第30章 神チャレンジライブ
「あ、そうそう。聞いた?」
また、れみが何か情報をつかんできた。
「多分聞いてないんだろうけど、何?」
「神チャレンジライブだけど、もしかしたらできるかも」
「どういうこと?」
「私たちのところでは神チャレンジ大会は無かったよね」
「うん。大きな町まで行って、抽選に当たらないとできないもんね。あたしたちには無理だわ」
ゆうきがコメントする。確かにその通りだった。
「まぁ、ドリームパレードの段階で諦めてたから、あまり意識もしなかったしね」
「それが、第5回大会は、すべてのプリパラが対象なんだって!」
「ということは、女神様が認めるライブをすれば、女神様に召されてライブできるの?」
「そうみたい」
「それは頑張らなくちゃ。女神様に会えるなんて、普通ないよね」
「でも、これまでは神コーデを賜るってことだったけど、神コーデは普通に入荷してるよね」
「うん。セーラーコーデ集めとかしてるうちに女神様降臨の時のコーデも、女神様が地上に降りてライブした時に使ったといわれるコーデも手に入ったし」
「そこなんだけどね。ほら、この前手に入れた神ドレス。あれに合わせるティアラを賜るって噂よ」
普通なら盛り上がるだけなんだけど…実は今日はわたしは二人に大事なことを伝えるつもりだったんだ。
「あのね…今日は二人に言わなきゃならないことがあるの」
「え?どうしたの?急にかしこまって」
「実は…お父さん、4月から転勤かもって話なの。引っ越すかもしれないって」
「…そうなんだ…」
「…だから、あと1か月足らずだけど、悔いのないように二人と過ごしたいな」
「うん。じゃ、3月末にファイナルライブやって、それまでに神ティアラもゲットしようよ」
「ま、今生の別れってわけでもないだろうけど。ちょうど、わたしもれみも進学で、いずれにしても活動はまばらになるだろうけどね」
「そういえば、あみってどこの大学?」
「え、言ってなかったっけ。おおさかプにある…」
わたしは大学の名前を言った。ゆうきも模試で実力相応なので、来年第一志望で受ける大学だ。
「うそ…!私と一緒だったの?」
「ていうか、二人とも、そんな大事な進路の事、何で話してないのよ?」
ゆうきがあきれ顔でいう。
「じゃ、三人は4月からも会えないことはなさそうね。でも、チームとして一区切りのファイナルライブはやりたいね」
「よくよく考えたら、あみは3年近くやってるんだね」
「確かにそうなるかな」
「だとしたら、やはり、神ティアラをなんとしてもゲットしなきゃね。そして、3人で神コーデライブで締めたいよね」
「ありがとう。でも、実はわたし、もう一つプランを考えてたんだ。もし、ファイナルライブでアンコールがあれば、それでいってもいいかな」
「もちろん。あみの最終ステージだもん。どんなプラン?」
わたしは4枚のコーデを取り出した。
「…これって」
「うん」
そう。わたしが初めてライブした時のスカートと、その後に入手した最初のトップス、シューズ、ヘアアクセ。
「ばらばらだけど、いちばん一緒にいたコーデだから」
「ほぉ、逆に面白いかもね。よし、アンコールがあれば、それでいいんじゃない?」
それからというもの、わたしは、とりあえず、今のうちにという気持ちと、神チャレンジライブに向けての気持ちの両輪で、精力的にライブをこなしていた。
ある日、交換所を見ると、いいねを送ってくれたコのトモチケを二人分見つけた。わたしはそれぞれを3枚ずつの自分のトモチケと交換した。せめて、少しでも誰かの役に立てばいいけど。
そして、そのうちの一人のコは以前交換所で気に入って使おうとしたら、ちょうどそのコからいいねを送ってもらっていてすごく嬉しかった時のコのものだった。
ふと、隣のステージの中継を見ると、そのコがライブしていた。本人に会うチャンス!わたしは、そのコがライブを終えるのを待って声をかけた。
「あ、もし良かったら、わたしのトモチケ貰ってください。前に交換所で使わせてもらっているので」
「あら?私のほうも使わせてもらったことあったかも。せっかくだから、ライブします?」
「ぜひぜひ!」
引退近いから、絆増やすのもどうかと思ったけど、つい絆が増えるとやっぱり嬉しいものだなぁ。
そして、ライブが終わると、上空から光が差し、神々しい光を放ちながら女神が降りてくる。
「私はジュリィ。神アイドルを導く者…」
えっ?まだ神チャレンジにエントリーしてないはずなのに?
驚くわたしの上空を女神は笑いながら旋回する。すると、わたしのいる円形ステージが上昇を始める。ちょうど、昔の「ぐんぐんのびろー」みたいな感じだ。ただ、その時とは比べ物にならない高さとスピードだ。女神はわたしのまわりを螺旋をえがくように飛んでいる。
やがて、エレベータのように上昇するステージは、天空にうかぶ揺り籠のようなステージに到達した。
「さぁ、神アイドルのステージへ。神アイドルチャレンジ、スイッチオン!」
女神ジュリィはそう宣言し、サイリウムタクトをわたしに手渡す。ピンクジュエル、神ジュエル、サイリウムジュエルマイクと、女神の指示通りタクトをスタンドマイクのように組み立てていく。
「さぁ、目覚めなさい」
ジュリィがそう言うと、突然わたしのサイリウムコーデが光り始める。
「神アイドル誕生!」
ジュリィの宣言と同時に曲が始まる。上空に5色のクローゼットが出現する。
わたしが振り付けでタクトを振りかざすごとに、スーパーレア以上のレアコーデが出現し、クローゼットに入っていく。
「神アイドルにふさわしいコーデをあなたに。クローゼットルーレット!」
わたしはくるくる回る5色のクローゼットの一つを開いた。中にはプリパラレアのコーデが入っていた。
気が付くと、わたしはプリチケを手に元のステージに立っていた。
「すごいね。初めて見た!」
隣のコが声をかけてくれ、我に返る。
「本当だったんだね。女神様に認められると天空のステージに召されてレアコーデが貰えるって噂」
…そんな噂があったんだ…知らなかった。
「おめでとうございまーす。あみさんが神チャレンジグランプリファイナルへのエントリー権を確保しました」
めが姉ぇさんから連絡が入った。やった。これで神ティアラに少し近づいた。
わたしはさっそくゆうきとれみに連絡を取り、神チャレンジグランプリファイナルにエントリーした。
そして、運命の日。
「あみ?準備はできた?」
「もちろん!」
わたしは、神チャレンジライブのため、チームコーデをメガドレインで作ることにしていた。
「どんな感じ?」
先日行ったカフェの店員さんの服がすごく可愛かったので、それを参考に作ったコーデを披露する。
「で、二人の分なんだけど…」
同じコーデで色を変えたもの2色と、色は同系色でトップス、ボトムスの型紙を変えて変化を付けたものを用意していた。
「そうだね。形がちょっと変化してるほうがチームコーデっぽいかな」
「うん。こっちにしようか」
ゆうきはトップス、れみはボトムスが少し違うパターンでコーデが決まった。
「いざ、神チャレンジ!」
わたし達3人はチームコーデでライブに臨む。今回は3人全員がサイリウムタクトを持って新曲でライブというものだった。
ステージは翼をかたどった金色のオブジェがある特別なものだ。
そして、ライブが終了すると…
突然何かの音が聞こえる。翼のオブジェが展開していき、ステージもせり上がり、ステージ全体が巨大なオブジェのように変形する。
そして、天空から女神が降臨…あれ?女神様が二人?
「私はジュリィ」
「私はジャニス」
二人の女神がクローゼットと共に現れた。
そして、ジュリィがタクトを取り出し、宙に放つと、タクトが3本に分裂してわたし達3人の前に来る。
わたし達は3人でそれぞれタクトにマイクをセットし、神チャレンジライブが始まった。
曲が終わるとジュリィがクローゼットからティアラを取り出し、わたしの目の前に降り立ち、わたしの頭上にティアラをかかげる。
わたしはティアラを受け取り、そのまま頭にティアラを装着した。
ついにやったよ!わたし、女神様から認められてティアラを賜ったよ!
今回のプリチケ
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