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 TRY ME !

 2
ドアに背をつけた自分に寄りかかる、柔らかい重み。首に回された腕。そして唇に触れるしっとりとした温もり。
キスされていると認識した数登は、とっさにきゅっと目を瞑った。
知らず、身体がぶるりと震える。これまで女性に縁の無かった数登は、キスの仕方など知るわけも無く、荒れ狂う鼓動を感じながら必死で息を詰めていた。
しばらく触れ合っているだけだった更紗の唇が、僅かに離れる。同じように呼吸を止めていたらしい彼女の吐息を感じた数登は、瞼を上げて大きく息を吐いた。
見れば、潤んだ更紗の瞳がすぐ間近にあった。目尻まで赤く染めた彼女は酷く扇情的で、数登は興奮から視界がぶれるのを感じた。
……更紗と、キスをしてしまった。
どちらからとか、そんな事はどうでもいい。ただ彼女とキスをしたという事実が重要だった。
幼馴染という関係からの決別と、更紗の決意を宣言されたような気がした数登は、緊張から乾いて張り付いた喉を潤す為に唾を飲み込み、口を開いた。
「……本気、か?」
今更、冗談では済まないと判っていても、聞かずにはいられない。
更紗はそっと目を伏せると、また伸び上がって数登の唇を舐めた。
「うん。カズくんが、いい」
首元に擦り寄って呟く更紗に、理性が音を立てて崩れていく。数登は彼女の背中に腕を回し、抱きかかえるようにして数歩前に移動すると、ベッドへと倒れ込んだ。
安物のパイプベッドが派手に軋む。
ふいに浮かび上がる既視感。
子供の頃、ベッドをトランポリン代わりにして遊んでいた時に、ふざけて彼女を押し倒した事があったのを思い出した。あの時は倒した方も、倒された方も、その衝撃と弾みに驚いて面白がっただけだった。何も知らず、自分たちの性別が違う事すら気付いていなかった。
こんな風に、更紗を見下ろす時が来るなんて、思ってもいなかったのに……。
見慣れたベッドカバーの上に横たわる更紗と、その上に馬乗りになった自分を比べ、数登は震える。戸惑いが無いと言えば嘘になるが、止める気は、もうどこにも無かった。
倒れたはずみで肌蹴た更紗の上着に手を掛ける。ボタンを外すごとに指先が震え、動悸が酷くなる気がした。シャツの前を大きく広げて、インナーをたくし上げた数登は、下から覗いたウエストのラインと、可愛らしい下着に息を呑んだ。
顔を赤く染め、羞恥からか顔を背けていた更紗が、インナーを掴んだままだった数登の手に自分の掌を重ね、おずおずと進言した。
「あ、あの……カズくん、電気消して……」
「何で?」
「だって、明るいのは恥ずかしいし……」
そういうものだろうか。女心に疎い数登にはよく判らない。明るいところで更紗を見られないのは少し惜しい気がしたが、素直に従った。
昔ながらの紐を引くタイプの明かりを、二度引っ張る。常夜灯の放つ淡いオレンジの光だけになったところで、数登は手を止めた。
「これは、つけといてもいいか? 全部消すと、ちょっと無理な気がする」
初心者の数登には、真っ暗な中でこの先、続けられるとは思えない。
自分でも情けないと思いつつ提案すると、オレンジに染まった更紗が、優しく微笑んで頷いた。
「ね、カズくん。私たち、初めて同士だし、色々教え合ったらいいと思うの」
「教え合うって、何を?」
お互いに教えられるほど慣れていない状態で、何ができるのだろう。
不思議そうな顔の数登が見下ろすと、更紗は恥ずかしそうに肩を竦めて目を逸らした。
「……私は男の人の事知らないし、カズくんは女の人を知らない。でも、自分の身体の事は知ってるんだよ」
「あ……」
「だから、ね。お互いに教え合うの……その……気持ちいいところ、とか……」
薄明かりの中でも、更紗の耳が火照っているのが判る。
押しかけて迫ったのは更紗の方だから、当たり前と言えば当たり前なのだろうが、精一杯歩み寄ろうとしてくれている事に愛おしさを感じた数登は、寝転がったまま彼女を思い切り抱き締めた。
「ん……カズくん、どうしたの?」
突然、強く抱き締められ驚いた更紗が小さく呻く。
数登は腕を緩める事無く微笑んで、キスをした。
「なぁ、今だけでいいから、その呼び方止めてくれないか?」
「えっ。どうして?」
「どうしても」
記憶にある彼女とは全く違ってしまった更紗に、以前と同じ名で呼ばれるのは少なからず抵抗があった。幼馴染の象徴とも言える名前で呼ばれる度に、禁忌に触れているような痛みを覚える。
唐突な提案に一瞬、不思議そうな顔をした更紗は、頷いたものの眉尻を下げて数登を見上げた。
「いいけど、何て呼べばいいの?」
「更紗が呼びやすいのでいい。……ああ、でも、名前そのままが良いかな」
「……数登?」
「うん」
「なんか、恥ずかしい……」
羞恥のせいか、少し虚ろな瞳を逸らした更紗は、ほうっと溜息をついた。
特に他意も無く、他の人間から呼ばれ慣れているというだけで名前を指定したのだが、更紗が口にすると何故か色めいて聞こえる。数登は背中を這い上がる興奮を治める為に何度か深呼吸をした。
「嫌だったら、言えよ。黙ってると判らないから」
「うん」
嬉しそうに微笑む更紗にくらくらする。気遣うつもりで言ったものの、嫌だと言われてすぐに止められるほど自重できるか、正直不安だった。
一枚一枚、彼女の身に着けているものを剥ぎ取っていく。少しずつ見えてくる白い肌が酷く艶かしい。全てを取り去る頃には、緊張と興奮ですっかり息が上がってしまっていた。
自分のジーンズも脱ぎ捨て、シャツと下着になった数登は、腕の中の彼女をじっと見つめる。常夜灯があるとはいえ薄暗い室内で、何も纏っていない彼女はうっすらと発光して見えた。
恥ずかしさに耐え切れないらしい更紗は、僅かに身をよじる。
「……あ、あんまり、見ないで」
「見なかったら、できないだろ」
「でも……そんなにじっと見られると恥ずかしいよ。私、胸とか小さいし……」
数登は内心、首をひねった。
確かに巨乳では無いが、まあまあ大きいと思う。それに、実際見た目以上に小さいのだとしても、もともと胸が大きければ大きいほど良いという嗜好は無いし、比較対象も無いので、さほど気にならなかった。
数登は無言のまま、胸を隠すために置かれた手を掴んで退けた。驚いて小さく悲鳴を上げた更紗が、元に戻せないように上から手首を押さえつける。
あらわになった膨らみが、緊張で小刻みに震えていた。
「十分あるって。小さくなんか無い」
「あ……あ……。見たら、だめぇ……」
無理に腕を開かれた事がショックだったのか、更紗は今にも泣きそうな表情で顔を背けた。薄闇の中でも首筋まで赤く染まっているのが判る。
自分から言い出して関係を迫ったはずの更紗が、余裕の無いほど緊張し、怯えていた。そんな彼女を見た数登は、急に頭の中心が冷え、意識が冷静になっていくのを感じた。
ふっと脳裏に浮かぶ更紗の笑顔……。
進学に合わせて引越すまで、二歳下の幼馴染を可愛がって、よく世話をしていた。小さい頃は手を引いて一緒に出掛け、学生になってからは勉強を見てやったりもした。いつだって、そう。信頼してついてくる彼女を導くのは自分の役目だったはずだ。
手首を押さえつけていた手をそうっと外し、更紗の頬を撫でる。優しく、何度も。
「大丈夫。綺麗だ。俺は更紗の胸、好きだぞ」
「……かず……と」
頬を撫でていたのと同じ調子で、胸に手を這わせた。
息を呑んだ彼女の身体が大きくしなる。
「触り心地も最高。ふわふわで、凄い気持ちいい……」
表面はすべすべとして張りがあるのに、少し力を入れただけで指が簡単に沈む。自分には無い柔らかさに、数登は少し感動した。
「はぁ、あ……んんっ、あ……」
鼻にかかった甘だるい声を吐息と一緒に出しながら、更紗はびくっと身体を震わせる。
「痛くないか? どこが良いか教えてくれ」
自分とは違う、柔らかく華奢な更紗の身体をどう扱っていいものか悩む。ただ触れるにしても、力の加減が判らない。無理をして傷つけてしまうのが怖かった。
更紗は絶え間なく漏れ出る声を何とか抑え、一度、こくんと喉を鳴らすと静かに首を振った。
「痛くない、よ。気持ちい……。でも、一番は、胸の先の……」
「ああ……」
全体的に淡く染まっている胸の先端。真紅に色付いて硬く尖っている実を、数登は無造作につまんだ。
「ひゃっ!!」
一際大きく身体を震わせた更紗が、きつく目をつぶり唇を噛む。
これまでとは違う反応に、数登は目を見張った。
「え……そんなに、いいのか?」
問い掛けたものの、小さく震える更紗は身を硬くするばかりで答えない。強くしすぎたのかも知れないと思った数登は、赤ん坊がするように胸の先に吸い付いた。
ふわりと立ち上る石鹸の香り。柔らかい部分とは対照的な、芯のある感触。乳飲み子の頃の記憶なのか、安心感と興奮が混ざりあった妙な気持ちになった。
……男がみんなマザコンだって言うのは、あながち間違いじゃないのかも知れない。
舌先で口に含んだものを転がしながら見上げると、眉間に皺を寄せ真っ赤な顔をした更紗がシーツを固く握り締めていた。
苦しそうに喘ぐ彼女の吐息が次第に荒くなってくる。
「あっ、は……ああっ! か、数登……!」
興奮に呑まれた更紗の熱が伝わったかのように、下腹部に鈍い痺れを感じた。
彼女も同じ状態なのか、そわそわと腰を揺らし内股を擦り合わせている。
「そこ、触って欲しい?」
口を離した数登は、もう片方の膨らみを指で弄びながら、更紗の耳元に囁いた。
胸への刺激で辛そうに息をつく彼女は、返事もままならないようで、ただぶるぶると首を振っている。
その様子を、完全な拒否というよりは、恥ずかしがっているだけだろうと数登は決め付けた。その証拠に更紗の腰は揺れ続けているし、刺激が欲しくてたまらないと言わんばかりに足をくねらせている。
数登は少し身をかがめ、肩肘をついて体重を支えると、おもむろに彼女の下腹部に手を伸ばした。ウエストの辺りから段々と下へ手を滑らせていく。やがて到達した茂みを掻き分け、ぴったりと閉じられた足の付け根に中指を押し込んだ。
「ああっ、や、やだぁっ!!」
身をよじって逃れようとする更紗には構わず指を動かすと、そこは既にしっとりと潤っている。絡みついた液体のおかげでスムーズに動くようになった中指を行き来させた数登は、彼女が濡れているという事実に酷く興奮している自分に気付いた。
「はあ……更紗、濡れてる。ちゃんと気持ち良いんだな」
「っ!」
快感の証を言い当てられた更紗は、ぴくっと肩を揺らす。
気を良くした数登が何度か指を抜き差しすると、かすかな水音が立った。動かす度に、くちくちと音がする。次第に大きくなっていく水音に煽られた数登は夢中で指を前後させた。
と、いきなり首に更紗の腕がまきつく。触れ合った首筋に、彼女の熱い吐息を感じた。
「更紗……?」
「あ、数登……いい、の。それ、気持ちいい……」
「こう、か?」
また何度か指を動かす。未だにぴったりと閉じられているが、掌まで濡らすほど潤った付け根は少し動かしただけでも卑猥な音を立てた。
触れた指に合わせて、更紗が仰け反る。ぎゅっとつぶった瞼に涙が浮いた。
「はっ、あ、あ、いい……よぅ……んんっ、あぁ」
少し荒っぽく、指を押し付けるように擦り上げる。うわ言のように嬌声を上げる更紗は、恥ずかしさよりも快感が勝ったのか、軽く膝を立て自ら腰を動かし、指の動きを助け始めた。
羞恥心の薄れた彼女の足が少しずつ開いていく。数登は手指の動きを止めないまま肘を割り込ませると、開いた膝の間に素早く身体を入れた。
結果的に大きく開かれた付け根に、掌全体を押し付ける。押し込むように少し力を入れて擦ると、更紗の太ももがぶるぶる震えた。
「ああっ、あん、あ、かずっ……数登、だめ、だめぇっ」
何がだめなのかは判らないが、気持ちがいい事には変わりなさそうだし、何より官能的な更紗の姿に魅入られている数登には止める気など無かった。
耳に届く荒い呼吸が、どちらのものかすら定かでない。休む間も与えずに動かし続けている掌は、速くなる吐息に追い立てられるように激しくなっていた。
「あっ、い、いやぁ! は、くぅ、あ、ああぁ……っ!」
首に回された腕に力いっぱい締め付けられ、苦しいと感じた次の瞬間、更紗は身体を痙攣させながら、か細い叫び声を上げた。
驚いた数登が確認するより早く腕をほどいた彼女は、涙で濡れた顔もそのままに脱力し、シーツに横たわっていた。

長い髪をシーツに広げ、苦しそうな表情を浮かべた更紗が、荒い呼吸を繰り返している。
唐突に訪れた反応に、一瞬、病気か何かの発作かと慄いたものの、数登は自身の絶頂を思い返して、彼女が同じ状態なのだろうと思った。
指の腹で更紗の頬をつつく。
「……更紗、大丈夫か? いった……んだよな?」
わざわざ聞くなと怒られるかも知れないが、何もかもが初めて過ぎて確認せずにはいられない。しかし彼女は未だ夢うつつの状態のようで、かすかに瞼を震わせただけで答えてはくれなかった。
更紗の秘部に触れていた手がべったりと濡れている。数登は汚れるのを気にせずに手をシーツで拭うと、すっかり開かれてしまっている、その場所をまじまじと見つめた。
初めて見る自分には無い器官。美的感覚から言えば余り美しい形状ではないのに、そそられる。まさに本能だ。
数登は、自分が生物として遺伝子を残すための固体の一つなのだと、痺れた頭で再認識した。
「ん……かず、と……」
意識の戻ったらしい更紗が、寝転がったまま目線だけでこちらを見上げた。欲情し、すっかりとろけた瞳。本人にそんなつもりは無いのだろうが、誘われているような気がする。
……ごめん、更紗。
言葉にせずに心の内だけで謝った数登は、欲求の命ずるまま、彼女の一番大切な場所に顔を寄せた。
ぼんやりしていて何をされるのか理解していなかった更紗も、敏感な芽に触れるざらりとした感覚に気付いて声を上げた。
絶頂を迎えたばかりの敏感な身体に、更なる快楽を与える行為が苦痛を伴うという事は、少なくない自慰の経験で知っている。だが、数登の我慢も限界だった。思うままに貪ってやりたいという暗い感情が心を占めていた。
膝を閉じられなくする為に身体でガードし、腰が引けないように腕で押さえつける。彼女の意思とは裏腹に、じっとりと濡れて震えている小さな肉芽を荒々しく吸い立てた。
「ひ、ああっ! や、んっ、やだ、やだぁっ! 数登!」
悲痛な、でもどこか艶のある更紗の声は、数登を助長するだけで制止はできない。甘いとも苦いとも表現できる独特の香りを感じながら、数登は彼女の隠された部分の全てに舌を這わせた。
もともとが感じやすいのか、それとも快感に不慣れなのか、更紗は数登の行いにいちいち声を上げ身体を震わせる。それが演技などで無い事は、触れていた場所から滴る雫で理解できた。
やがて、甲高い声で一啼きした彼女は、またぐったりとベッドに沈んだ。

   

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