米が秘密保護協定促進に圧力
MD改造用部品の供給を一時停止
「ミサイル防衛対応型」への特別改造工事の進むイージス護衛艦「こんごう」。
迎撃ミサイル発射口でクレーン作業を行なっていた(8月9日)。
外見はほとんど変わっていないが、写真左端のレーダーが新規に付けられている。
8月10日、米国が日本に共有させる「秘密軍事情報」の保護措置を米国基準と同等にする「ジーソミア(日米軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」が締結され、国会承認を得ることなく同日、発効しました。これによって日米の軍事一体化がこれまで以上に拡大・強化され、国内では自衛隊の海外派兵を中心とする海外で戦争する態勢づくりが促進されるでしょう。また「情報保全」の名の下にマスメディアと国民の知る権利がいっそう制限される危険性がでてきます。
その一方、日本の軍需産業にとっては秘密保護基準が日米同一基準となることで、これまでは不可能だった米イージス艦やミサイル等の日本国内での修理等、新たな利益拡大を追求する道が開けたことになります。
かつて久間章生自民党総務会長(当時)は05年11月の日米安保戦略会議で講演し、ジーソミアを締結することで米イージス艦やミサイルを日本国内で修理することが可能になると述べました。その利点として(1)米軍が修理のために帰国する必要がなくなり駐留強化になる、(2)日本の技術水準を維持できる、(3)国内軍需企業の利益確保、をあげていました。
あわせて、米国はこの協定の早期締結を促すために、長崎港でミサイル防衛対応型への改造工事中の「イージス護衛艦こんごう」の部品を説明なしに一時供給停止にしていたことが報道されました。
この間、海自隊員によるイージス艦情報の持ち出し事件をはじめ、防衛省内での情報漏えい事件が続発していました。事態を深刻に受け止めた米側がジーソミアの早期締結に向けた圧力をかけたという米軍、防衛省関係者の声が紹介されています。
いま三菱長崎造船所では12月の迎撃テストに向けて、迎撃ミサイルSM3を搭載・発射するための特別改造工事が進められていますが、機密性の高い部品の取り付けは、米国の企業が行っているといいます。今年7月に入って、米側から弾道ミサイル迎撃に不可欠なソフトウエアや複数の重要部品、さらに取扱説明書などの提供が滞るようになった。部品提供は、8月6日に再開され、ジーソミアは10日に締結となりました。読売新聞は、情報保全に関する「改善がない場合、『こんごう』以降のイージス艦へのSM3搭載は困難になっていただろう」という米国防総省に近い関係筋の話を載せています。
◇日米軍事情報包括保護協定の骨子(毎日新聞)