佐世保市平和委員会などが
リンカーン寄港反対の申し入れ

 5月22日、外務省から佐世保市に米海軍原子力空母エイブラハム・リンカーンが25日に佐世保港に入港するとの通報がありました。随伴艦のうちイージスミサイル駆逐艦シャウプは26日に静岡県清水港に、イージスミサイル駆逐艦ラッセルは24日に高知県宿毛港に入港します。当初、高知新港への打診がありましたが、予定が入っていため、代替港を探していた駐大阪・神戸米国総領事館の担当者から元木益樹自民党県議に連絡があり、元木氏は宿毛港を提案しました。元木氏は高知県「非核港湾条例」を廃案に追い込んだ中心人物でした。(高知新聞の報道による)

 佐世保原水協、佐世保平和委員会は23日、佐世保市長に対し、原子力空母リンカーン佐世保寄港反対の申し入れを行いました。当局からは野口日朗助役、原口優秀基地対策室長、廣山芳宣環境部長らが対応しました。

 佐世保原水協理事長の山下千秋さんは、今回の空母リンカーン佐世保寄港に対し、第一には被爆県がアメリカの無法な侵略戦争の核出撃基地にされること。第二には、空母 6隻体制と長期戦争宣言のもとで、佐世保が空母の準母港とされる危険性があること。第三に、臨戦態勢のままでの入港であり、核持ち込みの疑惑がきわめて高く、非核三原則の空洞化につながること。第四に、原子力空母の安全性は全く保証されておらず、住民の安全性が極度に脅かされること、など四つの問題意識を持っていることをまず述べました。そのうえで、(1)安全性の根拠を政府に求めること、(2)核搭載していないことの明示を求めることの二点について佐世保市長に対し、具体的行動を行うよう要請しました。

 野口助役は、 24日に光武顕市長が政府に対し、(1)原子力空母運行に関し細心の注意を払うこと、(2)寄港中に米兵による事件・事故が発生しないように綱紀粛正を図ること、(3)放射能測定に支障がないように、などの申し入れを行うことを明らかにするにとどまりました。


佐世保市長 光武顕 様

原子力空母リンカーン佐世保寄港反対についての申し入れ

06年5月23日
原水爆禁止佐世保協議会理事長 山下千秋
佐世保市平和委員会会長    篠崎義彦

 米海軍原子力空母リンカーンが、25日佐世保に入港するとのことです。前回同空母入港の際は(02年8月)、イラク戦争に直結するのではと危惧しましたが、そのとおりに、佐世保入港半年後、イラク戦争が始まり、同空母はたのイラク戦争に参戦し、多数の戦争犠牲者がつくりだされました。佐世保は、その無法な戦争の足場にされてしまいました。

 今度は、国防報告見直し(QDR)で米国が、長期戦争宣言を行なった直後の入港であり、米軍と自衛隊の軍事一体化をおしすすめる在日米軍再編のもとでの佐世保寄港です。いよいよ佐世保が深く米世界戦略に組み込まれ、原子力空母の準母港化への第一歩となる危険性をはらんだものです。私たちは、無法な米国の侵略戦争の最前線基地として佐世保が使用されることに断固として反対します。

 第二に、原子力艦船の安全性については、なんの保証もありません。軍事機密ゆえに、情報提供はなされていませんが、ニミッツ級原子力空母は、核兵器に使用される高濃縮ウランを燃料としており、熱出力120万キロワット、発電炉に換算すると約40万キロワットと推定され、これは関西電力の福井美浜原発一号炉に相当する大規模なものです。いわば、陸の原発よりも危険なものが数日間とはいえ佐世保市民生活のど真ん中に持ち込まれることになるのです。04年佐世保にも寄港した原子力空母ステニスは座礁事故のために冷却水循環ポンプが故障し原子炉が緊急停止するという事故寸前の事態を起こしているなど多くの事故を引き起こしています。
 ところが、核事故は一切なかったと米政府はごまかしています。驚きなのは日本政府の態度です。ウソとごまかしの米政府の言い分をそのまま、「米海軍の原子力軍艦に起因して放射能の異常値が確認されたことは、これまでにない」(政府答弁書、平成18年5月18日)との立場にたっています。神奈川県と横須賀市は、原子力空母の安全性を証明するという米国政府の「ファクトシート」に対し、「疑問がある」といって、質問状を出し、引続き、その安全性の証明を要求しています。
 佐世保市長もまた、市民の安全を第一義的に守る立場から、原子力空母の佐世保寄港に反対するべきです。

 第三に、核兵器持込みの疑惑はますます増大するばかりです。「核の存在を否定も肯定もしない米政府の核政策を不問にすることは、事実上核兵器持込みを認めることになります。非核三原則の空洞化そのものです。被爆県の自治体として「核搭載していないことを明示できない艦船の佐世保寄港は容認できない艦船の佐世保寄港は容認できない」ときっぱりと拒否すべきです。

要請事項

  1. 原子力空母の安全性の確認を政府に要求せよ。
  2. 核持ち込みのないことを証明するように日米両政府に求めよ。同時に非核三原則の遵守というなら、非核三原則の法制化を要求せよ。