態様等が明らかでないため当該物体が我が国に飛来するおそれがあるとまでは認められないとき。
 (2)緊急の場合に該当することの認定に関し必要な事項
 緊急の場合に該当することの認定は、我が国の弾道ミサイル防衛システムにより弾道ミサイル等が我が国に向けて飛来することを確認することにより行うものとする。

 2 法第82条の2第3項の規定による措置の対象とする弾道ミサイル等の範囲及びその破壊方法(令第104条の2第2号関係)
(1)弾道ミサイル等の範囲
 次に掲げるもののいずれかに該当するものであって、1(2)の定めるところにより我が国に向けて飛来することが確認されたものとする。
 ア 弾道ミサイル
 イ 人工衛星打上げ用ロケット
 ウ 人工衛星
 エ その他その落下により人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる物体であって、航空機以外のもの
(2)弾道ミサイル等の破壊方法
 法第93条の2の規定に基づき、スタンダード・ミサイルSM3又はペトリオット・ミサイルPAC−3を発射し、我が国領域又は我が国周辺の公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。以下同じ。)の上空において破壊するものとする。

 3 法82条の2第3項の規定による措置を実施する自衛隊の部隊の行動の範囲(令第104条の2第3号関係)
 防衛大臣から法第82条の2第3項の規定による措置をとるべき旨を命ぜられた自衛隊の部隊(以下「実施部隊」という。)の行動の範囲は、我が国領域並びに我が国周辺の公海及びその上空とする。
 ただし、第1高射群の行動の範囲については、上記の範囲のうち、スタンダード・ミサイルSM3が搭載されている護衛艦又はペトリオット・ミサイルPAC3が配備されている高射部隊であって、防衛大臣が法第82条の2第3項の規定による命令で定めるものとする。

 4 法第82条の2第3項の規定による措置を実施する自衛隊の部隊の指揮に関する事項(令第104条の2第4号関係)
 実施部隊は、第1高射群、航空警戒管制部隊その他事態に応じ防衛大臣が必要と認める部隊とし、航空総隊司令官の指揮下に置かれるものとする。
 実施部隊の運用に係る防衛大臣の指揮は、統合幕僚長を通じて行い、これに関する防衛大臣の命令は、統合幕僚長が執行するものとする。

 5 関係行政機関との協力に関する事項(令第104条の2第5号関係)
 防衛省は、1(2)に定めるところにより弾道ミサイル等が我が国に向けて飛来することを確認した場合には、関係行政機関(内閣官房、警察庁、消防庁、外務省、水産庁、国土交通省、経済産業省、海上保安庁その他事態に応じ防衛大臣が必要と認める行政機関をいう。以下同じ。)に対し、直ちにその旨並びに当該弾道ミサイル等の落下が予測される地域及び時刻を伝達するものとする。
 また、防衛省は、実施部隊が当該弾道ミサイル等を破壊する措置をとった場合には、関係行政機関に対し、直ちにその破壊の状況を伝達するものとする。
 このほか、防衛省は、関係行政機関の求めに応じ所要の協力を行うものとする。

 6 法第82条の2第3項の規定による命令が発せられている場合において同条第1項に規定する弾道ミサイル等が我が国に飛来するおそれが認められたときにとるべき措置に関する事項(令第104条の2第6号関係)
 防衛大臣は、法第82条の2第3項の規定による命令が発せられている場合において同条第1項に規定する弾道ミサイル等が我が国に飛来するおそれが認められたときは、同項の規定により、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に対し弾道ミサイル等を破壊する措置をとるべき旨を命ずるとともに、同条第3項の規定による命令を解除するものとする。

(2008年1月5日)