自衛隊派兵前提の「慎重」意見書
長崎市議会が可決

 12月17日、長崎市議会はイラク派兵を前提とした「自衛隊のイラク派遣に関する意見書」を賛成多数で可決しました。この意見書は、そもそもイラク戦争に大義はあったのか、イラクの混乱の元凶は誰なのか、自衛隊派兵と憲法第9条のことなどまったく触れていません。イラクへの自衛隊を派兵することを前提として「慎重かつ十分な検討」を求めているに過ぎません。
 残念ながら、反対したのは日本共産党3名と市民の会1名の4名だけでした。全国各地で中止を求める意見書の採択が続いている中、被爆地長崎の議会として汚点を残すものです。
 以下、中田剛議員(日本共産党)の反対討論と、可決された意見書を紹介します。


2003年12月17日

意見書 反対討論

中田 剛

 自衛隊のイラク派遣に関する意見書については、反対の立場で意見を申し上げます。

 イラクの状況は、米英軍当局自身が「イラク全土が戦争状態」と認めざるを得ないほど、深刻化の一途をたどっています。こうした深刻な泥沼化を招いた根本原因は、米英軍がおこなったイラク戦争が国際法を無視した無法な侵略戦争であったこと、その後も米英主導での不法な軍事占領支配がつづいていること、このことがイラク国民の怒りと憎しみをよびおこし、暴力とテロの土壌をひろげる現状となっているのであります。
 一日も早く米英軍主導の占領支配をやめさせ、国連中心の枠組みによる人道復興支援にきりかえること、その枠組みのもとでイラク国民にすみやかに主権を返還し、米英軍を撤退させること、この方向こそイラク問題の道理ある解決の道筋であります。
 ところが、小泉内閣は、こうした道理ある解決のための努力は一切行なわず、自衛隊派兵に固執しているのであります。
 第一に、米英占領軍を支援するために自衛隊を派兵することは、イラクにたいする無法な侵略戦争と不法な占領支配に、軍事力を持って加担することであり、そこには何の大義もありません。
 第二に、イラクへの自衛隊派兵が、憲法九条を真正面からふみにじる暴挙となることは、いまや誰の目にも明らかであります。このままイラク派兵を強行するなら、日本の軍隊が戦後はじめて他国の領土で他国民を殺害するという、恐ろしい道に日本を引き込むことになります。戦後はじめて自衛艦から戦死者を出すという事態に道を開くことになるのであります。
 本意見書は、自衛隊のイラク派兵を前提として派遣を慎重にと求める内容でありますが、被爆地ナガサキの市議会は、自衛隊のイラク派兵中止を求めるべきであります。

 以上の立場から、本意見書に同意できないことを申し上げます。


自衛隊のイラク派遣に関する意見書

 3月20日に始まった米英軍によるイラク攻撃によって、イラクのフセイン政権は崩壊に追い込まれました。4月9日に首都バクダッドが陥落、同月14日にはイラク軍の最後の拠点であった北部のティクリットが制圧され、5月1日にはブッシュ大統領が戦闘終結宣言をしました。しかし、その後もイラク治安はいっこうに改善せず、イラク国民の反米感情は高まっており、いまだに米英等派遣軍に対するゲリラ攻撃が続くなど、実質的な戦争状態が続いています。
 日本政府は、イラク人道復興支援特別措置法を制定し、自衛隊をイラクに派遣しようとしていますが、イラクへの自衛隊の派遣が、従来の国連維持活動(PKO)や災害援助活動の枠組みを超え、自衛隊が外国領土で戦闘行為に巻き込まれる危険性が高いと言わざるを得ません。
 よって、被爆都市・長崎市議会は、自衛隊のイラク派遣にあたっては、慎重かつ十分な検討がなされるよう強く要望します。
 以上、地方自治法第99状の規定により意見書を提出します。

 平成15年12月17日

長崎市議会