渇水の中、米軍佐世保基地は…


崎辺駐機場で「戦術淡水化システム」用の機具をトラックに積み込む兵士(米海軍HP)

 2年半ぶりの渇水に見舞われた佐世保市では11月23日から市内のほぼ全域で水道管の止水栓を絞って流量を半分に抑える減圧給水が実施されています。

米軍と自衛隊は対象外

 しかし市水道局による給水制限は米海軍佐世保基地や海自佐世保基地・陸自相浦駐屯地は大口の需要者でありながら立入制限や技術上の問題で対象外となっていて、佐世保市は「自主的な節水」を求めるに留まっていました。

 しかし米海軍佐世保基地の1日の使用料は家族住宅を含めて約2400トンで、市全体の3%を占め、陸海の自衛隊も1日約1400トンを使用しています。強制的に給水制限させる市民からすれば「自主的な節水」を求めるだけでは「不公平」という声が上がっていました。
 そこで佐世保市は米海軍と陸海自衛隊に対して節水計画書の提出を求めました。

節水率から見える無駄遣い

 米海軍の計画書では、11月5日以降、施設(飲食店を除く)水道の水圧半減、洗車場の閉鎖、消火栓テストの延期などを実施し、前年同期に比べ34%の節水効果を上げたといいます。
 そして12月17日からはレストランでも50%の減圧給水を実施し、食器を紙皿や紙コップに切り替え、運動施設のシャワー利用時間も短縮するといいます。
 「34%の節水」というのは驚異的なことです。それは余裕があったからできたことでしょう。逆に言えば、日常的にいかに無駄に使っていたかということ。なにせ家族住宅を含めて基地内の光熱水料は日米地位協定に違反して、国民の税金で肩代わりしているのですから事実上使い放題です。05年度の水道料金は佐世保基地だけで2億500万円にのぼっています。主な内訳は佐世保海軍施設が約8千万円、立神港区が約5千万円、針尾住宅地区が約6千万円。この金額から推定するとそれぞれで使用する水量は1日あたり約940トン、580トン、700トンになります。

海水淡水化装置を導入

 それでも不公平という批判をかわすためか、米海軍は海水淡水化装置を導入しました。強襲揚陸艦エセックスは秋期演習から帰国し、沖縄で第31海兵遠征部隊を降ろした際に、6台の「戦術淡水化システム」を積み込みました。12月11日、佐世保に寄港したエセックスは搭載していた3隻のLCACで6台の淡水化装置を崎辺地区の駐機場に陸揚げしました。

 このシステムは本来は軍事作戦で使用するもので1時間あたり約5・7トンの淡水をつくり出す能力を持っているといいます。うち5台は米兵や家族ら約3千人が暮らす針尾地区の住宅に運び込まれ、同地区全体の使用量を1日570トンに抑えたうえで、全量をこの装置で賄う計画です。1台あたり月額1万ドル近くかかる運用経費は米軍の負担といいます。
(その後、計10台にすることが報道された:針尾住宅地区に8台、メインベースに2台)

「思いやり予算」の全廃を

 日本政府は向こう3年間の「思いやり予算」をほぼ現状維持とすることを米政府と合意しました。当初は5年間で日本人従業員の労務費を300億円、光熱水料を250億円を削減する案を打診したようですが、結局08年度は総額2173億円を据え置き、09・10年度は光熱水料(253億円)を各3億8千万円減額するだけです。
 地位協定違反の「思いやり予算」を全廃すれば否が応でも米軍は節水を行うでしょう。それは在日米軍縮小にも連結します。「思いやり予算」はドイツが支出する米軍駐留経費より高額なのですから。