日露戦争を賛美する行事に
佐世保市が100万円補助

日露戦争は、日本の存亡をかけた自衛の戦いであった。
日本海海戦において我が連合艦隊がロシアのバルチック艦隊に大勝利し、
戦争は終局に向かい講和が成立した。

 これは「日本海海戦100周年ホームページ」の表紙に掲げられた文章です。また「記念事業の趣旨」の項でも「日本海海戦の圧倒的勝利は、わが国の自存自衛を全うし、国際社会にその地位を高め、今日に至る繁栄の基礎を築いた」と美化しています。
 日露戦争はいうまでもなく朝鮮や中国東北部の支配をめぐって日本とロシアが争った帝国主義戦争でした。これを機に日本は韓国を指揮・統制下に置き、韓国併合を企てていったのです。「日本海海戦100周年記念」は戦前の侵略戦争と植民地政策をねじ曲げるものであり、憲法9条の抹消をはかろうとする歴史の逆流と根をひとつにするものです。

 佐世保市は「日本海海戦100周年記念大会イン佐世保」の行事に100万円を補助していました。
 佐世保原水協と佐世保平和委員会は、「日本海海戦が行われた日露戦争が韓国の植民地支配につながったことを考えれば、地方自治体の関与は適切でない」などと批判し、公費支出を反省して使途を調査するよう佐世保市に申し入れしました。対応した野口日朗助役は、行事は護衛艦隊歓迎と日本海海戦100周年記念の二つの実行委員会からなり、補助は歓迎イベントのために支出したことを強調しました。その上で「4000人もの乗員が訪れる経済波及効果を考えれば当然」と延べました。申し入れをした山下千秋・原水協理事長は「市民の目には、行事は一体のものと受け止められている。使途を調査し、返還を求めるべきだ」と主張しました。

 海上自衛隊の護衛艦隊集合訓練は通常4月中旬に行なわれてきました。今回5月開催となったのは明らかに「日本海海戦100周年」にあわせたものであり、集合訓練そのものが記念行事なのです。横須賀でも記念行事として護衛艦等の一般公開・体験航海が行われます。佐世保市がいくら「歓迎」と「記念」が別の実行委員会だとしても両者は一体のものです。


2005年5月25日

佐世保市長 光武 顕 様

「日本海海戦100周年記念大会イン佐世保」への公費支出に反省を

原水爆禁止佐世保協議会 理事長 山下千秋
佐世保市平和委員会   会長  篠崎義彦

 「日本海海戦100周年記念大会イン佐世保」と銘うって、日本海海戦100周年記念祝賀行事と護衛艦隊歓迎行事が、商工会議所、海自OB会などを中心にした実行委員会で、大々的に展開されています。ここに佐世保市から100万円の公費補助が行われ、光武顕佐世保市長も20日の市民ふれあいフエスタ行事で、実行委員長、海自保井海将らとともにあいさつを行うなど深く関与しています。

 日本国憲法第9条は、太平洋戦争のみならず、戦前の全ての侵略戦争を総括し、二度と戦争しないということ、それにとどまらず、陸・海・空の戦力そのものも保持しないという、世界に誇るべき平和原則をうちたて、今日に至っています。

 日本海海戦は日露戦争そのものです。この戦争の結果、韓国併合(1910年)が行われ、韓国の植民地支配が戦後まで続き、多大な苦難を韓国国民に強いたのです。また、この日露戦争が戦前の軍国主義を確立する重要な画期をなす出来事でもありました。戦前の軍国主義、侵略戦争と植民地支配を美化し、正当化する動きに、地方公共団体が関与することは適切ではありません。

 戦前日本軍国主義がおこなった一局面一局面での戦闘勝利を祝賀する動きがあれば、今後とも補助金など出したりされるのでしょうか。

 靖国参拝問題、中学生の歴史教科書問題など、今日、過去の侵略戦争を美化し、正当化する動きが顕著になり、このことがアジア諸国民との重大な国際問題にまで発展しています。

 佐世保市は韓国をはじめ、アジア諸国からの観光客誘致政策も打ち出しています。一方で植民地支配を賛美し、韓国国民の苦しみに背を向けて、どうして友好・連帯の事業が進展するでしょうか。憲法99条は、全ての公務員に対して誰よりも憲法遵守義務を課しています。いまこそ憲法九条をしっかり守って、アジア近隣諸国民との友好と連帯の関係を築きあげていくことが求められています。歴史的課題に逆行する動きに自治体が奨励すべきではありません。今回の自治体の態度の誤りを率直に反省され、公費支出の不当性を直ちに是正されるように強く求めるものです。

 なお、自治体当局は、護衛艦隊歓迎実行委員会に補助したのであって、100周年記念に出したのではないと釈明しています。企画から見ても、組織図から見ても、主催団体から見ても、20日の市民ふれあいフエスタの実態から見ても、市民の目には、二つの行事が一体のものとして取り組まれていると受けとめられたことは明白です。

 市長はあくまでもそれは誤解だというのであれば、日本海海戦100周年を祝賀する立場ではなかったことを公式な見解を表明すべきです。

要請事項

  1. 日本海海戦100周年記念祝賀に佐世保市が関与し、賛美する態度をとったことに対して反省の態度表明を行われること。
  2. 誤解だというのであれば、明確に日本海海戦100周年記念祝賀に佐世保市は組するものではないことを公式に表明されること。
  3. 支出された公費については、返還措置を講じられること。