平和のなかまを広げ、非核平和の世界をめざそう
ながさき平和委員会10周年記念総会開かれる

 6月20日、ながさき平和委員会の10周年記念総会が開かれ、「こんにちの米核戦略を読み解く」と題して、国際問題研究者の新原昭治さんが記念講演を行ないました。

 総会議事では、1年間の活動を振り返りながら今後は従来の活動とあわせ、自治体への申し入れ活動や非核長崎港をめざした取り組み、会員が集まりやすい事務所づくり、会員減を増勢に転じる積極的なはたらきかけなどにも重点を置くことが強調されました。
 参加者からは「例会・学習会等のお知らせの仕方に工夫をしてほしい」「平和の行動に駆けつける人が多くなってほしい」「被爆・戦争体験はぜひライブラリー化してほしい」「戦争遺品などの収集・保管も検討できないか」「長崎港の軍事化の状況を把握しよう」などの意見が出されました。
 また参加者にはこの10年の活動を年ごとに写真と年表でまとめた『10年のあゆみ』(A4判16頁)が配られました。


「こんにちの米核戦略を読み解く」

アメリカの二重基準と核不拡散条約
 アメリカだけは世界で何をやっても構わないという発想がブッシュ政権の根底にあり、核兵器政策をも動かしている。アメリカの核兵器専門家たちは「オレの言うとおりやれ、オレのしているようにはやるな」という二重基準と指摘している。
 戦後の国際法の大きな根本基準は国の大小を問わず、主権平等だという考え方だ。しかし核兵器にはこれが当てはまらない。核不拡散条約(NPT)がそもそも核兵器を5つの国だけに持ってもよく、あとはだめという不平等条約だからだ。ノーベル平和賞を受賞したロートブラット博士はこれを解決する道は、すべての国が核兵器を持ってもいい条約をつくるか、すべての国が核兵器を持ってはならないという条約をつくるしか論理的にはないと指摘した。もちろん後者でなければいけないと。

有識者たちによる核兵器廃絶のよびかけ
 06年6月、スウェーデン政府が後ろ盾になって世界中の核兵器を含む大量破壊兵器問題の専門家たちを集めて今の危険な状況をどうするかを研究させたブリクス委員会の報告が出された。それは(1)現存する大量破壊兵器の危険を減らす、(2)拡散を防ぐ、(3)すべての大量破壊兵器をきっぱりと禁止する、そのための交渉を緊急に行うことを提言した。
 このブリクス報告は世界の事情を知る有識者、政府関係者たちに大きな影響を与え、07年の1月初めにキッシンジャーら4人の米元高官が、どちらかというと財界に偏った新聞に「核兵器のない世界」への共同アピールを発表した。

「核兵器よ永遠なれ」が基本姿勢
 日本の非核三原則になぞらえるとアメリカの核兵器政策は「核兵器四原則」=「つくる、持つ、持ち込む、使う」ということができる。
 アメリカは12年までに核弾頭数を5047発に半減させる計画だ(それでも長崎に投下された原爆14万発分に相当する破壊力)。しかし削減 した弾頭は廃棄の義務づけがなく、また現役再配備する自由も保証されている。しかもその古くなってきた核弾頭は核実験をせずに、30年までにすべて新型核弾頭に置き換える「信頼できる交代用核弾頭計画」をスタートさせた。
 あわせて古くなった核兵器生産施設もすべて新しくする「コンプレックス2030計画」を実行に移そうとしている。アメリカは見通しうる将来まで核兵器を手放さない「核兵器よ永遠なれ」と言わんばかりのやりかたをとっている。
核兵器/通常兵器の境目が低く
 いまアメリカは全地球的規模での打撃(グローバル・ストライク)戦略をとっている。これはひじょうに短い時間のうちにアメリカ本国と出先の基地から世界中のどこに対してでも攻撃できるような態勢をとるということだ。
 例えばトライデント型戦略原潜のミサイルの一部を通常弾頭に切り替える。1隻には24基の発射管があるが、新しいグローバル・ストライク計画で、2発だけは通常弾頭のミサイルにして核ミサイルは22発にすると公式発表した。
 これに対してアメリカの軍部の中からも、ロシアや中国その他からも批判が起きた。「もし通常弾頭のミサイルを発射したとアメリカが言っても、他の国、とくに攻撃対象の中国やロシアは核ミサイルが飛んできたと思い、報復する準備にはいる。ひじょうに危険だ」と。

「ミサイル防衛」の真の目的
 ミサイル防衛は、日本国民や日本全体を守るのではなく、アメリカの先制攻撃の戦力に傷がつかないように、敵の攻撃力を無効(実質的にゼロ)にする戦略だ。米ソ対決時代にレーガン大統領もミサイル防衛(SDI)を打ちだしたが、彼は核兵器廃絶と結びつけて考えていた。しかしブッシュ政権は核兵器は持ちつづけながらアメリカの軍事力にとってだけ好都合なミサイル防衛をやろうとしている。

「拡大抑止」の名で核使用態勢を押し付け
 最近、米軍再編に関連して、日米同盟に初めて「拡大抑止」を適用することが発表された。
 相手にテロルを押し付ける、物凄い恐怖を押し付ける軍事力を使うというのが、「抑止」のもともとの意味。つまり「テロ」と同じ語源からきた言葉。国家が核兵器を使うぞと言って脅しをかけることなのに、「抑止」という日本語訳が悪いため、防衛的なものと誤解されている。
 核抑止戦略というのは、核兵器を本気で使うということを相手に見せながら脅しをかける戦略のこと。アメリカが軍事同盟を結んでいるイギリスのために核兵器を使う脅しもするぞとソ連に聞こえるように言うのが「拡大抑止」。
 「拡大抑止」の日米同盟への適用とは、核/通常戦力を先制的にでも日米同盟のために使うぞという宣言だ。

「非核日本宣言」運動で大きな国民的「抵抗」を
 いま「非核日本宣言」運動が提唱されている。これは非核三原則を完全に遵守し、日本政府がその意思をはっきりと内外に打ち出すのと同時に、速やかな核兵器廃絶の決意を国連加盟国すべてに伝えることを求める運動だ。
 凶弾によって命を奪われた故伊藤一長・長崎市長が、過去12年間、8月9日に発表してきた「長崎平和宣言」には毎年必ず「長崎を最後の被爆地に」「非核三原則を厳守せよ」という訴えがある。
 「非核日本宣言」の運動を広げて世論化することが伊藤一長市長の遺志を継ぐ道だと痛感している。それは日米同盟の再編強化、核使用戦略を日米同盟に結びつけ、自衛隊をどんどん海外派兵させる危険な動きに歯止めをかけ、抵抗の国民世論をつくることにも必ずや大きな役割を果たすことになると確信している。