佐世保の海上自衛隊の経済効果 佐世保市の親和経済文化研究所は「佐世保市における海上自衛隊の経済効果」についての調査結果を研究所のホームページに掲載しています。それによると04年度の経済波及効果は684億円にのぼると試算しています。また同じ地方総監部のある呉市、舞鶴市との比較分析を行なっています。 同研究所はこれまでにも「自衛隊が地域にもたらす経済効果」について報告をしています。今年5月の「日本海海戦百周年記念大会IN佐世保」の経済波及効果を3億8500万円と試算しました(滞在した乗組員らの飲食代や土産代、交通費など消費総額は1億5千万円。艦内への食料調達や艦船修理、大会関連イベントの会場費、PR費など公費支出分は9500万円なので効果倍率は1.57となる)。 佐世保市の自衛隊員は5100人で、家族を含めると13000人。人口の5%を占めます。佐世保地方総監部の佐世保市内における04年度決算額は人件費416億円(消費支出298億円、非消費支出118億円)と試算しています。これは県庁所在地の消費転換率から算出したもの。また物件費は282億円(艦船修理219億円、糧食10億円、光熱水料5億円など)。一方、地元企業との契約状況については全契約先のデータが開示されていないため、金額上位20社のデータから分析しています。佐世保地方総監部の物件費決算額は339億円で、このうち上位20社で121億円、うち地元企業はとは4社28億円と契約率が非常に低くなっています。市内での物件費決算額は282億円なので、市外の企業に大きく依存していることを指摘しています。 経済波及効果については長崎県の「産業連関表」(様々な産業が1年間に生産した財・サービスが、産業、家計、移輸出等にどのように配分されたかの一覧表)を用いて試算しています。その結果、生産誘発額は684億2600万円で、需要増加額(人件費の消費支出298億円+物件費282億円)に対する比はわずか1.18となります(呉1.42,舞鶴1.43)。また就業者誘発数は6168人(呉5232人,舞鶴2140人)。 佐世保市での経済効果倍率が低いのは造船・造船修理部門の自給率が低いという産業構造に問題があるとして、三菱長崎造船所で行なっているような「高度な技術を要求される艦船修理に対応できる造船業のレベルアップ」「艦艇建造能力の獲得」を提言しています。 たしかにそれだけ見れば大きな経済効果が生み出されているのかもしれません。しかし発展を阻害している「損失効果」を見落としています。佐世保港の発展の障害となっている海自倉島地区の「損失」と民間活用した場合の経済効果、米軍基地による「損失」と撤去して再開発を行なったときの経済効果を試算し、どちらが市民のためになるか材料を提供するのが地元のシンクタンクの役割ではないでしょうか?
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