海自砕氷艦「しらせ」が長崎寄港

 9月15日、長崎港常盤埠頭に「南極観測船しらせ」が接岸しました。寄港は1994年以来4回目となります。乗員の総合訓練のため8月29日に横須賀を出港し、釧路西港、伏木富山港を経由しての寄港です。意外と知られていませんが、「しらせ」は海上自衛隊の艦船で、艦種は砕氷艦、所属は横須賀地方隊です。ましゅう型補給艦が竣工するまでは海自最大の自衛艦(基準排水量11,00トン)でした。乗員170人はすべて海上自衛官。大型ヘリを2機搭載し、観測隊員は60人居住できます。

 15日・16日に一般公開されましたが、テロ対策のために手荷物などの検査が行われました(台風接近のため17日・18日は中止、「しらせ」も退避し、18日に再接岸)。

 「しらせ」は南極地域観測協力を主目的に、文部省の予算で建造されました。
 南極観測船は、毎年度、分厚い氷を砕いて南極の昭和基地に観測隊員や物資を輸送し、オゾンホールの研究など日本の約50年間の南極観測を支えてきました。1982年に就役した3代目の「しらせ」は、老朽化のため07年度には退役となります。

 そこで文部科学省は後継船の建造計画をたて、07年度までの完成を目指して総額520億円(船体建造費に約400億円、搭載ヘリコプター2機で約120億円)の予算要求を行いました。
 ところが04年度財務省原案では、「520億円は巨額」「修繕しながら使える」として、要求した55億円(設計費と船体建造費の一部)は盛り込まれませんでした。その一方で内閣官房予算である情報収集衛星(軍事偵察衛星)関連経費632億円、自衛隊のヘリ護衛艦1057億円の建造が認められました。04年度は「ミサイル防衛」システム関連経費1068億円が初めて計上された年度でもあります。

 その後の復活折衝でようやく設計費4億円と搭載ヘリ製造費26億円の計上が決まりました。しかし建造費は05年度に見送られたため、完成予定は09年5月となり、観測船運航に1年間の空白期間がうまれることになりました。
 まさに軍事優先は科学の発展を蝕む!

 「後継艦」についた予算:
   04年度  30億円
   05年度  35億円
   06年度  91億円
   07年度 110億円(概算要求)