「こんごう」へのSM3搭載が前倒し


07年中にSM3の搭載が確定したイージス護衛艦こんごう。
背後の2隻は「弾道ミサイル対応型」の2隻の新型イージス護衛艦。

 今年7月の北朝鮮の弾道ミサイル発射、10月の核実験を受け、日本の弾道ミサイル防衛構想が加速され、イージス護衛艦「こんごう」の改修工事が3ヶ月早められることになりました。

 もともとイージス艦は戦闘機から空母を守るために開発されたもので、大気圏外を飛行する弾道ミサイルの迎撃など想定していません。米国で開発途上の「ミサイル防衛」計画ではイージス艦に弾道ミサイルを追尾し、迎撃ミサイル(SM3)を発射できるようイージスシステムを新型のものと入れ替える改修工事を行なうことになっています。

 日本の運用構想では海自が保有する4隻のイージス護衛艦を07年度から各1隻ずつ、「弾道ミサイル対応型」に改修することになっています。それにともなって各年度350億円程度の予算措置が講じられており、あわせてSM3を購入(1発約16億円)することになっています。

 当初計画では08年3月までに1隻目のイージス護衛艦「こんごう」の改修を終え、9発のSM3を搭載、1発をハワイ沖での日米共同の迎撃実験に使うとしていました。政府・防衛庁は北朝鮮情勢を踏まえできるだけ早い前倒し調達を米軍に要求し、3カ月早められました。SM3は機密が絡むため、米軍を通じた完全な受注生産となっており、企業側の技術者や工場ラインが限られているため、3カ月前倒しが限度だったということです。残り3隻についてはいまのところ計画通りとなっています。

 久間章生防衛庁長官は参院予算委員会で「国民の不安を取り除く必要がある」として前倒しを要求したと述べていますが、SM3で北朝鮮の弾道ミサイルを迎撃できる保証は全くありません。いたずらに不安を煽るのではなく、全会一致の安保理決議に基づいた、軍事力によらない外交で解決することこそが「国民の不安を取り除く」唯一の方法です。

 一方、米海軍は、07年6月、サンディエゴ海軍基地に配備されている最新鋭のイージス駆逐艦「マクキャンベル」を、横須賀基地に配備することを決めました。これによって横須賀基地に配備されている第7艦隊の艦船は、艦隊旗艦のブルーリッジと空母キティーホークを除き9隻すべてが弾道ミサイル探査追尾能力をもったイージス艦に替わることになります。しかもそのうち3隻がSM3搭載となるなど、「ミサイル防衛」の拠点としての強化が進められています。

 もともと「ミサイル防衛」は国連憲章が否定する先制攻撃を推し進めるために、敵国の攻撃能力を無力化しようとするものです。かつて敵国ミサイルを科学技術で無力化しようという戦略防衛構想(SDI)を提唱した米レーガン大統領はその演説の中で「もし攻撃システムと組み合わされると、それらは侵略的政策を助長するものとみなされるおそれがある」と述べていました。まさに合衆国の進めるその侵略的政策に日本が加担しようとしています。