核兵器廃絶平和行進を米軍が監視
警察は取り締まらず

 7月31日、佐世保で「核兵器廃絶」を訴える平和行進団を米海軍佐世保基地の関係者(日本人)が、無断でカメラ撮影するという事件が起りました。この間、自衛隊が市民運動を監視していたという事実が暴露されましたが、米軍も平然として行なっていることが明らかとなりました。米軍の態度は、核兵器廃絶を願う被爆県民の運動そのものを敵視するだけでなく、基本的人権をじゅうりんする蛮行です。

 平和行進はこの時期に恒例として行っているもので、この日、JR佐世保駅前を出発し、10時30分頃に佐世保基地ゲート前を通過した際、ゲート近くの植え込みから行進団を望遠レンズで写真を撮っている人物がありました。行進団のメンバーが、「あなたは誰か?平和運動の監視行動はやめなさい」と抗議を繰り返しましたが、その人物は、これに何の反応も示さず、執拗に撮影を続けました。
 行進団のうち抗議のメンバーとして4人が残り、ゲートを警備している佐世保署員と次のようなやりとりを繰り返しました。

抗議メンバー:「あれはだれか。警察か、米軍兵士か、軍属か、基地従業員か?身元を明らかにしてくれ。肖像権の侵害行為だ、やめさせなさい」。
佐世保署員:「警察官ではない。ゲートを自由に出入りしている基地関係の人物だ。日本人のようだ。基地警備活動として撮影しているのだ」。
抗議メンバー:「誰であろうと、警備活動であろうと、我々の肖像権の侵害、人権侵害が現に行われている。市民の人権と安全を守るべき警察として、規制をすべきだ」。
佐世保署員:「あなたたちの抗議を、米軍へ伝える」「佐世保署の警備課を通じて基地へ連絡した。基地の担当者が来て対応するとのことだ」。

 しかし、1時間半分にわたって抗議と要求を繰り返しましたがとうとう米軍担当者は現れませんでした。この間、撮影していた人物は、植え込みから立ち退き、一仕事終えたという感じで基地建物のフェンス近くにたたずんでいました。その後、ゲートから基地内へと向かっていきました。

 抗議メンバーはマスコミ2社に連絡し、記者が取材に来ましたが、撮影していた人物が立ち去った後でした。抗議メンバーは現場を引揚げ、平和行進の終点へ行き、まもなく到着した行進団に、事件の経緯を報告し、当局へ改めて申し入れを行うことにしました。

 佐世保市原水協と佐世保市平和委の代表2人が、午後2時過ぎ、米海軍基地に赴き、基地建物のフェンス入り口で、担当官へ抗議文を手渡しました。担当官は「後で回答を送る」と答えました。
 米海軍佐世保基地司令官への要請事項:

  1. 平和行進無断撮影の真相を明らかにせよ。
  2. 写真撮影写真を被害者にただちに返還し、その肖像権を侵害したことに対して謝罪せよ。

 その後、佐世保警察署を訪れて警備課の担当者へ面会を求めましたが、責任者が会議に出席中という理由で面会できず、「会議が終った後で連絡する」との回答でした。その後、連絡はありましたが、「面会は出来ない」と断ってきました。
 佐世保警察署長への要請事項

  1. 無断撮影を行っている現場にたちあっていながら、その犯罪行為を取り締まらないのはなぜなのか。
  2. その際「警備上の写真撮影だ」と警察は何度も答えたが、米軍による「警備上の写真撮影」は人権侵害であっても取り締まらなくてもよいのか。 

 その後、8月3日付長崎新聞は、佐世保基地広報部が取材に対して「基地関係者が撮影したことを認めた。だが撮影目的や撮影者の特定、過去の撮影の有無については警備上のことなので詳細は話せないとしている」と報道しました。しかし、当事者への回答はまだ寄せられていません。