第4章 タイムガーデン

 先日のトリコロールとのジョイントライブの成功で、新メンバーもかなりチームになじんできた。今では昔からの仲間のように一緒にお茶したりしている。
 全員集合の後、わたし達は雑談タイムを満喫していた。モニターには珍しくダンプリの中継が流れている。
「ゆいちゃんのお兄さんのチームが出てるよ。WITHだっけ」
「あ、本当だ。そういえば、赤い髪の「マジやべー!」の人、アサヒさんだっけ、あみはこの人知ってるって言ってたよね」
「いや、以前見かけたことがあるだけだよ」
 そう。りんねと見た異世界の一つのダンプリで見かけた人だ。厳密には同一人物ではないかもしれない。
「えっと、マジやべーの人と、ゆいちゃんのお兄さんと、あとは…」
 なぜかゆうきが情報の整理をし始めると、さなえが、
「かっこいい人」
 いや、全員かなりのイケメンだぞ。さなえ、この手の人がタイプなのかな?

 そんな話をするうちに中継が終わったので話題を変える。そう。わたしはこの日のために、作業をしていたんだった。
「今日はみぃとさなえにプレゼントがあるんだ」
「何々?」
「わたし達が3人の頃、カフェ風のコーデの色違いをメガドレインで作ったのがあってね」
「知ってるにゃ。あれ、可愛いからちょっと羨ましかったにゃ」
「そんなわけで、新色を2つ作ってみたんだけど」
「本当?嬉しいにゃ!あみ、ありがとにゃん!」
 みぃが抱きついてくる。
「みぃ、そんなに抱いたら苦しいってば!」
「アタシのも?大変だったね」
 みぃは明るいグリーン系、さなえはシックなモノトーン系にアレンジしてみた。
「さっそく、みんなでドリシアやろう!」

 わたしたちはドリシアで5色おそろいライブをした。やはり、こういうのがチームだなって実感できて、楽しいと思う。

 数日後、この日は全員揃わなかった。でも、3人いるのでライブはできる。
「今日はれみとみぃがいないから、3人でライブだね」
「時間的に2曲できそうかな」
「じゃ、さなえ、1曲センターでいってみる?」
「せっかくだから、がんばっちゃおうかな」
「コーデはどうしようか?」
「さなえが決めていいよ」
「じゃ、あみはやきたてクッキーとブリティッシュのミックスコーデ、ゆうきはホリックトリックのミックスコーデをリクエスト」
「それ、昔わたし達がやったやつじゃない?」
「へへへ。実はその時のバックダンサー、アタシだったんだよ」
「そうなの?」
「うん。まだかけだしで髪型とか違ってたけどね」
「で、さなえはどんなコーデにする?」
「アタシはこういう青系でまとめたミックスコーデで」
「それで決まりね」
「もう1曲はどうしようか」
「そうだね…盛り上がるライブにしないとねぇ」
 わたし達は、プリパラを活気付けるために復帰したんだから、盛り上げないと。
 わたしは先日のひびきさんの話を思い出した。
「そういえば、ひびきさん、埴輪ドレスで『パニックラビリンス』やったって言ってたけど、ウケたのかな?」
「試せば?」
「えっ?」
「あみ、埴輪ドレス持ってるよね」
「う…あるけど…」
 自らがやる方向に話振られるとは思わなかった…
「でも、アタシとゆうきはどうするの?」
「アレに釣り合うといえば…あっ!」
 思い出した。
「そういえば、ゆうき、前にブキガミのコーデに興味あるって言ってたよね」
「言ったような気はするけど…」
「じゃ、貸してあげる」
「げっ…!」
 こうなったら、ゆうきにも身から出た錆で面白コーデに付き合ってもらおう。
「あ、アタシは面白コーデとか持ってないし…」
 逃げようとするさなえにも。
「大丈夫。この前、ドリシアでこんなのゲットしたから貸してあげるよ」
「え?どんな…げっ!くらげコーデ!」

 2曲目も決まった。

 ミックスコーデライブも、面白コーデライブも、結局かなり盛り上がり、楽しかった。
 まぁ、ひびきさんがやるほどのインパクトはないかもしれないけど。

 そして、ライブが終わった時だった。ステージの上にあった時計の秒針がちょうど12を指そうとしている。

 5・4・3・2・1…スーパーアイドルターイム!

 秒針が12を指した時、突然時計が観音開きの時計のように開き、わたしはその光のなかに吸い込まれていった。そして、どんどん上昇していく感じがして、気がつくと、庭園のようなステージの真ん中に立っていた。
 庭園の上に砂時計のような二つのオブジェの間の祭壇のようなところに誰かがいる。

「あなたは誰?」
 いや、こっちが訊きたい、と思っていたら、
「私はファララ。時の楽園、タイムガーデンにようこそ」

 どうやら、スペシャルステージのようだ。しかし、よりによってなんで埴輪で…

「夢いっぱいの時間…」
 ファララが手をかざすと、天から無数のジュエルと共に小さなハープが降りてくる。
 わたしはハープとマイクを合体させる。すると、コーデがスーパーサイリウムコーデに変化する。
 良かった…埴輪のままだったらどうしようかと思った。

 わたしは『チクタク・Magicaる・アイドルタイム!』に合わせて踊る。

「楽しい!」
 ファララは上機嫌でこちらを見ている。そして、わたしの前にファララのいる祭壇に向けて金色の階段がのびていく。

「さぁ、こっちへ来て」
 ファララに誘われ、わたしは階段を駆け上がった。
 曲が終わると同時にわたしはファララのもとにたどり着いた。
「このコーデをあなたに。素敵な時間をありがとう」

 ファララはSR(スーパーレア)のコーデを用意してくれた。ということは、ジュリィ様みたいな、また別の女神様なのかな?

 わたしは翌日、大学でれみにその話をした。
「え、あみもアレ、体験したんだ?びっくりしたよね」
「ていうか、れみが体験済みのほうがびっくりだよ!そういうことはすぐに教えてよ!」
「いや、体験してから会うの初めてだし、今日言って驚かそうと思ってたんだけど」
「スーパーレアのコーデくれたし、前のジュリィ様みたいな女神なのかな?」
「普段は時計塔にいる、時の精霊だって聞いたよ。私もプリパラレアのコーデ貰ったし、似たようなものなのかもね」
 さりげに、れみの方が貴重なコーデ貰ってるな…

 講義が終わると、わたしとれみはそのままプリパラへ。今日は5人全員が揃う日だ。
「最近、スーパーアイドルタイムを体験する人、割といるみたいね」
 さなえは、昨日のわたしのスーパーアイドルタイムを見て、調べていたらしい。
「どうやら、3人ライブの時に時の精霊が目を覚ますと発生するらしいけど、ショップでコーデを買ったらいきなりタイムガーデンに飛ばされたって人もいるみたい」
「買い物で?」
「まぁ、ネットでの噂話だし」
「じゃ、交代で3人ライブをやってみようか」
 結果、チームサイリウムでまとめたみぃのユニット、撃沈。わたしの自作サイリウムコーデのユニットも撃沈。
「時間的に次が最後だね」

 さなえがセンターでライブが終わると…

 5・4・3・2・1…スーパーアイドルターイム!

 来た!でも様子が少し違う?
 時計が開くと、さなえの横に誰かいる!
 さなえが言うところの、WITHの「かっこいい人」だった。コヨイさんだっけ。
 そして、タイムガーデンへの階段が現れ、コヨイさんがさなえの手を取りエスコートする。
 ガーデンに着くと、コヨイさんはさなえの前に跪き、手の甲にキスをした。
 ちょっと、何よこの待遇の違い!わたしの時は問答無用で光の中に吸い込まれたのに…
 
 ライブを終えてさなえが戻ってきた。
「おめでとう!でも、なんでさなえだけあんなに待遇いいの?」
「日ごろの行いかな」
「それ、私とあみに喧嘩売ってる?」
「冗談冗談。でも、なんでコヨイさんが…」
「たまたまぷり」
 答えたのは…
「みれぃさん!なんでこんなところに?」
「神アイドルは各地のプリパラを応援するために回っているぷり。らぁらはパパラジュク、私はおおさかプが拠点ぷり」
 まぁ、ここはおおさかプには近いから、みれぃの守備範囲なのかな。
「時々、出動できるプリパラアイドルがエスコートするサプライズサービスぷり。男装したみれぃのエスコートもあるぷりよ」
「え?女の子同士でも手にキスとかするの?」
「あれは寸止めでふりをしてるだけぷり」
「え?そうなの?」
「少なくともアタシのときはコヨイさん、寸止めだったよ」
 経験したさなえの証言だし、寸止めは確実っぽい。
「でも、普段、かなりはじけてるみれぃさんが凛々しく男装って、まさに『ぎゃっぷりぷりっぷー』ですね」
「…ちょっと待つぷり。みれぃに喧嘩売ってるぷり?」
「冗談冗談…って、なんか元の場面に戻ったみたい?」
 わたし達は6人で爆笑した。
 みれぃは忙しいらしく、そのあとすぐ去っていった。

「そういえば、あみ、ショップに貼ってたポスター見たにゃ?」
 みぃが訊いてきた。
「え、何かあったっけ」
 わたしは気づかなかったけど、れみが見ていたらしい。
「大会練習用にタイムガーデン開放!ってやつ?」
「うん」
 去年の神チャレンジライブみたいな大会がまた開催されるらしい。
「でも、去年もそうだったけど、結局ほとんど参加できないんだよね」
「練習でも行けるなら、タイムガーデン、みぃも行ってみたいにゃ」
「あ、じゃ、あたしも行こうかな」
 と、ゆうき。
「そうだね。二人はまだ行ってないからね。つきあうよ」
 わたしも賛同する。偶然に頼らなくてもタイムガーデンを経験できるなら、ちょうどいいかもね。
「でも、今日はもう遅いし、そろそろ撤収する?」
「だね」
「そういえば、全員揃ったらレオナさん達の屋台でもんじゃ食べるって言ってなかった?」
「あ、忘れてた!でも、今度こそ食べに行こうね」

 ***

 解散後、みぃは控え室に忘れ物をしたことに気付き、一人で来た道を戻っていた。
 ふと上を見ると、1匹のマスコットが飛んでいた。サンタさんみたいな形のナイトキャップをかぶった淡いブルーの獏のマスコットだった。
「あれ?どうしたにゃ?」
 みぃが話しかけると、そのマスコットは、
「大きな夢パック。この夢を食べればガァララもきっと喜ぶパック」
 と言いながら、口を大きく開けた。
「?????!」
 マスコットがみぃに迫った。


今回のプリチケ
     
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