憲法改悪のための投票法はいらない!

 9月16日、憲法改悪反対長崎県連絡会は「国民投票法案」に関する緊急学習会を開きました。活水女子大学の渡邊弘さんが『憲法が危ない!国民投票法案の意図するもの』と題して講演を行ないました。
 渡邊さんは「投票法案」の狙いを、「一見、『民主主義的』な装いをしながら民主主義とは正反対のやりかたで憲法改悪を実現させるもの」と指摘し、「よくない改憲案を通すための『投票法』は必要ない。そのことを広く訴えよう」と呼びかけました。(以下、要旨)

 私たちの目標は「よい国民投票法」をつくらせることではなく、いまの憲法改悪を止めること。「よくない改憲を通すための投票法はいらない」ということを広く訴えかけることが大事。
 自民党新憲法草案の特徴を一言で言うならば、「市民が権力者を縛るのが憲法という近代立憲主義的考え方から、逆に市民が憲法を守るという考え方に180度変えるもの」だ。

 いま提案されている投票法案には見逃せないいくつかの問題がある。本来、「投票」には、投票すれば自分たちの意思が反映されるという基本的条件が存在するが、法案はそれが満たされていない。「過半数の賛成」が必要だが母数は有権者数か有効投票数かさえ不明だ。そもそも投票が何%で成立するのかその要件さえない。

 最大の問題点は民主主義を否定していることであり、そこに憲法改悪案の本質が象徴的に現れている。民主主義の前提は「自由に意見を言うことができ、よく聞いて考え、討論ができる」ことだ。投票法案では公務員・教育者の運動を禁止し、市民的自由を全面的に制限し、教育・学問の自由をうばっている。教育者が憲法に関する授業で憲法のはなしができなくなる。より充実した憲法に変えるのであれば憲法の趣旨に即した投票法であるべきだ。

 憲法と「民主主義」の関係をよく理解しておく必要がある。民主主義は単なる多数決ではなく、考えるプロセスが重要だ。日々の生活の中に民主主義がある。その反面、国民多数が誤った方向へ判断を下す場合もある。その時の道標が憲法であり、簡単に変えるべきものではない。「多数の意志」で自衛隊を海外に送ったとしても、それは間違いと言ってくれるのが憲法なのだ。

 改憲派は、改憲提案をすると選挙に負けるから半世紀にわたり提起しなかった。そこで議会制民主主義と選挙権を徹底的に形骸化させ、国民の意見が反映できないシステムをつくってきた。それが完成したいま、「投票法」を持ち出してきた。一見、『民主主義的』な装いをしながら民主主義とは正反対のやりかたで憲法改悪を実現させるものにほかならない。改憲派は1回の「改正」で全てを変えようとは思っていない。改正規定を緩やかにすることで後でいくらでも変えられるからだ。教育基本法「改定案」にもそのしかけが組み込まれている。

 憲法改悪を急ぐ背景のひとつに大企業の要請がある。海外に生産拠点を移した企業はとくにアジアの政治的に不安定な国家で低賃金労働を確保している。これまで革命やクーデターを避けるためにODAなどでカバーしてきた。しかしこれからは投資したものを守るために自衛隊の「海外派遣」が求められている。
 小選挙区制の導入の背景にあるのは湾岸戦争後のPKO法の頓挫だった。「戦争に行く」ことをめぐって自民党の中に党本部にさからう議員が多くなった。当本部の意向に沿う議員だけにするために導入されたのだ。それは「郵政」選挙で如実になった。対立候補には「刺客」が送られた。