米海軍が事故原潜の写真公開
実は乗員の約半数が負傷!


座礁事故を起こした原潜サンフランシスコの船体(ニューヨーク・タイムズHPから)

  1月28日付ニューヨーク・タイムズは米海軍が座礁事故を起こした原潜サンフランシスコの写真を公表したと報道し、その写真を掲載しました。めちゃめちゃになった艦首はその事故のすさまじさを物語っています。ガラスファイバーでできたソナードームは粉々になり、グアムに帰港した時はぶら下がっていたといいます。写真では残ったソナー装置には機密のために防水シートがかぶせられています。このソナー部につづく船体の下方がトマホーク巡航ミサイルや魚雷、機雷を含む武器庫となっています。
(米原潜内部の映像はこのサイトに

 「サンフランシスコ」は就役後24年目に入っていますが、寿命を延ばすために2億ドル(約210億円)をかけて分解修理されています。その間、02年に原子炉は核燃料を交換しています。現在、ドライドック内で損傷の程度を調査していますが、修理を施すかどうかは決定されておらず、コストの見積もりもされていないといいます。

 衝突の根本原因は1989年に米海軍に採用された潜水艦用の海図にありました。衝突現場付近3マイル(約5km)以内には障害物となるようなものは一切、記されていなかったのです。ところがそこには海山があり、原潜サンフランシスコは30ノット(時速55km)で衝突したのです。1999年の衛星写真のデータからその海山の存在は確認されていたのですが、海図の更新はなされませんでした。

 米海軍は当初、乗員137人のうち、死亡1人、負傷者23人と発表していました。しかし太平洋潜水艦隊司令や乗組員の電子メールを入手したニューヨーク・タイムズは、実は23人というのは重傷者で、軽傷を含めると負傷者は乗員の半数近い60人であることを暴露しました。死亡した技術者は衝突の際、6mも飛ばされて金属ポンプに頭を打ち付けて意識不明となったことも明らかにされました(1月12日付ニューヨーク・タイムズ)。

 また衝突によって裂けた艦首から海水が入り、ソナードームの他、船体を沈めたり浮かせたりする4つのバラストタンク(安定器)が浸水したといいます。そのため乗組員はタンクに圧縮空気を送り続けて水位が上昇しないようにしてかろうじてグアムまでたどり着きました。そのまま沈没してしまう危険性もあったわけです。

 艦首がめちゃめちゃになり、かろうじて沈没を免れたものの、一人が死亡、重軽傷者60人(うち23人が重傷)という重大事故で、はたして米海軍が主張するように原子炉の損傷がなかったのか疑問です。「核攻撃能力の認証」を与えられ、核トマホークを搭載している可能性が高いとみられるだけに、その真相は闇に葬られてしまうのでしょうか。

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