長崎県が「国民保護計画」素案

 9月26日、長崎県は「国民保護法」で都道府県に作成が義務づけられている「県国民保護計画」の素案を公表しました。10月21日まで募集する意見を基に修正を加え、06年3月までに計画を決定することになっています。

 素案は長崎県庁のホームページからダウンロードできます。159頁に及ぶ長大なものですが、全く具体性に乏しいものです。防衛庁も可能性は低くなってきているという「着上陸侵攻」を筆頭に、ゲリラ・特殊部隊に攻撃、弾道ミサイル攻撃、航空攻撃を武力攻撃事態としてあげています。

 これは日本国憲法前文の「平和を愛する諸国民の構成と信義に信頼して、われわれの安全と生存を保持しようと決意した」ことを葬り去ろうというものです。その一方で自民党の発表した改憲草案では第9条にあった、「戦争しない」「戦力は持たない」「交戦権の否認」いずれの言葉もはずし、逆に「自衛軍」という軍隊を持つことを明記しました。まさに、日本国憲法の前提を根幹から崩して自衛隊を軍隊として認め、海外で戦争できるようにするというものです。

 いくら「万が一の備え」と言っても、その一方で「軍隊を持つ」、中国を脅威対象国として位置づけた「防衛警備計画」をつくる、過去の侵略戦争を自衛のためだったと偽る「つくる会」教科書の容認など、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こる」ことを呼び込んでいるとも思える動きが顕著となっています。憲法「改正」でイラク戦争のように、米軍の世界中で起こす戦闘行為に自衛隊が参加するようになるでしょう。そのことでまさに日本が攻撃を受ける可能性が高くなるでしょう。そのための有事法制、そして「国民保護」計画なのではないでしょうか。

 とはいえ、計画素案はまったく実効性のないものです。一番危ないのは「米軍基地周辺の住民」かもしれませんが、中身がありません。要は各自治体まかせなのか、あるいは実際に起こるわけがないから適当でいいんだというようにも読み取れます。中でも「NBC攻撃の場合」ではとても被爆県とは思えない次のような記述がされています。

 「知事は、NBC攻撃の場合の避難においては、避難誘導する者に防護服を着用させる等安全を図るための措置を講ずることや風下地方を避けて避難を行なうことなどに留意して避難の指示を行なうものとする」(103〜104頁)

 戦争は国家の努力によって未然に防ぐことができます。周辺諸国の信頼を得、どこまで国民の立場に立った交渉が行なえるかにかかっています。いまこそ日本国家の姿勢が問われています。

 その一方、自然災害を防ぐには限界があります。自然災害から国民を守るために日常からの啓蒙活動や避難訓練を行なうことこそ国と自治体に求められているのではないでしょうか? ブッシュ大統領の支持率が最低に落ち込んだのはハリケーン被害への対処が決定的な要因でした。泥沼化したイラクでの軍事行動と自然の猛威に対する対処、どちらが国民にとって必要だったのか。

 日本でも同じことが問われています。ありもしない武力攻撃事態への対処するための「国民保護」計画か、自然災害から国民を守るための国民保護計画か。