新型イージス護衛艦「あしがら」進水
「ミサイル防衛」体制へ大きくシフト

 8月30日、三菱重工長崎造船所・第2船台で「ミサイル防衛」対応型の新型イージス護衛艦の命名進水式があり、「あしがら」と命名されました。今後艤装工事が行われ、08年3月に佐世保基地に配備されます。海上自衛隊のイージス護衛艦は6隻目、長崎造船所での建造は昨年進水した「あたご」に次いで5隻目となります。
 おりしも防衛庁が07年度予算の概算要求でミサイル防衛関連予算を前年度比約5割増の2190億円とし、米海軍が横須賀基地に弾道ミサイル迎撃能力(SM−3)を備えたイージス巡洋艦シャイローを配備する、さらには自民党の国防部会防衛政策検討小委員会が、国連決議や国際機関の要請がなくても、政府独自の判断で自衛隊を派遣し、武器使用の基準を緩和した「海外派兵恒久法案」をまとめた最中での進水です。

 「あしがら」の建造総予算は1389億円。イージスシステムは米海軍省から509億円で購入。船体を建造している第2船台は、過去の侵略戦争中に超大型戦艦「武蔵」建造を極秘裏に建造した場所。今回、マスコミ報道でもそのことを指摘するテレビ局がありました。

 「ミサイル防衛」は、相手国の弾道ミサイル攻撃を無力化することで、報復の心配なく、先制攻撃を可能にすることを狙ったシステムです。実戦で十分機能することは無理と見られますが、新たな軍備競争を煽り、不安定な地域を更に危険に陥れるものです。

 「ミサイル防衛」はまた、軍需産業には莫大な利益を与えるものです。SM−3は現在1発15億円程度と言われており、日本はすでに36発を購入することにしています。一方、空自基地から発射する迎撃ミサイル、パトリオット3は2010年までに124発を配備予定ですが、最初の32発をロッキード・マーチン社から購入後は、三菱重工によるライセンス生産に切り替えることになっています。価格は1発5億円程度。

 現有4隻のイージス護衛艦は07年度から順次、弾道ミサイル対応型への改修工事−−弾道ミサイルを探査・補足・迎撃するイージスシステムと迎撃ミサイルSM−3の搭載−−が始まります。これに対して「あたご」「あしがら」には現段階ではSM3搭載の計画はありません。しかしイージスシステムはすでに弾道ミサイル対応型となっており、SM−3搭載だけで迎撃能力を備えるだけに、近いうちに計画変更となる可能性があります。

 「あしがら」は旧海軍時代の妙高型重巡洋艦の4番艦「足柄」と同じ名前です。(3番艦「羽黒」は三菱長崎造船所で建造)侵略戦争で活躍した昔の艦艇の名前を使うのは、海上自衛隊が過去の侵略戦争を反省せず、旧海軍の歴史と伝統を引き継いでいるからでしょう。


第2ドックへ曳航された「あしがら」。右は艤装工事中の「あたご」