第8章 年末年始

 早いもので、もう年の瀬が近い。
 その日、わたし達は新作の3DSソフトで作ったチームコーデでドリシアライブをした。そして、入荷したコーデを見て、目を疑った。
「これって、色は違うけど、初音ミクの服にそっくり!」
 元々はパソコンとかで作った歌を歌うボーカロイドで今や世界的に有名な歌手の衣装だ。そういえば、この前から名探偵コナンのコスプレとか、すみっこぐらしの柄の服とか、コラボ商品も時々入荷してたから、その一環かな?
 すると、めが姉ぇさんが、
「おめでとうございまーす。そのコーデがあれば、初音ミクさんとお揃いペアライブができますよ」

 へぇ、本物の初音ミクがゲストに来るんだ。確かに、最近はゆい達の活躍もあって、以前の活気は戻りつつあるし、あり得るかな。

 そして、初音ミクがゲストの日、わたしはライブのエントリーに向かった。
 ちょうど、ライブを終えたコ達が出て来たところだった。クリスマスライブの予行演習らしく、クリスマスのコーデだ。
 あ、もう、そんな時期か、とふと見れば、タブレット端末の入ったバッグが落ちている。
 わたしは慌ててクリスマスコーデのコを呼び止めた。
「忘れ物ですよー!」
「あ、本当!ありがとう!助かりました!」
「良かった」
「あのお礼と言ってはなんですが、トモチケ交換しませんか?」
「喜んで!」
 そういえば、毎年、この時期にはトモチケ交換してるなぁ、と思って気づいた。
 先週、チャンスはあったんだけど・・・
 わたしは、セブンイレブンで最近のお気に入りのガーリックバターチキン弁当を買いに行ったんだけど、その時、隣のレジにいたコ。
 服もリュックもかわいい感じで、リュックにもプリパラグッズつけてるし、本人も可愛いコだった。このコもプリパラ好きなのかなと思っていたら3DSにトモチケが送信されてきた。
 そして、トモチケを見ると…
「あ…!」
 この前、いいねを送ってくれていたから、必死で交換所でトモチケ探して交換したコだ!
 でも、挨拶をしようかと思ったら、精算が終わっていたみたいで、そのコの姿はもう無かったんだ…
 思えば最近、チーム活動が増えて、トモチケ交換を殆どしていない。うちのチーム以外にも、チームで動いているコ達も多い。
 そこで、わたしは新たな企画を立ち上げる事にした。
「お正月に新春マラソンランウェイやります!」
 ルールは簡単。応募してくれたコ7人ずつとのランウェイライブをわたしが全員とやる。

 そんな事を考えながら、控え室へ。そこには初音ミクがいる。
「よろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
 確かに緊張する。ファルルと組んだ時のみぃとかも、こんな気持ちだったんだろうな。
 でも、実際ライブすればとても楽しかった。いい経験になったわ。

 そして、今日はクリスマスライブの日。わたし達五人は控え室で最終の打ち合わせと題した雑談をしていた。
「そういえば、あみ、この前言ってたマラソンランウェイって、本気でやるの?」
「半分ネタのつもりだったけど、結構応募があってね。実施決定」
「さて、今日はどう進めようか」
 れみが話題を戻した時だった。
「姉妹ユニットバトルなんてどう?」
 そう言いながら、誰かが控え室に入ってきた。

「お姉ちゃん?」
「たった今、帰国したよ。向こうはクリスマス休暇だし」
「バトルって、どういうことですか?」
「クリスマスメドレーが2種類あるでしょ」
「たしかに」
「それをあみチームとくみチームでそれぞれやるのはどうかな?と思って」
「それで「いいね」が多いほうが勝ちなわけね」
「じゃあ、勝ったチームが全員でクリスマスランウェイのメインをする事にしようか」

 わたしのチームはゆうきとれみ。元々のチームだ。姉のチームはみぃとさなえ。
 実際、ガチンコの勝負という雰囲気でもなく、お互いに楽しくライブをしただけだったけど、結果はわたしのチームの勝ちだった。キャリアの差から考えたら、かなりの接戦だった。
「ははは、やはり伝説のユニットは強いね。負けちゃった」
「いやいや、僅差だし。とりあえず、次はランウェイだよ」
 とはいえ、わたし達は6人。先日のトモチケのコに入ってもらっても一人足りない。
「どうしようか?」
「3DSにトモチケ来てたりしない?」
「どうかな?まだサンタさんが来る前だからか、すれ違い通信が全然無いんだよね」
 そう言いながら3DSを取り出したら、なんと、通信ランプが緑色に光っている!
「トモチケが来たーーっ!」
 それも、オリジナルのクリスマスコーデのコだ!

 こうして、無事、クリスマスランウェイもでき、今年も終わった。

 そして、お正月。
「明けましておめでとう!」
「今年もよろしく!」

 わたし達は今年は五人で初詣に行った。姉は向こうで忙しく、今朝の便で帰っていった。ちょうど、れみと入れ替わりだった。
「今年は誰がベビーカステラの当たり食べるかな?」
 れみが言う。れみは去年は初めて食べたのが生焼けのいわゆる「当たり」だった。今年は最初に当たりを食べたのはゆうきだった。
「さすが受験生。縁起いいね」
 その後、みぃ、わたし、れみが当たりを食べた。
「いいなぁ、アタシも当たり食べてみたい…あ、当たりだ!」
 さなえも無事、当たりを食べることができた。まぁ、大袋2つもあれば普通は当たるだろう。

初詣が終わると、わたし達はプリパラへ行き、和装で新春ライブをした。
「着物でドリシア、面白かったね」
「さぁ、次は明後日のマラソンランウェイだね」
 そうだった。わたしには大変な荒行が控えているんだった。でも、わたしの中には、多くのトモダチとステージに立てるのが楽しみという気持ちしかなかった。

 そして、ランウェイ当日。これまでに何度か組んだコ、一度だけ組んだコ、新規に応募してくれたコもいる。信じがたいことに、プリパラアイドルの姿もある。
 わたしは、こんなに多くの応募があったことが嬉しくて、何周もランウェイを歩いた。途中で共演のコ達に
「大丈夫ですか?」
と声をかけてもらったのも一度や二度ではなかった。
 でも、不思議と疲れは感じなかった。

 それでも、最後のメンバーとのステージが終わり、控え室に戻ったとたん、わたしは燃え尽きた。真っ白に。


今回のプリチケ
    
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