核攻撃想定の「保護計画」素案提示
長崎市がパブリックコメントを募集

 11月2日、「長崎市国民保護協議会」の第2回会議が開かれ、核攻撃も想定した「国民保護計画」の素案(全110ページ)が示されました。長崎市はこの素案に対して12月1日まで広く意見を募集(パブリックコメント)すると発表しました。

 素案の冒頭には「保護計画」にはそぐわない、いわば取ってつけたかのような「核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けて」という序論5ページが述べられています。

 序論では原子爆弾の被害と惨状を述べて「核兵器による攻撃から市民を守ることができない」と明言しています。その前提にもかかわらず「NBC攻撃による災害への対処等(98ページ)」の項を設け、「国の方針(「核爆発が起きたら身を隠す」「せん光を見ない」などとしている)を踏まえた対応」を行い、特に「初動的な応急措置」をとることを定めています。長崎市は国に対して「核攻撃による被害想定や対応策」を示すよう要求していますが、国はいまだに提示することができていません。二重に矛盾しています。

 同じ序論で、国民保護計画が必要な理由として「世界には、今なお自国の安全を核兵器の威力に頼ろうとする国が存在」「世界に約3万発もの核兵器が存在している」「国際テロ組織等の活動による新たな脅威」をあげ、「万一の事態に備える」としています。

 「原因」のないところに突然テロが起こるわけではありません。テロを生み出す温床を根絶していくことで、犯罪であるテロは解消できるものです。「万一の事態」として日本へのテロがあるとすれば、どのような場合なのか。国も県も市もそのような想定は提示していません。それではいたずらに国民の不安をあおり、国家がナショナリズムを煽動するだけです。まさに戦前への逆戻りです。

 合衆国は「自国の安全を核兵器の威力に頼ろうとする国」であり、3万発の核兵器の半数を保有し、新たな核兵器の製造を計画しています。その合衆国と軍事同盟を結ぶ日本も、合衆国の核の傘に頼っていると言わざるを得ません。唯一の被爆国でありながら合衆国に核兵器の削減要求や未臨界核実験への抗議すらしていない。

 長崎市が「長崎を最後の被爆地に」するために序論の「核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けて」の精神を活かそうというなら「国民保護計画」は必要ありません。日本政府へはたらきかけて、核兵器廃絶条約の締結、武力によらない平和の構築のためのイニシアティブをとらせることしかありません。