第6章 姉、帰る

 いよいよ夏休み。わたし達も集まりやすい季節到来。とはいえ、受験生のゆうきはさすがに毎日は無理だけど。
「せっかくだから、何か面白い企画できないかな?」
「何がいいかな」
「五人ライブのネタはこの前いろいろやっちゃったからね」
「ごめんにゃ。みぃがはりきり過ぎたにゃ」
「まぁ、あれはみぃに夢が戻ったから、あれで良かったんだけどね」
「夏の定番は水着ライブとかかな」
「やってもいいけど、もう少し大きなイベント出来ないかな」
 わたしのコメントに、さなえが手を挙げた。
「はい、さなえさん」
 なんとなくノリで先生っぽく指名する。
「先生、これはどうでしょう?」
 さなえは手にしたチラシをみんなに見せた。
「なになに、自分の歌でペアライブ?」
 これまで、プリパラでのライブはプリパラアイドルの持ち歌を選ぶだけだったけど、自分の歌でペアライブが出来るようになったとのことだった。
「これをアタシ達が総当たりでやって、ベストコンビを投票で決めるとかだと結構面白いと思うんだけど」
「うん、いいね、それ」
「じゃ、夏のイベントは「夏だ!総当たりタッグマッチ選手権」に決定だね!」
「…あみ、なんでそんなプロレスみたいなネーミングを…」
「総当たりだと、何回ライブするんだろ?」
「それぞれと組むから、それぞれ4回ライブだね」
「じゃ、4×5で20回にゃ」
「それだと、私とみぃ、みぃと私みたいにかぶるから、10回だよ」
 みぃの回答をれみが訂正する。
「そのくらいなら、あたしも参加できるかな」
「日程は、ゆうきの夏期講習の都合優先で決めないとね」

 そして、このイベントが中盤に差し掛かったある日、ライブが終わって、プリントスタジオでプリチケを待っていたら、突然上からスポットライトが当たり、ドラムロールが鳴った。
 なぜか、らぁらたちが突然駆け寄ってきて、わたしを胴上げしてくれる。
「え?何事?」
「おめでとう!おおあたりだよ!」
 なんと、3周年記念のスペシャルなコーデが当たったらしい。
 よくよく考えたら、確かにわたしは来週でデビュー3周年だわ。
 それだけではなく、わたしは帰宅しても驚いた。

「お姉ちゃん?」
「あ、あみ。お帰りなさい。ワタシのほうがただいまかな?」

 プリパリに留学しているはずの姉がいた。

「お盆だし、夏のバカンスで帰省中」
「そうなんだ」
「まぁ、ちょくちょく帰ってきてるんだし、そんなに驚かなくても」
「まぁね」
「そういえば、あみ、プリパラへは行ってたりする?」
「うん、トモダチも増えたし、楽しいよ。明日一緒に行ってみる?」
「まぁ、話の種に見に行ってみようかな」

 かくして翌日、わたし達は姉妹でプリパラへ向かった。
 途中でゆうきと合流する。
「あれ?ゆうきちゃん?久しぶり!」
「あみのお姉ちゃん!お久しぶりです!」
「ゆうきちゃんは受験生だよね?」
「はい、だから、予備校の夏期講習の前にちょっと寄るしかプリパラへ行けなくて」
「そうね。ちょうど息抜きにはいいかもね」
「あ、でも、母には内緒です」
「了解。ゆうきちゃんのママ、厳しいもんね。大丈夫。秘密は守るよ」

 プリパラに着くと、他の三人はもう来ていた。
「今日のゲストです」
 わたしはふざけて姉を突き出す。
「えっと、あみの姉のくみです。妹がお世話になっております」
「はじめまして。あみのトモダチのれみです。よろしくお願いします」
「みぃです!よろしくにゃん!」
「はじめまして、くみさん。お会いできて嬉しいです。あみさんの後輩にあたります、さなえと申します。妹さんにはいつも大変お世話になっております」
 うーむ。挨拶の内容が年齢に反比例しているなぁ。

「初めてプリパラに来た時は、指名したプリパラアイドルのライブが見れるんだけど、誰にする?」
「そうね。結局あみが写真送ってくれなかったワタシの先輩でもいいのかな?」
 そうだった。昔、お姉ちゃんにあじみさんの写真を頼まれたけど、あまりの勢いに写真撮れなかったことがあったっけ。
「わかった。でも、多分、実物見たら、わたしが写真撮れなかった理由判ると思うよ」
「サイドはあたしとあみでいいね」
 ゆうきが言う。

 ライブが終わって、姉は勢いに呆然となっていた。そして、モニターでらぁらがアイドルデビューの説明をしているビデオで、アイドルデビューしますか?の問いが出ている時に、無意識に「はい」を押してしまった。
「えっ?」

 こうして、わたしの姉はアイドルデビューした。

「くみさん、せっかくデビューしたんだし、あみと姉妹ライブしてはどうでしょう?」
 れみが提案する。
「そうね。やってみようかな」
「さすがはあみのお姉ちゃんにゃ。楽しみにゃ」
 確かに、とりあえずチャレンジという思考回路は我が家の血統かも。

 そんなこんなで、姉の出発の日が来た。わたし達はみんなで見送りに来た。
「また帰国した時には一緒にライブしたいです」
 れみが言う。
「うん、れみちゃんのおかげで、楽しいライブ出来たし、こんどは一緒にね。約束だよ」

 その時、五人の携帯が同時に鳴った。
「あ、メールだ」
 メールを開いてみる。

「プリパラパンポーン。「夏だ!タッグマッチ選手権」の投票結果の集計が終わりました。優勝は、あみさんとくみさんのペアでーす」

「えええーーーっ?」

 あれは単なる余興みたいなものでしょう?

「レアなライブだし、話題性あったかな」
「優勝おめでとうにゃ!」
「ありがとう。これは機会があればまた帰国しないとね」
「帰国、待ってますよ」

 まぁ、誰も結果を違和感なく受け入れているなら、これもアリかな。

 こうして、夏のライブ企画は終わった。
 あ、もちろん、水着ライブもやったけどね。


今回のプリチケ
            
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